【開館50周年記念講演】燕市産業史料館(新潟県燕市)で元文化庁長官の青柳正規氏が講演、世界のものづくりについて語る
燕市産業史料館(新潟県燕市)は3月23日、元文化庁長官の青柳正規氏を招き講演会を実施した。同史料館の開館50周年を記念する特別講演の第2弾で、青柳氏は世界のものづくりやブランドの歴史、そしてその変遷から、金属加工業の盛んな燕市の産業のこれからについて語った。
青柳氏は多摩美術大学の理事長。古代ローマ美術や考古学の研究を専門とし、映画「テルマエ・ロマエ」の時代考証を担当したことでも知られる。現在もイタリアで古代ローマ時代の遺跡の発掘調査を進めるなど、精力的に研究を行っている。
23日の講演会には、市内外から約60人が来場。青柳氏は講演のはじめに、あるワイン品評会においてフランス産ワインとアメリカ産ワインが対決し、後者が勝利した際の事例を紹介した。「しかし、フランスのワイン業者は『まったく脅威ではない。なぜなら彼らには物語がない』と語った。事実、その後アメリカ産ワインの価値も上がったが、フランス産ワインの高騰率のほうが遥かに高い。同じ性能でも、それを語ることのできる物語が付随していることが非常に大切」(青柳氏)とブランディングや「売り方」の重要性を説く。
そして、燕と同じくカトラリーの製造で有名なフランス・ラギオール村の事例を紹介。農民用ナイフから始まり、古代から続く刃物の伝統を受け継ぐことによるブランド的価値の向上をしてきた戦略などを詳細に解説した。そのほか、芸術の都市として地域再生を果たしたフランス・ナントや、コウノトリの生育環境と絡めて減農薬米をブランディングした兵庫県の事例など、地域性、社会、自然環境などをものづくりと絡めて打ち出すことの必要性を語った。
燕市内から講演に来ていた製造業の30歳代男性は「自分たちが地域として産業をどう発展させていくのか、という地域レベル、国レベルの話で心に響いた」という。そして講演の話題を受けて「金属産業について、これからの子どもたちが憧れて入って来てくれるかは現在未知数。多くの人が燕に魅力を感じ、子どもたちが地域に根ざすきっかけを、自分たちでつくっていきたい」と話した。
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