【念願達成】あの「斜めの家」に泊まれる日がやっと来た 渡邊洋治ファン記者の宿泊体験レポート(新潟県上越市)
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初回掲載:2024年4月6日
新潟県上越市に「斜めの家」というある意味では奇妙な形の家がある。この家は、上越市出身の在野の建築家、渡邊洋治氏(1983年没、享年61歳)の最後の設計作品である。
「異端の建築家」としても知られた渡邊氏は上越市で生まれ、新潟県立高田工業高校(現上越総合技術高校)卒ながら、早稲田大学理工学部の助手から同大講師まで歴任した人物だ。また、「斜めの家」には階段がなく、スロープだけで2階まで行くことができるようになっている。
昨年は渡邊氏の生誕100周年であり、誕生日である6月14日からキャンプファイヤーでクラウドファンディングをスタートし、同年7月30日まで募集、151人から総額237万1,000円の資金が集まった。リターンは主に2024年度、2025年度の宿泊体験予約券で、約100泊分が完売した。全国から支援が集まり、新潟県内では中越、下越の建築(工務店)関係者が多かったという。
そこで、第1回宿泊体験企画が4月3日にスタートした。参加メンバーは、ナナメの会主宰の建築家・中野一敏氏、ナナメの会前進のプロジェクトを立ち上げた橋本桂子さんの夫でハンドメイドルアー作家の橋本雄一郎氏、記者の3人。
昨年4月に初めて取材し、建物の中に入った記者だが、一言で言うとこの家に「一目惚れ」してしまった。以前から絵画や写真、デザインなどは素人ながら見るのは好きだったが、この造形にまさに衝撃を受けたのだった。
階段がなく、狭いスロープや赤絨毯(じゅうたん)、無数の小窓は何というアバンギャルドさか。こんな建物を設計する人物が地元の上越市にいたということが、衝撃とともに誇りに思えた。
17時に集合し、夕食はすぐ近くの飲食店にてビールで乾杯。その後、これまたすぐ近くのコンビニで二次会の缶ビール、乾き物などを買い込み、帰宅。
順番に昔ながらの狭いステンレスの風呂に浸かったあと、テレビもWi-Fiもない家で、3人で缶ビールや缶酎ハイを飲みながら、24時半過ぎまで政治、文化、芸術について語り合った。
寝室は2階の一番奥の6畳部屋にて1人で独占させてもらった。渡邊氏の「作品」の中で眠りに落ちることができる最高の幸せを感じながら、布団に入った。
大正12年生まれで、戦争でフィリピン・セブ島にも行ったという渡邊氏。代表作の東京都新宿の通称「軍艦マンション」や、斜めの家も潜水艦をモチーフしたとも言われており、軍事、軍隊色が色濃く出ていると言えるだろう。関係者によると、今斜めの家を建てるとしたら、6,000万円から9,000万円くらいかかるというから驚きだ。
中野氏は「10年くらい関わっていたが、泊まって初めて夜を経験し、照明や明かりをつけたら優しい感じでいい。風呂は小さいが、お湯を1回ずつ入れ替えられるので、ぜひ宿泊体験をしてもらいたい。住宅離れしているので、非日常感があっていい」と話した。
橋本氏は「まずここの匂いがいい。全く違う空間に飛び込んだ感じだ。住んでいた人の息吹が感じられて、時代を超えて自分が今ここにいる不思議さを感じられる空間だ。この家のテーマに沿った作品や書物が展示されていて、建築や芸術が好きな人が泊まって楽しむことが期待される」と話していた。
これから100日分のそれぞれの「斜めの家」でのドラマが始まる。
(文・撮影 梅川康輝)
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