【週末は休暇村で】緑まぶしい早春の妙高へ「帰る旅」、伝承の美食・笹寿司を味わいに(新潟県妙高市)【動画あり】<再掲載>
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初回掲載:2024年4月5日
「帰る旅」なら
近年、旅行業界で重要なデバイスとなっているひとつの言葉がある。それが「帰る旅」。
気に入った土地を何度も何度も訪ねる。その場所を深く知ることで、土地の魅力により近づく。まるで第二の故郷のように想起される土地。
それはべつに、自分にゆかりのある土地でなくても、極端に言えば見知らぬ土地でも良い。普段仕事をしている拠点とは別に、そういう土地がある喜び。そこに「観光」ほど非日常でなく「帰省」ほど日常でない、そんな旅をすることを「帰る旅」という。
ある種の贅沢であり、土地との結びつきが昔に比べて希薄になった現代人にとって、こういう付き合い方がちょうどよい距離感なのではないか。
今回紹介するのは新潟県妙高市。今、妙高の周辺エリアは、スノーリゾートエリアとして海外にも注目度が高い。スキー場がある赤倉を中心に現在でも多くのインバウンドを獲得しているが、シンガポールのファンドがこのエリアに巨額投資を行うことが明らかになり、数年後にはカナダ・ウィスラーや北海道のニセコのような一大リゾート地として発展を遂げる未来が描かれている。
それだけ妙高エリアは地政学的な観点、皇室や岡倉天心ら文化人に愛された歴史、アクティビティの魅力など、リゾート地として高い質を持つ土地なのである。
そんな海を超えて注目されるリゾートエリアではあるのだが、一方で「日本の田舎」としての素朴さが失われていないところがなんとも魅力だ。それは日本人に遺伝子を通して継
がれる「原風景」でもあろう。「帰る旅」なら、こういう土地に帰ってみたい。
そして妙高が持つ日本の原風景としての魅力は、「郷土食」「ローカルガストロノミー」に集約されると言ってよい。
トマト、ナス、かぼちゃなど高原野菜や季節の山菜、タケノコ、キノコ類など旬の味覚は天の恵み。もちろんご飯の美味さは、米どころ新潟県でも有数。そんな卓越した「素材力」に培われた地元の食文化は、素朴ながら実に色鮮やかに輝く。
この土地の食文化は、地元の英雄、戦国武将の上杉謙信にまつわるものが多い。それは謙信公が単なる武将としてだけでなく、一国の指導者としての影響力が、民に深く浸透していた証でもある。糀と唐辛子などでつくられる発酵香辛料「かんずり」はその代表格。
たんぽのような「山もち」や旬の味わい「たけのこ汁」など山の幸由来の料理は、決して素朴さのみで語られるものではない、質の高い季節の美食だ。「のっぺ」は新潟県全域で食べられているが、この辺のものは下越と風情が違って、またよろしい。
中でも特筆したいのが「笹寿司」。「山の美食の粋」そう呼ぶに相応しいローカルガストロノミーである。
”山の寿司”その清しい味わい
この笹寿司、一説には上杉謙信が川中島に出陣する際、街道の村人たちが笹に乗せたご飯とおかずを献上したというのが由来とされているが、様々な食文化に謙信公が絡んでくるのは「上越・妙高あるある」と言っても良い。
実際に地元の人に話を聞くと、発祥は妙高の関山地域で、この地のパワースポットとして知られる関山神社の「火祭り」に供されていたのが、この「笹寿司」だとか。新潟県には笹団子や三角ちまきなど、笹にまつわるローカルフードは多いが、熊笹の葉には毒消しの効用もあるため、先人の知恵が活用されていることもわかる。まさに「山のごちそう」「ハレの食べ物」。
笹の葉の上に盛られた酢飯、その上に様々なおかずが盛られ、きゅっと握る。おかずは各家庭のオリジナルなのだとか。オーソドックスなものは赤紫蘇漬け、ぜんまいの煮つけ、わさび菜(この辺では葉わさびの刻んだものを指す)の醤油漬け、小女子の佃煮(先人から受け継がれる山里の食文化)、たけのこなど。地域によっては昔の農作業用具である「箕」のように笹を細工した「箕寿司(みずし)」を供するところもある。
まずは見た目の鮮やかさ、楽しさ。そして笹の葉の清涼感溢れる香り。直接ほおばると、一体となったご飯と山の幸がほろりとほどけ口一杯に広がる滋味。素晴らしく美味い、と同時に体をめぐるすがすがしさ。山の生命をいただく歓喜、そこに感じられる妙高の「テロワール」。
ローカルガストロノミーにこんな劇的な発見があるとき、「帰る旅」は実に色鮮やかな楽しみをまとう。「笹寿司を食べに」それだけの動機で「妙高に帰る」のも全然ありだな、と思った。
「帰る旅」と「休暇村妙高」
今回、宿をとったのは妙高戸隠連山国立公園内にある休暇村妙高。北海道から鹿児島まで全国35箇所に点在する休暇村の中でも、国立公園内にある施設は珍しく、なんとも贅沢なロケーションだ。
贅沢といえば休暇村妙高には施設から歩いて0分のプライベートゲレンデがある。スノーシーズンは目の前にゲレンデ、グリーンシーズンには大きな窓のから見える雄大な山岳のパノラマを楽しめる。周辺には散策スポットも豊富で、アクティビティに事欠かない。妙高高原温泉郷の只中にある湯は素晴らしく、3階展望浴室から四季折々の景色を望みながら極上の時間を過ごしたい。
そして「食」。この4月からスタートした宿泊者向けの会席料理コース「奏(かなで)」が、まさに妙高の四季を詰め込んでいる。
自然と風土、歴史と文化、その特長を活かしながら、そこに住む人々の食生活に結びついた食材を、料理人が丁寧にアレンジした料理は、五感で四季を感じることができる。まさに「帰る旅」の食として、そのコンセプトが相応しい。「土地の贅」が活きた献立は、帰る旅に欠かせない。
「帰る旅」に欠かせないと言えば、休暇村は連泊がお得。休暇村妙高では「じょんのびプラン」としておひとり2泊4食で2万円~の宿泊プランが用意されている。小学生以下の子供が、オンオフで同一料金というのも、家族で旅を楽しみたい向きには有難い。
休暇村妙高で連泊をお勧めする理由が他にもある。連泊時の昼食に供されるのが、先述した「山のごちそう」笹寿司なのだ。まさに清涼の極み、山の味覚の粋。休暇村妙高でつくられた笹寿司は、地元の直売所でも販売されており、様々なイベントなどにも出店、休日などは1日数百パックも売れる。
その土地の食文化をまるごと味わう。そんな「帰る旅」で身も心も一新するのはいかがか。
週末は休暇村妙高で。
(文 伊藤 直樹)
【関連リンク】
休暇村妙高<公式> https://www.qkamura.or.jp/sp/myoukou/