【検証】新潟県長岡市が販売した使用済みマンホールの蓋 どのような人がゲットした?
下水道を身近に感じ、自治体の取り組みに理解を深めてもらうため、新潟県長岡市は2024年2月、摩耗や損傷によるガタつきにより交換し役目を終えたマンホール蓋10枚を3300円(税込み)で購入希望者を公募した。
10枚のマンホール蓋に対して、販売希望者の総数は55人。ざっと全体の倍率を見積もるだけでも、5.5倍である。これがさらに人気の絵柄のものになると競争倍率は高まる。長岡市からのみならず、県内、そして東京都や埼玉県、静岡県といった県外からの応募があったという。
使用済みのマンホール蓋を購入するような人はどのような人なのだろう。そして、購入されたマンホール蓋は一体、何に使うのだろう。厳しい倍率を勝ち抜いて、無事に希望のマンホール蓋を購入できたという山本正明さん・節子さんご夫妻から話を聞いた。
コレクター・美術愛好家の山本さん夫妻
まずご自宅に伺って驚いた。長岡市宮内にあるご自宅の入り口には、何種類かの美術展のポスターそして入り口には大きな招き猫と信楽焼の狸が出迎えてくれる。その様子はまるでさながら地域のちょっとした美術館のようだ。その入り口すぐ横に、今回山本さん夫妻が購入したというマンホール蓋が、色を塗られた状態で置いてある。
お宅へお邪魔してみる。そこには夥しい数のコレクション。山本さん夫妻が、地道に少しずつ集めてきたものだという。
二人は元々長岡市の出身。宮内で割烹を経営していた。数年前に現役を退き、店をたたんだ。その後、かつて店舗だったところにこれまで収集していたコレクションを展示し、「我楽庵(がらくあん)」と名付けた。訪ねて来る人に公開している。
「少しずつ断捨離はしているが、気がつくとまた買ってしまっている」と妻の節子さんは語る。二人で楽しみながら収集しているらしい。
コレクションの中には、ときどき夫妻が制作したオブジェなどの作品が混じっている。実は、二人はコレクターであるとともに、れっきとしたアーティストでもあるのだ。新潟県立近代美術館の友の会にも所属し、ときどき自分たちの制作した作品を出品もしている。
今回、長岡市が公募したマンホールを購入した背景には、コレクションとして自宅に飾りたいという夫妻の意向があったようである。
節子さんが、たまたま長岡市が購入者を公募していることを知り、正明さんの名前で応募した。結果、当選し、見事に購入することができた。「(気に入ったものを購入することができて、)ラッキーだった」と正明さんは語る。
マンホールに色を塗った
玄関に置いてあるマンホールには、色が塗ってあった。購入した際、一緒に貰ったマンホールのコースターの絵柄を参考に、正明さんがご自身で塗ったそうだ。長岡市からはコースターの他にも感謝状やバッヂなども一緒に貰い、すっかりご満悦。「長岡市もなかなかサービスが良い」と、夫婦ともども喜んでいる。
マンホール蓋の今後の使い道について尋ねたところ、「玄関に飾っておくだけだ」という。
引き取り場所から、自身の運転する自動車に乗せるのに、若い職員が2人掛かりで運んでくれた。自動車から自宅に降ろすのが大変だったという。
「持ってみなさい」と正明さんに促され、記者も早速持ち上げようとするが、さすがに一人では持ち上げることができない。「これだけの重さなら、玄関に置いておいても誰も持っていこうとは思わないだろう」と正明さんは語る。
楽しみながらコレクションや美術品の制作に励んでいる山本さん夫妻。マンホール蓋は、これから先も、夫婦円満に趣味を楽しむための潤滑剤となっていくようだ。