【キシャメシGW】新潟に来たら味わってほしい10選 ⑦ ‟越後はひとつ” 新潟県のソウルなローカルフード イタリアンが繋いだ軌跡

ゴールデンウィークのキシャメシは、いつもの「昼ご飯」にこだわらず「新潟に来たら絶対これを味わってほしい」というご当地グルメをご紹介。お土産品、酒肴、スイーツ、お惣菜・・・オールジャンルからにいけい編集部がセレクト。人の流れが多いこの時期だからこそ、新潟が胸を張れる逸品を10日連続でお届けしたい。

 

やはり新潟を代表する食べ物といえば、「イタリアン」一択だろう。念のためイタリアンを知らない人へ。イタリアンとは、ソース焼きそばのような麺にミートソースをかけた新潟県オリジナルのB級グルメ。新潟県では圧倒的知名度を誇り、誰もがなじめる味と食感。しかも価格帯も390~490円代とかなりリーズナブルだ。

ところでこのイタリアンだが、世の中には、いわゆる“正閏論争”といわれるものが未だに存在する。すなわち、イタリアンの二つの老舗を比較する論争、〈みかづき派〉か〈フレンド派〉かという対立構造である。どちらが先に作ったのか、とか、どちらの味が美味しいのか、とか、往々にして、比較され語られる構図である。しかもこの構図は、しばしば新潟市民VS長岡市民という、安易な対立構造と結びつけられて捉えられたりもする。

実際、長岡出身である記者も、自身のSNS内で、地元愛の熱い長岡市民と新潟市民に対して、それぞれ10名ずつ、〈みかづき派〉か〈フレンド派〉か、アンケートを取ってみたところ、見事なまでに、新潟市民は全員〈みかづき〉を、長岡市民は全員〈フレンド〉を、選ぶことから、事情を知らない他県民からみたら、安易に両市民間のライバル関係を持ち出したくなる気持ちもわかる。だが、当事者である両市民たちにとっては、いささか困惑気味だ。「新潟市民と長岡市民は互いにライバル視をしている」—そんなことをいう他県民の人がいるのだとしたら、結局のところその人は、新潟県民のメンタリティーというものを、全く理解していない。新潟市と長岡市の関係は、そんなに単純な構図では割り切れるものではないことは、少し地元の歴史を学べば、直ぐに理解できるだろう。

ではなぜ、新潟市民の多くが〈みかづき派〉であるのに対し、長岡市民の多くが〈フレンド派〉なのだろうか。その問いに対する答えは、両者の店舗展開の仕方の違いにありそうだ。

2024年現在、〈みかづき〉は主に、燕市にある「県央店」1店舗を除いて、新潟市域に店舗展開している一方で、〈フレンド〉は、柏崎市、三条市に1店舗ずつあるものの、主に長岡市域に分布している。その商圏が決して重なることはないのだ。実際、先のアンケートで〈みかづき〉と答えた新潟市の人も、〈フレンド〉と答えた長岡市の人も、お互いがもう一方の店舗でたべたことないから、というのがほぼ全員の理由であった。商圏が重ならない店舗同士で比較して、対立構造を語るのもおかしい話だろう。意識しているのは、案外と新潟市民と長岡市民以外の地域の人たちなのではないだろうか。

イタリアン誕生の歴史を振り返っても、そのことが言えそうだ。そもそも、イタリアンを最初に始めたのは、新潟市の古町にあった甘味処「三日月」の創業者である三日月晴三氏である。1960年代、三日月氏が、たまたま訪れた東京浅草田原町の甘味処「中ばし」にて、大阪風の焼きそばをアレンジしたソース焼きそばがバカ売れしていたことからに想を得、焼きそばにトマトソースをかけてフォークを用いて食べることを思いついたのが「イタリアン」だという。それを当時、三日月氏の親友でもあり、新潟県長岡市のハンバーガー店「フレンド」の創業者だった木村政雄氏がオマージュして長岡で売り始めたのが、そもそもの始まりだという。つまり、新潟県のソウルフードであるイタリアンは、新潟市で誕生し、三日月晴三氏によってその土台が作られ、木村政雄氏によって、長岡市周辺にまでその需要が広がった。いわば、初期キリスト教伝道の礎を築いたペテロとパウロのような関係であり、決して対立しあうもの同士ではない。この二人がいなかったら、「イタリアン」は産まれなかったし、下越地方から中越地方まで、広がりを見せることはなかっただろう。

そもそも、かつてはどうだったのかは知らないが、他県の人が思っているほど、現在の新潟市民と長岡市民の間にライバル意識が強いといった様子もないようだ。平成の大合併を経て新潟市は、日本海側最大の政令指定都市となったし、長岡市も11地域を包含し、山も海も同市で持つ特例市へと成長した。新潟市の人たちから見たら、規模的に見ても、歴史的に見ても、長岡市のことなどライバル視する必要はない、というのが本音だろう。それどころか、長岡市の人たちは、近場で遊ぶところといったらチョクチョク新潟市を訪れるし、海外にいくなら、東京の〈成田〉や〈羽田〉以外には、新潟市にある新潟空港を利用する。
新潟市には、長岡市にないものこそあれ、長岡市にあるものは、大抵新潟市にあると、ここまでいってしまっては、少し長岡の人達に怒られてしまうだろうか。

兎に角、それくらいイタリアン一つ取り上げて、新潟市民と長岡市民の対立構造を語ることは全くの愚かな行為なのである。このように考えたとき、イタリアンは、新潟市民や長岡市民といった垣根を超えた、汎越後主義とでもいえるかのような、越後コスモポリタニズムを象徴するローカルなソウルフードとは言えないだろうか。

〈みかづき〉のイタリアンは、安くてうまい! 〈フレンド〉のイタリアンも、安くてうまい! そこに優劣は決してつけられないし、どちらも最高!これこそが、新潟県を愛し、新潟県の自然を愛し、新潟県の食を愛する者の、ニイガタイズムではあるまいか。是非、新潟県を訪れた際は、滞在先のイタリアンをそれぞれ堪能したいものである。

今回オーダーしたのは、〈からあげ〉 イタリアンの上にからあげが乗っかているのが最高♡

 

(編集部・Y)

 

【フレンド リバーサイド千秋店】

長岡市千秋2丁目278 フォレストコート(フードコート)内 2階

営業時間 10:00~21:00 (営業時間は異なる場合あり)

【グーグルマップ フレンド リバーサイド千秋店】

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