【人手不足もこれで解消!?】新潟県長岡市がスマートアグリで未来の農業を支援
近年の少子高齢化や急速な産業構造の変化により、地域の農家数が減少や農業人口の高齢化が進んでいる。
新潟県内の総農家数は、2020年時点の調査で、平場33,649人、中山間地域28,907人と、2005年と比較して約6割に減少していることが、新潟県の調査によって判明している。
それに伴い、農業就業人口も減少しており、新潟県長岡市では、県内各地の他の市町村と比較しても、減少傾向が著しい。50歳代と60~64歳の層で1990年~2005年にかけてそれぞれ70.5%、65.6%減少している。「少ない人口で広範囲の作付面積を如何に効率的にこなしていけるか」ということが、課題の一つとなっている。
そのような状況の下、長岡市では、持続可能な農業の実現を目指し、デジタル技術を駆使した「スマートアグリ」による革新的な取り組みを推進している。行政としてスマート農業の導入に積極的に取り込むことにより、現状の課題となっている農業人口の増加や一人当たりの作付面積の拡大化を目指す。
スマート農業としての、具体的な技術としては、農業用ドローン、ラジコン型の草刈機、自動操舵トラクターなどがある。これらを導入することによって、一人当たりが従事する耕地面積を効率よく管理できるようになり、作業に対する負担も軽くなる。長岡市では、2024年1月に、約600台のIoTセンサーを地元の水田に設置し、水位や水温をリアルタイムで把握できるシステムを導入した。これは全国でも初めての試みとなった。
長岡市内の農家へのスマートアグリ普及の上で課題の一つとなるのが、その知識を得、技術を学んでもらうことである。そこで、長岡市では、長岡市内農家が労働力不足を克服し、新規就農者を増やすことを目的としたトライアル拠点「スマートアグリ長岡」を設立した。これによって、誰でも気軽にスマートアグリを学ぶ機会が提供されている。
また、スマートアグリの導入にあたっては、技術の習得や設備の整備などから多大なコストが必要とされる。そのことから、なかなか導入に踏み切れない農家も少なくないはずである。
これに対して、長岡市は今年4月、経営面積15ヘクタール以上(中山間地域等にあっては10ヘクタール)を有する長岡市内の農業法人、組合を対象に、スマートアグリ技術の導入経費の1/2以内の額を補助する長岡市スマートアグリ推進事業補助金の受給者を公募した。
「スマート農業の効果がすぐに現れるとは考えていないが、導入してから3~4年はかかる。だからこそ、早めの対策と行動が重要」と長岡市農水産政策課の大竹聡史さん(36歳)は語った。
大竹さんによれば、長岡市では、今後もフィールドワークを中心にスマートアグリの効果を検証し、地域の農業を支えるための施策を続けていく予定だという。
ロボットやAIなどを駆使した最新のスマート農業は、米処新潟を支える救世主となるのか。長岡市の試みに、新潟県内の農業関係者が注目している。
(文・写真 湯本泰隆)