風力発電は、エネルギー王国・新潟の新たな宝になれるのか
新潟県では、本県沖における洋上風力発電のポテンシャルを調査する事業者を公募していたが、このほど委託先候補者が、日本気象協会新潟支店に決定した、と発表した。
委託候補者に選ばれた日本気象協会新潟支店の提案内容の骨子は以下の通り。
・佐渡島の影響を受ける新潟県沖特有の風況データを取得していく
・将来の風車設置間隔を考慮し、最小100mメッシュで詳細風況シミュレーションを実施する
・新潟県沖で洋上風力発電を実現するための課題を抽出・整理し、ポテンシャルマップに反映する
・風力発電事業者を含む有識者が参画する委員会を開催し、助言を受けることにより、有望地を検討しやすい洋上風力ポテンシャルマップを作成する
今後、この提案内容をもとに、県と日本気象協会新潟支店で契約に向けた協議を進めていくという。
■県内の風力発電事情は…
ところで、県内の風力発電事情に目を転じてみると、胎内ウィンドファームが奮闘している。
同社では一昨年、63・5億円を投じ、胎内市の海岸沿いに10基の風力発電を設置し、運転開始した(写真)。
この運転開始により、胎内市の海岸沿いには、少し内陸側にあるものも含め、これまであった、中条風力発電所(1基)、紫雲寺風力発電所(4基)、片山食品(1基)と合わせ、計16基が立ち並び、近く通る人の目を楽しませている。
また、胎内市に隣接する村上市の岩船港沖でも、大規模な洋上風力発電の開発プロジェクトが進行中だ。
日立造船を代表とする10社コンソーシアムが合計44基の大型風車を設置する構想で、概算事業費は1430億円にものぼる。
発電開始は2025年とまだ先だが、実現すれば陸上と洋上を含めて国内最大の風力発電所になることから、メンテナンス産業やメンテナンスに使う関連部品産業などの産業集積に対する地元の期待は高まっている。
なお、この村上市の風力事業構想は、2013年6月に日本海沖での風力発電導入の研究調査を進めていた名古屋大学が同市を訪問し、洋上風力発電事業の説明を行ったのがキッカケ。
これを受け、同市では、本格的に進めることとし、事業者を公募。先述の通り、日立造船をはじめとするコンソーシアムに決まったのだ。
その名古屋大学の資料には、胎内市においては、風力発電100基の事業規模が展望できると記されている。
■エネルギー王国・新潟
県のホームページによると、現在、新潟県は原油で国内生産の61・9%、天然ガスで76・8%を占める。いずれも生産量は全国1位。
また全国59か所の鉱山のうち新潟県に16か所も集中している。
そして今、上越沖に眠る燃える氷「(表層型)メタンハイドレート」でも注目を集めている。
県内の発電能力も高い。
停止中だが世界最大の原子力発電所である柏崎刈羽原子力発電所(8212メガワット)や、熱効率世界最高クラスの東新潟火力発電所(5153メガワット)、上越火力発電所(2380メガワット)などが立地し、東北電力のみならず、東京電力、中部電力管内へと送電している。
水力発電の能力も高く、新潟と福島にまたがり、映画『ホワイトアウト』のモデルとなった奥只見ダム(560メガワット)は、揚水発電を除けば、日本一の出力を誇る水力発電だ。
さらに再生可能エネルギーの取り組みも進む。
たとえばメガソーラー(大規模太陽光発電)。新潟県企業局が、新潟県東部産業団地(阿賀野市=写真)で17メガワットのメガソーラーを営業運転しているほか、オリックスが新潟市西区に約55メガワットのメガソーラーを建設中で2018年にも稼働予定。
地熱発電でも、ソフトバンクグループが糸魚川市で小型発電所建設に向けた調査に着手した。
さらに木質バイオマス発電において、このほど新潟市北区に発電所が完成したほか、三条市や関川村でも計画がある。
このほか、県では
・粟島で日本大学理工学部などが粟島で行っている潮流発電の実用化実験の支援
・バイナリー地熱発電の普及(本県の温泉地数は全国第3位)
・小水力発電の普及(本県の包蔵水力は全国第4位)
なども行っている。
遠くない将来、風力発電も、エネルギー王国・新潟の新たな宝になるかもしれない。
(胎内市の風力発電)