【産学連携】暑さに強いコメ作りに挑戦:岩塚製菓と新潟県農業大学校が共同プロジェクト
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初掲載:2024年6月23日
夏の高温・高湿度の暑さが続く季節は、人間だけではなく、多くの作物にとっても過酷な環境となる。特に、新潟県の食産業を支える米の場合となると、困るのは消費者ばかりではない。それらを加工することによって生産活動を行う酒造業や米菓業にとっても大打撃となる。
新潟県長岡市に本社を置き、100%国産米を使用してる岩塚製菓株式会社は今年、新潟県農業大学校の稲作経営科で学ぶ6人の学生とタッグを組み、暑さに強い米作りを目指す実証実験を、共同でスタートした。
このプロジェクトでは、まず学生らが、比較的夏の暑さに強いとされている「ゆきん子舞」の実証栽培を行う。続いて、秋に収穫された米を岩塚製菓が買い取って、自社ブランドの米菓に使用する計画となっている。特に、今回の実証栽培では、10アールあたり600キロ以上の収穫を目標とした。
同プロジェクトは、同社からの提案に、同校で学ぶ魚沼市出身の星野楓登さん(19歳)が名乗りを上げたことによって始まった。星野さんは、長岡市にある新潟県立農業高校で学んでいた頃から、長岡市内にある酒蔵と一緒に米作りに取り組むなど、企業と一緒に事業を行っていた経験を持つ。同校に進学してからも、企業連携に関心を持ち続け、日頃から同校の教員に連携を働きかけていたという。一方、同社でも加工米を使用する関係から、日頃から農家が抱えている課題に関心を持ち続けており、企業としても新潟の農業をどうやったら応援できるかということに取り組んでいた。今回、連携の相談を進めるうちに、今回の共同プロジェクトの実現となった。「秋の収穫が楽しみだ」と同社の小林晴仁常務は、大いに期待している。
同プロジェクトの開始にあたっては、2024年3月6日に、実際に作付けを行う6人の学生が、同社工場を見学。まずは、同社の製品や、原料米へのこだわり、特に、100%国産米を使用している理由などについて説明を受けた。その後、うるち米を使ったせんべい作りや、もち米を使ったおかき作りの工程も見学した。その際、同校に通う加藤裕明さん(19歳)は、「米のどういう観点で品質を求めているのか。米粒の大きさなど、どういう所を重視しているのか、などに注目して見学したい」と語っていた。
4月25日からは、農業大学校敷地内にある実習田で、学生たちによる本格的な田植えが行われた。植えられたのは「ゆきん子舞(ゆきんこまい)」といわれる品種である。同種は、コシヒカリよりも夏の高温に強く、多収が期待できるという特徴を持つ。この日、トップバッターとして最初に田植えを行ったのは、星野さんだ。他の学生は星野さんのサポートに回る。同校同学科では、一人一反ずつ、実習田を持っていて、作付けを行う際は、学生たちは、自身の作業以外にも、他の学生の作業を手伝うことになっている。このような経験を通して、農作業を協力して行うこと大切さや、責任感、連帯感の形成を次第に身に付けていく。
トラクターで乱れることなく、綺麗に作付けをしていく星野さん。直線をキープできるようにGPSなどを用いながら操作しているという。
作付けを終えてひと段落した星野さんは、「最先端の技術を自分が体験できて勉強にもなるし、やっていて楽しい。(トラクターの操作は初めてで)緊張もあったが、自分で納得できるようなものができてよかった。」とコメントした。
同校の藤田悟校長も「皆一生懸命やる気満々」と、安心した様子を見せる。また、実習を指導した歌代摩可子准教授も、「この学年は初めての田植え。みんな頑張ってやってくれていると思う」と述べた。
同社の畳谷和之サステナブル推進準備室長は、「(普段から)米作りの次世代を担う人々の活動に関心を払っている。お米なしでは、当社の商品が成り立たない。会社としても今後積極的に協力していきたい」と語る。
(文・写真 湯本泰隆)