【独自】能水商店(新潟県糸魚川市)創業者の松本将史氏がドイツ式の職業教育を行う「ライトシップ高等学院」創立へ
新潟県立海洋高等学校(新潟県糸魚川市)で生徒と共に鮭魚醤「最後の一滴」を開発し、2018年に公立高校教員を退職して株式会社能水商店(新潟県糸魚川市)を創業、今も海洋高校の特色ある教育活動を支援する松本将史氏(45歳)が直江津港佐渡汽船ターミナル(新潟県へ使用許可申請中)を拠点にドイツ式の職業教育を行う「ライトシップ高等学院」のホームページを公開した。来年2025年4月に開校。現中学3年生や転編入を検討する現高校生が第1期生の主な対象となる。
ドイツでは、徒弟制度の流れを組む「デュアルシステム」と呼ばれる、企業での週3〜4日間の労働と学校での座学を並行する高校教育が制度化されている。松本氏は10年前にドイツとスイスの産業教育を視察して以来、子どもたちの多様な個性を活かすこの仕組みを国内にどう持ち込むかを考え続けてきたと言う。
視察に行った当時は土日も休みなく生徒と「最後の一滴」を造って売っていた頃。大人顔負けの商談も出来る生徒が育つのを見て、ボリュームある実践こそが人間の成長を促すと確信していた。
時は流れ、ライフワークバランスが求められる時代。「1週間の稼働5日間の中にボリュームある実践ができるカリキュラムをつくる必要があります」と松本氏は語る。
このために、新潟産業大学附属高等学校通信制課程と提携して(広域通信制課程サポート施設としての設置認可申請中)、在籍3年間で高校を卒業できて週3日間程度のOJT(On the job training:有給で働きながら職業の知識と技術を学ぶこと)に取り組む、国内初の本格的なデュアルシステムを構築した。
現在、上越地域(上越市・糸魚川市・妙高市)の50社以上とOJTカリキュラムの開発をしていて、開校以降も連携企業を増やしていくという。連携企業一覧は10月にHPで公開する予定。
また、OJT以外にも、上越地域の活性化を目的とした「ソーシャルビジネス」に取り組むプロジェクト型の学習を行うカリキュラムもある。学院生たちが企画して運営する持続可能な「地域おこし」を通じて、経営的な視点も育てることを目的としている。まずは、ターミナル内の閉店しているお土産店を再生するチャレンジから始めるという。
学院の名称にしたライトシップは、航路を示す移動式の灯台を背負った船である「灯台船」という意味で、固定された学校ではなく、時間や場所に捉われずに学ぶ学院生たちを導く光となる、という意味が込められている。
依然として、通信制高校は不登校の生徒の受け皿として捉えられている向きがあるが、この仕組みは通信制高校の強みを攻めに使っているとも見える。
「将来就きたい職業が明確に決まっている生徒だけを対象としているわけではありせん。そのような生徒は稀ですし、むしろ将来の自分の姿をイメージできないからこそ実践が必要なのです。才能を磨き、何者かになれた3年間がその後の人生にとって重要な意味を持ちます。就職だけでなく総合型選抜で大学進学を目指す学院生の進路サポートもします」(松本氏)。
7月27日を皮切りに月1回のペースで学校説明会を予定している。HPより申し込みができる。これまで国内にはなかった新しい高校が上越に生まれる。生徒がどんな成長をして社会で活躍していくか、今から楽しみである。