「妙高ゆきエビ」のIMTエンジニアリング(新潟県妙高市)が関西電力と合同会社を設立、静岡県磐田市に世界最大規模のプラントを建設
「妙高ゆきエビ」の名前でエビを養殖、販売するIMTエンジニアリング(新潟県妙高市)が関西電力株式会社(大阪市)と「海幸(かいこう)ゆきのや合同会社」を昨年10月に設立し、静岡県磐田市に陸上養殖としては世界最大規模のプラントを建設、来年3月から生産を開始する。初出荷は来年7月ころになる見通し。
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IMTエンジニアリングは、国の研究機関と共同開発した陸上養殖システム「ISPS(Indoor Shrimp Production System)」を使い、妙高市でタイから輸入したバナメイエビの稚エビを養殖してきた。「ISPS」は水をろ過しながら循環させるクリーンなシステムだが、プールの水温を28度に保ったり、人工海水を作ったりするなどコストがかかるため、エビの単価も輸入エビより高くなる。
IMTエンジニアリングの冨田代表取締役社長によると、妙高ゆきえびはクリーンな水で育てられている一方、海で育ったエビは衛生的な面で疑問符が付くという。そうした中、こうした特性を活かし、妙高ゆきエビは病原体やサプリメントの研究などで大学や企業の研究室などでも活用されている。海幸ゆきのやを設立した関西電力とも同社の研究所とのつながりから事業化に発展したという。
今年末から来年始めには磐田市に拠点を移すが、磐田市にした理由は補助金が付くからだという。磐田市の施設はプール6レーンで妙高市の施設の約4倍となり、年間80トンの生産を目指す。エビは新しいブランド名「幸(ゆき)エビ」と命名され、「全国ブランドにしたい」(冨田社長)と意気込む。
「妙高ゆきエビ」は妙高市特産のエビとして、地元の料亭やフレンチ、イタリアンレストランなどで提供されてきたが、「幸エビ」も全国的な高級ブランドでの展開を目指しており、都内の料亭やフレンチレストランなどを中心に取り扱われる見通し。
冨田社長は「高度成長期に作られた工場が全国で空いてきており、跡地利用の需要がある。陸上養殖はブームになってきているので、関西電力との本事業が成功すれば全国的に広がる可能性がある。輸入エビは衛生的に問題があり、安心安全と将来の国の食料の自給率向上の観点から、現在20数万トンが輸入されているエビの3分の1でも国内で生産できれば、今後急速に拡大するポテンシャルを秘めている」と話す。
また、冨田社長は陸上養殖について、「海面はすごく汚れている。温度変化や潮流の変化の影響も受けるので獲れなくなる。そういう時代は終わった。陸上養殖で、多少割高でも安心安全なエビを作るという傾向になってきている」と話していた。