【コラム】第5回「上越の経済情勢や雇用状況の現状と課題」 竜哲樹(元上越市議会議員、元産経新聞記者)

 

上越の市内経済の現状と将来性、課題を分析

新潟県上越市では江戸時代、明治・大正、昭和初期は直江津港を中心に北前船などによる海上輸送や交易で栄えたが、その後は企業進出に伴う臨海工業地帯として発展を遂げてきた。素材型産業も含めた製造業・金属業、建設業や運輸業、解体・資源回収業などが市内経済の発展を牽引してきたが、ここにきて立地を生かしたLNGエネルギー・電力産業などに続いて、IT産業なども新たな市内経済の中核に育ちつつある。

上越地域は昔から、基幹産業としてのコメを中心とした農林漁業はじめ、呉服・繊維産業、お菓子・味噌等の食品加工、更に卸・小売業などの下支えがあって、今日の製造業や建設関連、医療・福祉分野などが発展してきた歴史があり、現時点で従業員数や出荷額、付加価値などが何とか新潟県内市では第3位を維持してきている。

ただ今後の上越の将来性を考えた時、突出した産業に頼るのではなく、あらゆる業種・産業がバランス良く発展していくことに懸かっていると思う。まさに海、平野、山間地の全ての地域資源を存分に生かしたあらゆる産業が継続的に発展することが求められていると考えられる。その上で課題が何かと考えた時に、他の自治体もそうだが、やはり過疎化や少子高齢化の中で、経済を支える人材をどう育て確保するかということだろう。

 

若者雇用はじめ雇用の現状と課題を考察する

少子高齢化によって、中でも若者の人手不足・人材不足が深刻さを増している。上越においても特に建設業界や福祉介護分野などで人手確保の深刻さが顕著になっている。

従って、若者雇用も含めて人手確保が地方自治体の最大の課題となっており、高校卒業や大学進学で都会に出ていく若者達を地元へどうUIJターンへと繋げていくことが出来るかが何よりも重要だろう。

そうした背景の中、幸いにも新卒で見た場合、20年程前の大学卒業生の就職氷河期と違い、マスコミ報道にある通り、今は高校・大学の卒業生が全企業において『金の卵』となっていることはあり難いし、ぜひ若者達には地方で働いて欲しいと願っている。

国も、都会への一極集中から地方移住を含めた地方創生に躍起になっており、様々な支援策に取組んでいる。上越も子育て支援には全力を挙げるとともに、UIJターンに向けた市独自に様々な制度や施策を進めて来ている。更に上越に進出する若者向けのIT企業などへの支援によって若者就職を強力に後押ししている。

このように、これまで以上に自治体間競争が一層激しくなる。市内経済をどう発展させて行くか、経済の発展なくして若者雇用の安定もない。

 

課題深刻の中、将来性に向けたカギは何か?

少子高齢化に伴う人手不足が進んでも、現在の市内経済や雇用をしっかり維持し、持続的発展に取組むしかなく、これまでとは違う新たな冒険や飛躍は考えにくい。

上越市にとって『将来性に向けたカギは』、それは何だろう? もしあるとしたら、これから上越市を担ってくれる若者や成年世代が求めるものを探ることであり、上越市の将来は彼ら彼女らに託す以外にないのだから、次の「主役」である次世代とともに考えることだろう。

芸術や文化、趣向を活かしたまちづくりであったり、他に負けない観光コンテンツを創ったり、その上で観光客や交流客なども含めて、豊かな自然に恵まれたこの地に、どう賑わいをもたらすことが出来るかに懸かっているようにも思う。

もう一つ、雇用面も含め多文化共生の角度から外国人材にも幅広く市民生活を提供出来るそんな地域環境をどう創っていくかに懸かっているのではないか。幸い上越には職場や結婚などで約2,000人の外国人が生活している。日本人は永年単一民族で外国人との共存・共生が苦手と言われて来たが、もうそんなことを言ってはいられない。

上越市の将来を考えた時、若者・次世代に将来を託せるまち、外国人が集う多文化共生のまちを敢えて私は『新たな将来性のカギ』と見たい。

 

竜哲樹

昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。

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