【にいけい編集部発】記者コラム&今週の主なニュース 8月10日〜8月16日

記者コラム   メディアのデジタル改革とニューヨークタイムズ

新聞の発行部数が減少している、というのは昨今あちこちで話題になっている。一方で、デジタル版が各新聞社の「救世主」になり得るかといえば、現状では「紙」の部数減をフォローしきるまではほど遠いようだ。

日本の新聞社の有料オンラインサービス「唯一の成功事例」と言われる日経電子版ですら、2020年以降デジタル版の有料会員数は完全に伸び悩んでいて、「紙」と電子版の合計購読数は減少の一途。他社の苦戦は推して知るべしである。こうなると「新聞」という形態そのものが、デジタル化に向いていないのではないかとすら感じる。

一方で、海外にはこんな事例もある。米ニューヨーク・タイムズの「デジタル・ファースト」な企業体制づくり、である。

先日、日本の独立系ベンチャーキャピタル大手、株式会社ONE CAPITALのオウンドメディアで、志水優太氏が書いたコラムを読んで目から鱗が落ちた。以下はその記事からの引用を含めて記述する。

ニューヨーク・タイムズは、地方紙でありながらも世界的にも米国を代表する新聞として見なされ、これまでピューリッツァー賞も90以上獲得してきた。

そんな同社にも、当然「紙」の部数減は押し寄せ、近年はデジタル版への重心移行を高めてきたのだが、順当に推移してきた新規有料購読者数が2012年~2013年にかけて一気に半分以下になった。課題を解決すべく英BBCで数々の実績を築いてきたマーク・トンプソン氏がCEOに就いた。

トンプソン氏は、まとめられたイノベーション・レポートを元に、施策として「Growing Our Audience(読者開発)」「Strengthening our newsroom(編集室の強化)」という二部構成の改革を打ち出し、2016年ごろからデジタル分野のサブスクリプションを急激に伸ばし始めた。2020年にはデジタル部門の購読・広告売上が紙版を上回るほどに、見事なデジタル・トランスフォーメーション(DX)を遂げている。

数多くの施策のどれもが既存の新聞社やそれを中心にしたマスコミ業界に、それまでなかった考え方だったと感じる。それを考えると、常に新しい情報を提供し続けるのが仕事のように見える新聞というパッケージが、いかに世間の潮流にアジャストしていなかったか、ということにもつながるのだが。

記者が最も印象的だったのは「ビジネス部門と編集局の協業強化」である。それまでの新聞業界では「国家と教会の分離」というメタファを用い、広告獲得や収益拡大と記者の記事執筆が近づくことでジャーナリズムの独自性が損なわれるという「常識」がはびこっていた。しかしデジタル時代にはそれでは通用しないという判断をしたのだ。ビジネス部門と連携することで、記事を書くだけで終わりだった編集局が読者データを分析し、読者の求める形でコンテンツを届けられるようになるなど、デジタル時代に適したメディアの作り方を学ぶことができ、これは読者体験の改善にも繋がるものだ。

メディアにおけるDXとは、単純な労務の合理化や人減らしではない。ジャーナリズムの独自性を担保しながら、デジタル時代の需要をオンタイムで掴み、常にユーザーフレンドリーでいることが求められる。既存の姿勢に、さらに「ひと汗かく」必要がある。

にいがた経済新聞には、現在のところ有料コンテンツはない。すべての人が無料で楽しめる紙面であり、すべては広告収入のおかげである。だからといって、もちろんジャーナリズムの独立性は損なわれてはいないのだが、今後は「紙面の質」をどう考えるか、がますます問われるだろう。

(編集部 伊藤 直樹)

 

今週の主なニュース

編集部ピックアップ

【今トレンド?の多拠点生活】新潟県上越・妙高エリアに魅せられた東海地区から訪れる2人に2拠点生活をする理由を聞く

【特集】がん患者を支援するチャリティーイベント「リレー・フォー・ライフ・ジャパン2024にいがた」が10年の節目、アンバサダーの伊勢みずほ氏が語る開催への想い

【ジープ島開島者は新潟県上越市出身】連載コラム執筆中の吉田宏司さんの「ジープ島特集」(動画あり)

 

経済

【好調継続】ハードオフ(新潟県新発田市)の7月度既存店売上高、35カ月連続で前年上回る

【にいがた経済新聞社共催・企業経営セミナー】「外国人財活用が企業の存亡を決める!」9月2日に開催|会場:新潟テルサ(新潟市中央区)

【新潟県の経済動向】5月~7月の新潟県内経済「緩やかに持ち直ししている」

【少子化やペーパーレス化で市場縮小】事務機などの株式会社アイエスセンター(新潟県長岡市)が破産開始決定

【受け入れ体制強化に向け】Airbnb Japan(東京都)と新潟県佐渡市が連携協定締結、地域の活力向上と賑わいあふれるまちづくりを目指す

政治 

【自民新潟県連】次期参院選の候補者公募候補による意見発表会を公開で開催、多士済々4名のキャラ立ち度いかに

【率直に驚いております】岸田首相の自民総裁選不出馬を受け新潟県佐渡市の渡辺市長がコメント

 

社会

【豚熱】新潟県新発田市の養豚場で豚熱の感染が判明、約450頭が殺処分へ

【金山に続け】佐渡市小木地区の街並みが国の重要伝統的建造物群保存地区に正式選定

【県内全地域で入込数増加】新潟県が令和5年新潟県観光入込客統計調査結果を発表

【初の空路と海路の連動訓練】新潟県が原子力災害を想定した航空機・船舶避難訓練を実施へ、新潟県柏崎市・上越市・長岡市で

 

地域・くらし

【今年も開催決定!】東区工場夜景バスツアー、全5回の特別コース(新潟市東区)

 

こんな記事も

 

── にいがた経済新聞アプリ 配信中 ──

にいがた経済新聞は、気になった記事を登録できるお気に入り機能や、速報などの重要な記事を見逃さないプッシュ通知機能がついた専用アプリでもご覧いただけます。 読者の皆様により快適にご利用いただけるよう、今後も随時改善を行っていく予定です。

↓アプリのダウンロードは下のリンクから!↓