【キシャメシ】東区のものづくりを、胃袋から支えてきた琴吹食堂(新潟市東区)で冷やし中華を
読者の皆さんは、「新潟のものづくり」と聞いてどこを想像するか。ズバリ「三条市・燕市」ですね。これがメンタリズムです。
一方で大手重機メーカーの関係者に聞くと、新潟のものづくりといえば、小千谷市のメーカーの信頼度がダントツらしい。このあたり、イメージと現実には差異があるものだ。
最近は新潟市東区の工場地帯も、製造業の根拠地として注目を浴び始めた。北越製紙や旭カーボンなどが有名どころ。
10月には県央の「工場の祭典」に倣った「東区オープンファクトリー」も開催される。工場夜景ツアーも人気。各工場には汲めど尽きぬ豊饒なバックストーリーが多々ある。もっと注目してほしい、東区のものづくり。
そんな東区の工場地帯にほど近いロケーションで、いつか行ってみたいと思っていた喰いどころがある。歴史深そうなその風貌は、常に人気の食堂として名前が挙がる。
新潟市山木戸の「琴吹食堂」がその店。どうすかこの風貌、味でしょう?
少し時間をずらして訪店。入口の黒板に「本日のサービスメニュー」が書いてある。「中華飯」「冷やし中華」いずれも700円。いや安いよね、今日び。
店に入ると、12時前だが作業服姿の男性が数名。まさに昭和ノスタルジーな原風景の食堂。長年にわたって東区製造業従事者の胃袋を支えてきた歴史を感じる。店内にはメニューがずらり、財布にやさしくて涙が出る。
店内に扇風機が回っている(もちろんエアコンも稼働しているが)様は、実家の縁側のような居心地。夏に帰省した実家感。
本棚から「弐十手物語」と「ジパング」を手に取ってカウンターに着座。さて何にしようかな。ネット情報では多くの昼客が頼む「おまかせ定食」があるというが。今日は「塩サバ」と書いてあった。それも良し、だけどなぁ・・・
少し考えてサービスメニューの「冷やし中華」(700円)をオーダー。8月半ばの外気を考えれば妥当なところ。
漫画を読みながら待っていると、すぐに着皿。おお!良い顔の冷やし中華だねい。ハム、きゅうり、たまごの細切り、大きめのトマト、わかめ、紅生姜・・・オーソドックスこの上ないが、入っていてほしいものはこれですべてだ。
一口すする。良いね、優しい味だ。優しい中にごまが香るのがまた良い。この冷やし中華で良かったな、と思う。これまで多くの製造業従事者に夏の涼味を運んできたに違いない。
それにしても「冷やし中華には辛子をつける」というスタイルを考えた人は偉いね。こういう人がiPhoneとか発明しちゃうんだろうな(適当)。
普段はあまりやらないが、つい冷やし中華のスープ(?)も全部飲み干してしまった。美味かった。
帰り際、女将さんらしき人に聞いてみた「このお店、何年やっているのですか?」。すると「57年くらいでしたかね、そのくらいだと・・・」
出がけには12時を回っていた。あとからあとから、作業服姿のお客が額の汗をぬぐいながら入ってきた。
(編集部I)
【琴吹食堂】
新潟市東区山木戸4丁目7-1
営業時間 11時~14時 17時~21時
定休日 日曜
<グーグルマップより>
【キシャメシ】は、にいがた経済新聞編集部のメンバーが、日々の取材活動の合間にいただく昼ご飯を日替わりで、真正面から他意を入れず、何モノにもとらわれず、お仕着せのグルメリポートに背を向け綴った、キシャの日常モノローグ。さて明日の担当キシャはどこで何を食べるのか、お楽しみに。