【ブランディングの根元】“目線”をイメージする力|関本大輔(株式会社アドハウスパブリック)#3
こんにちは。株式会社アドハウスパブリック代表の関本大輔と申します。
このコラムでは、「ブランディング」をテーマに、その本質や大切にしたい考え方について弊社の事例を交えながらお伝えしています。
今回は、私が普段から意識している“目線”の大切さについてお伝えします。
あらゆるビジネスのシーンにおいても重要な考え方だと思いますので、ご興味がありましたらぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
“目線”をイメージする力とは
私がブランディングやデザインにおいて普段から意識していること。それは、“目線”をイメージすることです。
例えば、店舗の集客計画をするとき、まずはその場にいる人・そのお店を訪れる人の目線を自分の頭の中でしっかりとイメージするところから始めます。
「ここにこんなものがあると、きっとこう見えるだろうな」「人はこんなふうに動くだろうな」という目線をイメージし、さらにその先にある「こうなるといいな」という未来をシミュレートしながら、具体的な計画を立てていく。そんなことをいつも実践しています。
このイメージ力を鍛えられたのは、29,30歳の頃。当時、私は大手レンタルビデオチェーン店の店頭ポップ制作の仕事を大量にこなしていました。
店頭に置かれるビデオの告知や本の紹介ポップなど、千本ノックのようにひたすら作り続ける日々。しかし、なかなかディレクターの厳しいチェックに通らないのです。作っては却下され、また作っては却下され……。
その関門をクリアするためには、やはり目線をイメージする力が必要でした。
与えられた作品タイトルとコンセプトから「あのエレベーターで上がってきた人には、何が引っかかるか」「たくさんの商品が並ぶ中で、どんな言葉なら惹きつけられるか」など、現場と人の動きをイメージするのです。
ポップの内容によって商品の売り上げも大きく変わるため責任重大でしたが、この経験が今の私の原点かもしれません。
“目線”をイメージすることが物事の起点になる
そこにいる人はどんな目線で、何を思うのか。どんなことに心を動かされて行動するのか。これらをイメージすることは、ブランディングやデザインについて考える際の起点となります。
とくにブランディングは、モヤモヤとしているところに道筋を作ることから始まります。
例えば、商品はあるけど、どんな方針で売るか・どんな店舗にするかなど、明確な方針が定まっていない状態。ここから、方向性を定めて歩んでいくためには、「来店する人はきっとこう思うだろう」「こう判断するだろう」と、ターゲットの目線をイメージする必要があります。どんな計画も、はじめの一歩目を踏み出すためには、まずイメージすることに尽きるのです。
ここで、目線を活かして成功したブランディングの事例をひとつご紹介します。
新潟市の万代島にある『ピアBandai』さま。施設のオープンから10年を迎えるタイミングで、若者やファミリー層をターゲットにした施設を目指すリブランディングに取り組みました。
当時50〜70代の利用客が多かったこの施設は、若者やファミリー層にはどう見えるのか。そんな目線で施設を見てまわると、これまでには気付かなかった改善点をいくつも発見。また、従業員の方々へのアンケートでは、そこで働く人だからこそ知る施設の現状やお客さんの情報も集まりました。それらをもとに、私たちも社内のメンバーから意見を集め、施設がより魅力的に生まれ変わるためのアイデアを考えていきました。
その結果、今では多くの若者や観光客が訪れる施設として生まれ変わり、売上も1.5倍ほどにアップ。見事にリブランディングが成功したのです。
もちろん、自分のイメージした目線がターゲットの目線と必ずしも一致するとは限りませんし、想定していなかった目線が出てくることもあるでしょう。しかし、自分から見えている景色だけにとらわれず、「こんな人ならこう思うだろう」「あの人はこうかもしれない」と、ターゲットの目線に立って多方面から物事を見つめることで、課題や目指すべき方向が見えてくるはずです。
イメージする力を鍛えるには?
このコラムを読んでいる方の中には、「イメージをするのが苦手」「どうすれば他者目線に立てるのか分からない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は、イメージが見えないときは情報が足りていないことがほとんどです。そんなときは、ヒアリングや調査を重ね、イメージが浮かぶまで情報を取りに行く必要があります。
足を運ぶのはもちろん、必要なテーマに絞って膨大な情報と多様な目線を仕入れることができるアンケートも、とても有効だと思います。とにかくインプットの量を増やすことが一番の近道なのです。
どんな場面にも、明確な「答え」というものは存在しません。こんな人がいて、こんな場所で、おそらくこんなふうに見えるだろう。そんな想定シチュエーションが「答え」に近づく材料となっていきます。
だからとにかく、情報を集めてたくさんイメージする。いろんな人の目線でイメージすることを積み重ね、イメージの精度を高めていくことが鍵となります。
これは、ブランディングに限らず、あらゆるビジネスの場面においても大切なことだと思います。さまざまなイメージや仮説を積み重ねた先にこそ、プロジェクトの成功が待っているはずです。
今回はここまでとなります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
関本 大輔(せきもと だいすけ)
株式会社アドハウスパブリック代表取締役。新潟デザイン専門学校を卒業後、東京の出版社でデザイナーとして勤務。その後、父が設立した会社を継ぐため帰郷し、2013年に代表取締役として就任。
お客さまの本質的な課題解決につながるインナーブランディングと卓越したデザインで、さまざまな企業や事業のブランディングに携わる。過去1,000件以上の実績で、地域・業界を問わず評価されている。
米国ギャラップ社認定ストレングスコーチのほか、越後雪室屋ブランドディレクター・理事、新潟県6次産業化プランナー、新潟市異業種交流研究会協同組合理事長を務める。
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