【コラム】第6回「上・中・下越の地域独自性と将来の可能性」 竜哲樹(元上越市議会議員、元産経新聞記者)

 

上・中・下越の歴史から見た地域性と独自性

戦国の世までは言うまでもなく、『京(京都)が都』。京から見て上・中・下越と名付けられた。特に謙信公の戦国時代には一時的に上越が人口面でも産業面でも中心的に栄えた時代もあり、『徳川の世』からは東京が都となり、江戸初期には徳川家康の六男(松平忠輝)が高田藩の藩主となり、世界遺産となった金山の佐渡も含め現在の新潟県のかなりの部分を高田藩が占めた。

ところが江戸の末期からは次第に立場が下・中・上越へと逆転し、廃藩置県による明治の国策もあってか県庁が現在の下越である蒲原地域(新潟市)に置かれるようになって、下越が決定的に圧倒的な首位に躍り出たのだ。

その後、新潟港はじめ新潟空港・関越道・上越新幹線など高速交通体系も大きく整備され、下越のみならず上越線沿線の中越にも大きな国の資本が投下されて行った。

新潟県は〃大県〃で、村上から糸魚川まで約300kmというとてつもない長い海岸線を擁し、上・中・下越という『3地方・3地域』では括れないほど、それぞれの地域にはもっともっと細分化した地域性があり、それらの地域が独自性と様々な歴史を刻んでいることを忘れてはならない。併せて隣県で見ると、上越は長野や北陸と、中越は群馬や福島、そして下越は山形などとの結びつき、交流・交易を深めることで、更なる独自性が生まれていったようにも思う。

 

上・中・下越の現時点の経済や文化等の実力

前の段落でも述べたように、新潟県全体を上・中・下越では括れないことは確かだ。その上で敢えて言及すれば、現時点では人口的には新潟市を含む下越が県全体の60%を占め圧倒的だ。面積から言うと中越は長岡市だけでなく魚沼・十日町・柏崎などを含むことから下越より広いし、人口的にも県全体の28%を占める。上越は人口や面積から見ても圧倒的に小さい。

そこで経済力の面から見た時、燕市や三条市などを含む新潟市を中心とした下越が飛び出ており、その次は当然ながら、製造業の多い長岡市を含む市の数の多い中越ということになる。

具体的に工業出荷額等を令和2年資料から拾って見ると、下越は2兆5,000億円、中越も1兆4,000億円を超えるも、上越は8,000億円に止まる数字のようだ。

一方、文化面などから見た時、音楽や絵画等の芸術、小説や短歌などの文学、更に映画やスポーツまで広げたとしても、それぞれの3地域には優れた面々が名を連ね、多分優劣を付け難いに違いない。それぞれの分野の有名人を挙げてみてもいいかも知れない。そうして比べるしかないので敢えて記させて戴くことにする。

小川未明や田中美知太郎、坂口謹一郎、横山操、山岡荘八、藤沢周、三波春夫、水島新司、川合俊一、渡辺謙などなど出身地が全県内に渡っており、地域差はないかも知れない。

 

上・中・下越の秘めた発展性と将来の可能性

最後に、今後の発展性や将来性に言及してみよう。まずは〃欲目〃で私の住む上越地域を考えた時、新潟港には及ばないものの近年、直江津港が〃エネルギー港湾〃として著しく発展を刻み始めた。更に信越化学やデンカ、新日鉄、日本曹達、太陽誘電などの大企業も上越地域の雇用を守っている。

観光面では妙高市へのスキー客、観桜会や春日山観光なども少しずつ増えつつあり、北陸新幹線が敦賀まで延伸したことにより、関西や北陸、中京からも順調に伸びているほか、佐渡金山の世界遺産登録で、小木・直江津航路利用客が増えることにも期待したい。

新潟市を擁する下越は、今後トキエア(航空)によって北海道等の観光客を大いに誘客出来るし、佐渡金山の世界遺産登録は、トキエアのほか両津港への乗船客は更に大いに期待出来る。

長岡花火や寺泊などの長岡市を含む中越などもいつも多くの観光客が訪れ、更にスキー客のメッカである湯沢はじめ、温泉地で言えば下越の月岡や瀬波に負けないほど湯田上温泉や魚沼を含めた中越地方の温泉地も堅調だ。

最後に製造業などの工業部門では、三条や燕だけでなく、県内各地の県営工業団地に多くの企業が進出してくれている。更に今後の発展がきたされるIT関連の企業誘致も盛んだ。長岡技科大や新潟産業大、新潟工科大も多くのIT技術者を輩出してくれており、上・中・下越関係なく県全体でこの分野でも後れを取らないよう期待したいものだ。

 

竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。

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