【ブランド化へ向け】実は生産量県内2位、新潟県燕市のトマト トマトを使ったビールの発売も?

昨年、パッケージを一新した燕市のトマト。中心のトマトのイラストは、よく見るとヘタの部分がツバメのような形になっている(写真提供:燕市)

新潟県燕市と言えば洋食器に代表される金属加工業のまちであり、近年加熱するふるさと納税においても、地元企業がつくる工業製品を強みに寄付額は県内1位、2位を争う位置にいる。一方で、農産物においても県内有数の生産量を誇るものが存在する。そのうちの一つで、現在ブランド化が進められているのが、トマトだ。

あまり知られていないが、燕市は大玉トマトの生産量は新潟市に次いで県内2位。昨2023年の出荷量は約264.8トン(JAの出荷量ベース)。主な栽培品種は「桃太郎」系で、甘みと酸味、しっかりとした果肉が特徴だ。燕市の冊子「うんめぇ~つばめの農産物」によると、同市での栽培の歴史は長く、1960年代西部卸売市場の開設により生産が拡大したという。

燕市内でトマトを育てている農家は現在20数人ほどで、特に栽培が盛んなのは佐渡(さわたり)や井土巻など旧燕市地区。近くを流れる中ノ口川の育んだ土壌が、トマト栽培に適していたのも一因と思われる。

元々栽培量の多かった燕市産トマト。ブランド化に向けた取り組みは昨年から本格化し「現在はまだ、動き始めたばかりの段階」と燕市産業振興部農政課農政企画係の笹川敦広主任は話す。そのため、「300トンを目指す」など具体的な目標数値については特に決まっていないが、市では現在、認知度の向上や品種の選定などブランド化へ向けた地盤固めを進めている。

例えば、出荷する際のパッケージを昨年一新、「つばめトマト」とブランド名を押し出したデザインに変更した。また市内の道の駅「国上」でPRイベントを開催。試食ブースを設けたほか、来場者へのトマトのプレゼントなども行った。市内の小中学校給食でトマトを使うなど、地元での認知度向上も目指す。

余談になるが、燕市はシュンギクの生産量では県内1位である。トマトの裏作として栽培する農家も多く、それぞれ夏と冬で旬の時期が異なる点や、トマトの連作障害を抑えることに繋がる点もメリットになっている。

May Corporationの前部屋公彦代表取締役

一方で、民間でも燕のトマトを使った商品の開発が行われている。なかでもユニークなのが、トマトを使ったビール「ツバメトマトエール」だ。

手掛けるのは、燕市粟生津に拠点を置くAOUZE Brewing tsubame beer(May Corporation株式会社)。同社は元々、燕市産のコメやイチジクなど地元農産物を用いたクラフトビールを作っており、「ツバメトマトエール」もその一環である。

「ツバメトマトエール」のベースとなっているのはセゾンビールで、スパイシーでスッキリと軽い味わいが特徴。そこへトマトのフルーティな香りや酸味を加えた。「レッド・アイというカクテル(ビールとトマトジュースのカクテル)もあり、ビールとトマトは相性が良い。ぜひ、この残暑の時期に飲んでほしい」とMay Corporationの前部屋公彦代表取締役は胸を張る。

同商品はすでにイベントなどで先行発売されており、瓶詰めでの発売は9月末ごろを予定。なお、トマトが採れる時期に合わせて製造しているため数量には限りがあり、年内を目処に販売終了する見込みだ。一方で、来年以降もさらに味に改良を重ねて再び製造したいという。

前部屋代表は「元々、地元に貢献したいという思いからクラフトビールを作り始めた。地元の人とコラボしながら、燕を盛り上げていけたらと思っている。燕はトマトの生産量県内2位だとあまり知られていないので、この『ツバメトマトエール』がきっかけに広まれば」と語った。

トマトを使ったビール「ツバメトマトエール」

農家全体で高齢化は課題だが、燕市内では新しくトマト栽培に乗り出す人も毎年1人、2人といるという。今年の出荷量は昨年度を上回ることが予想されるが、再来年度以降もさらに増えることが期待される。

一方で、燕市の笹川主任は「燕のトマトの特徴や特色を見つけ、どう(ほか地域産との)差別化をしていけるか」がこれからの課題の一つと語る。他地域では生理障害で黒くなったトマトをユニークなネーミングで売り出して話題になるケースもあり、そうした売り方の面でも様々な工夫が必要となっていくだろう。

金属加工、工場のまちとしてのイメージが強い燕市。しかし実際は市内の大半を平野に覆われ、田畑も多い。ブランド化している「飛燕舞」、「もとまちきゅうり」、そしてトマト、シュンギクなど農産物の種類も豊か。工業と農業、その両方の認知がさらに広まることを期待したい。

(文・撮影 鈴木琢真)

 

【関連リンク】
燕市webサイト 「燕市の農産物」

ツバメビール webサイト

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