新潟県が新年度予算案を発表
住んでよし、訪れてよしの新潟県づくり
新潟県は13日、新年度の当初予算案の概要を発表した。一般会計の予算規模は1兆2597億円。これは前年度の当初予算案と比較し205億円多い。増額の理由としては、公債費の借り換え(償還)のための資金計上(93億円)が挙げられる。また国が3か年で実施する防災・減災対策の事業(この事業のメニューを使って県が防災・減災関連の事業を行うと県の持ち出しを低く抑えられる)を使って、防災・減災事業を行う(237億円)ことも増額の理由だ。
予算編成にあたっては、昨年6月に就任した花角英世知事の公約でもある「住んでよし、訪れてよしの新潟県づくり」を前面に打ち出したという。具体的には「安全に安心して暮らせる暮らしやすい新潟」「地域経済が元気で活力のある新潟」に歳出の重点を置いた。そして、この2項目を達成するため、11の政策パッケージを掲げた。以下は、にいがた経済新聞が独断と偏見でピックした主な事業(※赤字は新年度から始まる新しい事業)。
政策パッケージ①「一段加速した防災・減災対策の推進」
・新たな防災・減災対策普及事業(546万円)…ハザードマップをスマートフォンで 閲覧できるアプリを作成など
・災害医療教育協働推進事業(430万円)…新大医学部災害医療教育センターと協働し高度災害医療人材を育成
・新潟県地震被害想定調査事業 (3580万円)…地震被害対策を強化するため、最新の知見を踏まえ、地震被害想定調査を実施
・復興まちづくり事前準備支援事業(150万円)…被災市町村が早期に的確な復興まちづくりに着手できるようにするため、事前準備マニュアルを作成
政策パッケージ②「安全で安心なまちづくり」
・地域の防犯力向上推進事業( 1000万円)…自治会や市町村の防犯カメラ設置費用の一部を支援
・子どもを守る活動強化事業(3495万円)…スクールサポーターを増員
・県民安心・総合安全システム構築事業(債務負担行為12億3402万円=平成32~39年度)… 県内の凶悪事件などに迅速に対応するため、車両捜査支援システムを拡充
政策パッケージ③「原子力防災対策の推進」
・安全な避難方法の検証(3280万円)… 県が新たに策定した広域避難計画に基づき実施する原子力防災訓練も踏まえ、避難計画の実効性などを徹底的に検証
※このほか、新年度に引き続き、3つの検証を実施していく
政策パッケージ④「健康立県の実現」
・生活習慣病重症化予防ネットワーク事業(268万円)…糖尿病対策の地域ネットワークを構築するとともに、地域糖尿病協力医を養成
・女性医師総合支援事業(400万円)…女性医師支援センターにおいて、子育てや復職、キャリア形成支援などの総合的な支援を実施
・県立十日町看護専門学校の開校準備(1億9252万円)…県立十日町看護専門学校の2020年4月の開校に向けた準備を進め、看護職員の養成を推進
・小児医療提供体制機能強化事業(511万円)…新大医歯学総合病院の小児がん医療の提供にかかる機能強化の取組を支援
・にいがた新世代ヘルスケア情報基盤推進事業( 1億5092万円)…個人の医療・介護情報を集約化し、そのデータを基に、その人が、どんな生活習慣病などにかかるリスクがあるのかなどを分析。オーダーメイド型の指導ができる環境を整える事業。新年度はデータベースの構築などを実施
政策パッケージ⑤「多様な地域資源を活かした交流人口の拡大」
・アセアン訪日市場プロモーション事業(509万円)…これまでの中国、韓国、台湾に加えて東南アジアでのプロモーションに注力。アセアンで現地観光説明会を開催するとともに、受入体制整備に向けたセミナーを開催
・着地型旅行商品販売促進事業(1210万円)…観光地の企画力・PR力が欠かせない「着地型旅行商品」の造成・改良のためのワークショップを開催。また、販売促進のための特集サイトを開設
・佐渡航路社会実験事業(1500万円)…寺泊・小木間でジェットフォイルを活用した社会実験を実施
※外国人観光客の誘客に向けては、スノーリゾート新潟のPRにも取り組む。特に2020年に冬季オリンピックが開かれることからスキー熱が高まっている中国でのプロモーションに注力する
※新年度には、産業労働観光部にある観光局を部局として独立した組織にする
政策パッケージ⑥「更なる拠点性向上に向けた交通ネットワークの整備」
・国際線新規就航促進事業 (5045万円)…国際線の新規定期便の就航につながるチャーター便誘致や新規定期就航した際の初期費用などを支援。具体的な国としては香港、台中、ベトナムなど
・新潟空港アクセス改善プロジェクト事業(5438万円)…空港からの二次交通の行先を増やすとともに、新たに空港駐車場の無料化実証実験などを実施(ちなみに現在は村上、月岡温泉、弥彦、佐渡汽船乗り場行きなど様々なバスがある)
・羽越新幹線早期実現推進事業(327万円)…山形県・秋田県などの関係県と連携した調査・検討や、早期実現に向けた機運醸成を実施(これまで新潟県は連携事業に参加していなかったという)
・日本海沿岸東北自動車道(朝日温海道路)の整備促進(32億8500万円)…昨年村上市では交通事故死者が8名と県内市町村の中でワースト1。理由は、県境の単調な国道での居眠り運転などが多いことのようだ。かつて胎内市でも同様の理由で交通事故があったが、高速道の開通でこうした死亡事故が大幅に減少したという。早期の開通が望まれる
政策パッケージ⑦「起業・創業の推進」
・にいがたスタートアップ推進事業(2600万円)…昨年12月に初会合を開いた「官民連携創業支援ネットワーク会議」が中心となり、起業意識の醸成と創業の後押し、創業後の育成までの一貫した支援を展開するほか、創業 希望者の「交流の場」の設置を支援(県内5か所)
・創業事業計画ブラッシュアップ支援事業(1240万円)…創業希望者の事業計画の策定・実行を専門家などが伴走型で支援
・スマート農業加速化実証プロジェクト(4億円)…新潟県に最適なスマート農業の技術体系を構築するため農機具メーカーなどと連携して実証研究を実施
※起業・創業や事業承継の促進に向けて、産業労働部に「創業・経営支援課」を新設する。
政策パッケージ⑧「意欲ある企業等への支援による県内産業の活性化」
・関西情報発信拠点「じょんのび にいがた」のリニューアルと戦略的情報発信(1億2046万円)… 今年5月から11月までリニューアル工事を行い、県産品などの情報発信を強化
・風力発電の導入促進に向けた調査の実施(1億1853万円)…粟島浦村沖の海底地形の調査や、洋上風力発電の適地を選定するゾーニングを実施
・再生可能・次世代エネルギー基金の創設 (6・5億円)… 多様な地域資源を活用した再生可能エネルギー導入促進などに対応するため、未来への投資基金の残金を使って基金を創設
※このほか、海外での販路開拓に挑戦する県内企業を支援
※AI・IoT、航空機産業関連など成長分野でも事業を行う
政策パッケージ⑨「付加価値の高い持続可能な農林水産業の実現」
・園芸振興基本戦略推進事業(453万円)…新年度に、新たに園芸基本戦略を策定し、農業者の園芸導入・拡大を支援
・流通事業者との連携による輸出販路開拓事業(796万円)…ターゲットは、ターゲットは、これまでシンガポール。新年度はマレーシアをターゲットとして、現地に店舗などをもつ流通事業者と連携し、県産品フェアなどを開催
・中国輸出販路開拓事業(1105万円) …昨年、再び新潟米の輸出が可能になった中国国内2か所で新潟米フェアを開催
・内水面水産の振興に向けた取組(383万円)…海外での県産錦鯉の知名度向上に向けた取組を実施など
政策パッケージ⑩「住み続けることができる中山間地づくり」
・地域づくりの段階に応じた支援(4642万円)…県内各地にある地域振興局内に設置するサポートチームが地元市町村と連携し、活動を担う団体の育成を行う。例えば クラウドファンディングを活用し、継続的な地域づくり活動の資金確保を支援する
・地域の移動手段確保支援事業(4989万円)…地域にふさわしい移動手段を確保できるよう、複数市町村が連携するバス路線の運行、高齢者などの移動手段の確保・充実に向けた乗合タクシー・コミュニティバス導入を支援
政策パッケージ⑪「将来の夢や希望を育みかなえる教育の推進」
・児童生徒のいじめ等対策強化推進費(5847万円)…SNS適正利用にかかる教育プログラムの作成、教員のいじめへの意識改革を進める研修の充実、いじめ対策専任教諭(仮称)の配置など
・スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーの配置(2億5010万円)…新たに公立小学校・特別支援学校全校にカウンセラーを配置するとともに、県立高校の配置時間を延長
・相談窓口の充実(4172万円)…SNS(LINE)相談時間を延長するとともに、電話・メール相談窓口を教育委員会本庁に一元化
・スクールロイヤー活用研究事業(80万円)…弁護士による、法的側面からのいじめ予防教育や法的相談を実施
※新年度には、教育庁に、実践的ないじめ防止対策、教員の指導力向上などを推進する「生徒・指導課」を新設する。