【キシャメシ】朝ドラ「虎に翼」に登場したハヤシライスのモデルになったのは?創業101年「ピーア軒」(新潟市中央区)説を検証
先週でNHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が最終回を迎えた。日本で初めて女性として弁護士、判事、裁判所長を務めた三淵嘉子氏を主人公のモデルとし、昭和初期の法曹界が舞台となったドラマで、朝ドラにしてはなかなか硬派な歯ごたえのある内容だった。
ドラマの中盤では、主人公の佐田寅子が新潟地裁三条支部に転勤する「新潟編」も展開されたが、劇中に頻繁に登場し、寅子らが絶賛していたの喫茶店「ライトハウス」のハヤシライスが話題に。ネットでは、モデルになったのは「どこのハヤシライスなのか?」とちょっとした論争が巻き起こった。
候補に上がったのは、昭和初期に存在し令和の今も現存する市内3店舗。今はホテルとなっているイタリア軒、レストランキリン、そしてピーア軒(新潟市中央区白山浦1丁目631-4)。
このうち裁判所の至近にあるキリンは確かに有力。一方で大正12年創業のピーア軒も裁判所には比較的近い上に、こちらはNHK新潟放送局が近く、NHK職員がよく食べに来ている話も聞く。
ということで、本日のキシャメシはピーア軒のハヤシライスに。
ピーア軒の創業者である間松太郎氏は、1912年から13年にわたりピエトロ・ミリオーレ氏が開いたイタリア軒で奉公し、東京「精養軒」での修業を経て1923年に白山浦にピーア軒を開業する。イタリア軒とピーア軒は師弟関係にあり、ハヤシライスもその流れを汲むものなのではないか。新潟は幕末~明治の開港五港であるため、明治~大正~昭和初期の西洋料理文化は、実に豊饒な歴史を紡ぐ。
本来、ピーア軒と言えば「村上牛のビーフカレーライス」、「タンシチュー」、100年前から味を変えていない「チキングラタン」の3メニューが名物料理なのだが、今日はそこをぐっとこらえてハヤシライスセット(税込1,200円)をオーダー。食後にはコーヒー、紅茶、ミニデザートから1種選べるので、デザートをチョイスした。
最初に来たのははセットのサラダとスープ。本日のスープは「カブと豆乳のスープ」。カブの風味がしっかり感じられ、豆乳を使っているので重くなり過ぎていない逸品のスープだった。
スープを飲み干したころに、待望のハヤシライス着皿。ライスとグレービーボートに分かれたタイプは、まず雰囲気で盛り上がる。
ハヤシソースをライスの皿に全部移動してから実食。おお、こいつは・・・
深みあるねえ・・・かなりの時間煮込まれているのだろうね、旨味が心地よい。ハヤシライスとハッシュドビーフの明確な違いは「無い」というのが定説らしいが、ハヤシはハッシュドビーフよりも少しだけ「トマト寄りに」シフトしているという意見もある。このハヤシには、確かにトマト特有の旨味、酸味が活きていると感じる。またシナモン由来と思しき甘やかな風味も感じる。さらに奥の方に赤ワインの風味、これも決して下品にならないのが良い。素材も当然良いのだろうが、なんというか、優れた技術力に触れた気がする
脈々と現代に生きる老舗の味。この味わいが昭和初期に完成されていたとしたら驚きだが、おそらく幾年もかけてブラッシュアップされてのものだろう。新潟発のイノベーションに乾杯。
デザートには「チョコミントのムース」。ホワイトチョコレートを使ったとろとろムース、堪能させていただきました。
食べ終わってから、ピーア軒の廣田辰巳社長に「虎に翼」のハヤシライスの件を聞いてみた。「たまにお客様に訊かれることはありますが、その時には『違います』と答えています。あくまでドラマはフィクションなので」このあたり、泰然自若な老舗の奥ゆかしさ。
ピーア軒では9月17日~10月末まで「101周年祭ピーア軒秋の洋食フェア」を開催中。特別メニューが多々用意されている中、注目は「村上牛ビーフカレー」「チキングラタン」「タンシチュー」が一堂に会す「ピーア軒名物プレート」(税込2,400円)。
期間中に必ず食べに来たい。
(編集部I)
【ピーア軒本店】
新潟市中央区白山浦1-631
営業時間 ランチ11:30~14:00 ディナー17:00~22:00
定休日 日・祝日、年末年始
<グーグルマップより>
【キシャメシ】は、にいがた経済新聞編集部のメンバーが、日々の取材活動の合間にいただく昼ご飯を日替わりで、真正面から他意を入れず、何モノにもとらわれず、お仕着せのグルメリポートに背を向け綴った、キシャの日常モノローグ。さて明日の担当キシャはどこで何を食べるのか、お楽しみに。