配車アプリ、2024年問題、ライドシェア……変化を迎えるタクシー業界とドライバーのやりがい、富士タクシー(新潟市東区)インタビュー

富士タクシーの山崎雅市取締役業務部長(写真左)とドライバーの長谷川直樹さん(写真右)

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初回掲載:2024年10月27日


新型コロナウイルス感染症禍が一服し、タクシー利用者の数は回復の兆しを見せている。国土交通省北陸信越運輸局の資料によると、2022年の県内ハイヤー・タクシー事業の輸送実績は輸送人数、営業収入ともに前年・前々年を上回った。コロナ禍前の数値には届いていないものの、タクシー配車アプリの普及などにより2023年以降の動きにも期待がかかる。

「配車アプリの導入により、タクシードライバー1人あたりの収入は間違いなく上がっている」そう語るのは、富士タクシー株式会社(新潟市東区)の山崎雅市取締役業務部長だ。

一方で懸念はライドシェアと自動運転の普及。現在、日本ではタクシー事業者が運用する日本版ライドシェアが制度化されており、10月には新潟市で日本版ライドシェアサービスが開始された。海外でのライドシェアとは一線を画しているものの「(タクシードライバーという仕事は)よりいっそう『人による部分』が重要になっていくでしょう」(山崎部長)とも話す。

今回は、富士タクシーの山崎部長とドライバーの長谷川直樹さんに、変わりつつある業界と仕事のやりがいについて聞いた。

 

目次

○「2024年問題」がタクシー業界への転職に影響?
○「人と関わる仕事」を求めて転職した長谷川さん
○配車アプリで変わる業界
○タクシードライバーは「人だからこその仕事」へ

 

「2024年問題」がタクシー業界への転職に影響?

タクシードライバーの転職事情について話す山崎部長

富士タクシーのドライバーの平均年齢は約56歳。20歳代、30歳代のドライバーも在籍する。そうした若いドライバーも基本的には、一度社会経験を経た転職組だ。

山崎部長は若い人から見た時のこの仕事に魅力について、まず一つに給与水準をあげる。「入社すぐからドライバーとして第一線に出ます。勤務経験の長さはそれほど関係ないので、給与水準は一般的な大卒初任給より高い」。また、タクシーを流す場所などはドライバー各人に任せられ、その当たり外れも出てくる。特に若いドライバーはそうしたゲーム性を楽しんでいる人も多いという。

ただ、「東京の大手などは新卒を積極的に採っていると聞きますが、まだ県内ではそうした流れは感じません」(山崎部長)。それよりも注目するのは、運送業界の2024年問題だ。「元々、『家族との時間を増やしたい』という理由で物流業界から転職してくるドライバーもいましたが、最近は特に2024年問題で長時間・長距離労働ができなくなったり、加齢で力仕事ができなくなることを見越して、今のうちにある程度収入が見込め、時間の自由度が高いタクシー業界の門を叩く人が増えている」(同)という。

 

「人と関わる仕事」を求めて転職した長谷川さん

長谷川さんは製造業からタクシードライバーへ転職した

昨年、富士タクシーに入社した長谷川さんもタクシー業界未経験で転職。元々は製造業に勤務していたが、「人と関わる仕事をしたい」と考えてこの業界へ飛び込んだ。現在は利用者との会話も多く、仕事の内容には満足しているという。

また、仕事とプライベートの両立も魅力だ。「隔日勤務なので、休みは多いです。休日は子どもの送り迎えができるし、家事をする時間もあります」(長谷川さん)。

また山崎部長もそうした点に同意する「タクシードライバーには、デスクワークで常に脇に上司がいる、という状況はありません。隔日勤務の場合は、はっきり言って一日の拘束時間は長いですが、ずっとお客様を乗せているわけではないので、空いている時間に個人的な用事を済ませることもできます。いい意味で自由な仕事です」。

富士タクシー

一方で長谷川さんは、今年元旦の震災も印象に残っていると話す。「当時、夜はバスも電車も止まってタクシーしかない状況だったので、一番被害の大きかった新潟市西区へは何度も往復しました。その時『タクシーって人助けになるんだな』と思いました」。

富士タクシーは人材派遣の業務も行っており、1月の震災直後と9月の豪雨時に石川県へドライバーを派遣。長谷川さんも能登や輪島で国交省の職員の送迎業務に加わり、社会的な意義を噛み締めたという。

 

配車アプリで変わる業界

配車アプリの利用が広がっている(写真はアプリ「GO」 App Store 2024年10月撮影)

タクシー業界の現在において、急速に普及する配車アプリの存在は無視できない。富士タクシーではアプリ「GO」など、県内で使用できるものはほぼ導入している。なお、「GO」の前身となる「全国タクシー配車」を県内初導入したのも同社だ。

「会社の売上が伸びた理由の一つが、配車アプリ。ドライバー単位でも、配車アプリを積極的に利用しているドライバーのほうが、運行回数は多い。一人当たりの収入は間違いなく上がっている」と山崎部長。長谷川さんも「日中はとりあえず起動している」と話す。

配車アプリはクレジットカードなどを登録しておけば、決済も従来に比べてスムーズに行える。また、一部のアプリと法人契約する企業も増え始め、仕事の移動での利用も拡大しているという。利便性の向上は観光や外国人客のタクシー利用増も望める。今後の流れに注目したい。

 

タクシードライバーは「人だからこその仕事」へ

タクシーを運転する長谷川さん

一方でタクシー業界の今後について山崎部長は、ライドシェアと自動運転への懸念を挙げる。今後、同2つの規制緩和に注視していくとしつつ、「これからのタクシードライバーは、お客様の要望に対応できること、つまり人によるところが問われてくる」と話す。

タクシードライバーはただ人を運ぶだけではない、接客のプロだ。ライドシェアとの差はそこに生まれてくるだろうし、自動運転はなおさらだ。特に近年は地域の高齢化や公共交通機関の減少などもあり、「地域の足」としての存在感は高まる。乗り降りの際に利用者の荷物を運ぶなどの細やかなサービス、あるいは観光の案内役、もしくは災害時といった緊急事態での活躍……など、利用者とのコミュニケーションや社会的意義は、今後高まっていくだろう。

都心で変わりつつあるタクシードライバーの就活事情。その流れが地方へも波及するかは分からない。しかし、「人と関わる仕事を」と話す長谷川さんのように、ドライバー一人ひとりのやりがいや社会的意義は高まっていくだろう。

 


一般社団法人新潟県ハイヤー・タクシー協会ではこの秋、県内6会場にて「新潟県横断セミナーキャラバン『タクシードライバーになりませんか?』 」を開催する。今回の記事のようにタクシー業界への転職を考えている人はもちろん、子育て中の女性から新卒の若者まで、タクシー業界に興味がある人を幅広く対象にしたセミナーだ。参加費は無料となっている。

会場は開催順に、

【村上会場】10月19日14時~、タウンホテル村上。

【上越会場】11月2日14時~、ホテルハイマート3階 宝来。

【長岡会場】11月9日14時~、ホテルニューオータニ長岡3階 うめ。

【小出会場】11月16日16時~、UOSHIN2階 雅。

【新潟会場】11月17日14時~、ホテルグローバルビュー新潟3階 明石。

【三条会場】11月30日14時~、ピアザデッレグラツィエ。

申し込みは、新潟県ハイヤー・タクシー協会への電話(025-241-8677) 、または同協会webサイト(https://haitaku-niigata.or.jp)から。また、web個別相談会も行っている。詳しくは、下のチラシやwebサイトを参照。

新潟県横断セミナーチラシ

この記事は、一般社団法人新潟県ハイヤー・タクシー協会による広告記事です。

 

【関連リンク】
富士タクシー株式会社 webサイト

新潟県ハイヤー・タクシー協会 webサイト

 

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