【コラム】第8回「能登半島地震と今後新潟の地震可能性や繋がり」竜哲樹(元上越市議会議員、元産経新聞記者)
能登半島地震と直接関連ある新潟県内が震源地となる可能性やその際の県内の地震被害の大きさ等を考える
今年元旦に発生し能登地域など北陸地方に甚大な被害をもたらしたマグニチュード7.6(最大深度7)の「能登半島地震」は、半島の南西部から北東の佐渡島方向による複数の断層(長さ150㌔)で起きた「内陸型地震」であり、特に地震によって地下深くにある水等の流体が徐々に上昇し、断層が滑りやすくなり、更に複数の断層が連動して起こったとされる。
言うまでもなく、地殻断層はまさに富山湾を囲んで繋がっており、当然ながらこれから新潟が震源地となる地震発生の可能性が起きることは十分予想される。確かに日本海側は太平洋側のプレート境界で起きる地震と比べ、発生率は低いとも言われるが、日本海側にも「地震の巣」とも言える活断層が多数存在し、震源域となった断層の端では新たなひずみが蓄積されることで、新潟県も含めた日本海周辺に連動していく可能性は十分考えられる。
さてその前に、今回の地震による新潟県内の被害はまず、新潟市西区などでの液状化による被害は甚大なものになった。そして大きな被害には至らなかったものの、直江津海岸での津波は推計によると5mに達したとも見られる。従って、もし能登半島地震と同規模な地震が県内を震源地として起きた場合は、その被害の大きさは想像を超えることが予想される。能登半島にも近い上越市でも今回の津波を踏まえシュミレーションを行いつつあり、これまでのハザードマップも見直すことになる。
能登半島で起きた地震は、もろに新潟県内の各地にその爪痕を残した。石川・富山・新潟は「北陸一体」として、地震に対する被害対応は求められることになろう。
新潟地震が起き中越地域も起きていることから、あえて上越地域を震源地として地震の可能性を考察したい
新潟県内のここ50年間余りさかのぼると、県内を震源地とする大きな地震を列挙すると1964年(昭和39年)の新潟地震、そして2004年(平成16年)の中越地震、2007年(平成19年)中越沖地震と続く。広域の観点や被害の大きさから見ると、やはり中越地震(中越大震災)が抜きん出るかも知れない。
その上で、今後県内で起きる地震の可能性やその際の被害の大きさを想定してみたい。まず地震が予想される県内断層帯は高田平野断層帯など5か所程が挙げられている。その発生頻度は予想出来ないが、少なくとも今後50年間のうちに起きる可能性は誰もが想像出来る。ぜひ地震学者や気象庁には出来るだけ早く、県民に詳しく提示して貰いたいものだ。
そこで、私の住む上越・高田では江戸時代の1666年(寛文5年)に起きた大地震である「越後高田地震」を少し調べてみた。推定マグニチュード6.4だが、高田城下の侍屋敷や町屋の大半が倒壊したと記録されており、しかも2月という冬季ゆえによって、火災発生や落雪などにより多くの犠牲者も出たという。
そこで敢えて、新潟地震が起きて中越地域でも起きていることから、今度は上越地域だという理屈はあり得ないものの、ただ、地震発生によってその周囲に新たなひずみが蓄積されることを考え合わせると、次は上越地域の可能性を考えておくことも大切に思うのだ。
いずれにせよ、いつ起きるかも知れない大地震について、自治体など行政はもとより、企業や個人にあっても地震被害を出来るだけ最小に食い止める準備や備えを日頃から万全を期しておくことが求められると言えよう。我々住民自身が警戒することが重要であり、「マイタイムライン」ではないが、個人としてもいつも自分自身の避難行動などを常日頃から考えていくことは重要となろう。
「能登半島地震」から学び、新潟県内の断層の繋がりを探り、更に北陸という括りで今後の地震対応を考えたい
能登半島から新潟県までは、比較的近い糸魚川は150㌔だが、遠い村上までは350㌔にも達する。それでも新潟県は北陸地方に位置しているので、私達新潟県民は能登地方などにも親近感を持っており、北陸という括りで違和感がないかも知れないが、それでも下越地方の人達は上越地域の人達より親近感は少ないかも知れない。むしろ中越・下越地方の皆さんは山形県や福島県や群馬県との繋がりをより身近に感じるに違いない。
ところで、先程も記したように、新潟県内の主要な活断層が5か所ほどであるとした。①櫛形山脈断層帯及びその延長上の月岡断層帯②長岡平野西縁断層帯及び延長上の十日町断層帯③長野盆地西縁断層帯(信濃川断層帯)④六日町断層帯⑤高田平野断層帯などがある。
もちろん単独の断層帯で地震が起きるわけでなく、様々な断層帯が絡み合い、連動しながら発生することから、主要な活断層周辺だけで起きるわけでないことは当然である。少し話が飛ぶが、再度、ミニテーマである「北陸という繋がりや括りの中で今後の地震発生に伴う対応を考える」こともあってもいいのではないか。
例えば、観光面で言えば、今春北陸新幹線も福井の敦賀に延伸となったほか、佐渡金山の世界遺産登録によって、特に上越地域は関西・北陸方面からの佐渡への玄関口になるだろう。謙信公と七尾城との繋がりも見逃せない。また、県内にも素晴らしい温泉がたくさんあるが、被災地の一つの和倉温泉へも多くの新潟県民が足を運ぶこともある。輪島塗や輪島の朝市も身近に感じる県民もいよう。
また、能登半島地震の被災地へは、新潟県内の自治体だけでなく県内の民間企業や団体の皆さんもボランティアも含めて、支援に行かれたとも聞いた。つまり、地震発生後の災害復旧・復興においては、お互いに近隣の地域が助け合い協力し合う姿こそ、『北陸という括り』による対応そのものであり、それが更に〃一体感〃となって、今後の地震災害を介した北陸交流が深まることも期待したい。
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。