【特集】BSNアイネット(新潟市中央区)、大上真弘さん「ユーザー目線で使いやすいシステムを」 開志専門職大学1期生を追う

BSNアイネットパッケージビジネス事業部の大上真弘さん

「やっぱり、システムがお客様の要望に応えられるよう動いたときに達成感があります」。今年、株式会社BSNアイネット(新潟市中央区)に入社した新入社員、大上真弘さんはそう言って笑った。現在携わっているのは主に水道局のポータルサイト。事業者も一般の水道利用者も使うサイトだ。

大上さんは昨2023年度、開志専門職大学(新潟市中央区)を卒業した同大学の1期生である。情報学部の出身だが、プログラミングだけではなくマーケティングやデザイン思考などの幅広い分野を学び、その経験を今の仕事にも活かしている。

 

目次

○業務のDXを促す仕事
○専門分野だけでない学び──開志専門職大学
○ユーザー目線のプログラミングを

 

業務のDXを促す仕事

大上さんは入社後、新人研修を経て現在のパッケージビジネス事業部に配属された。任されている主な仕事は水道局のwebサービス「水道ポータル」の管理だ。このサービスは、水道事業者の業務のDXを図るもので、会員の管理などのほか、水道利用者も開閉栓の受付や水道料金の支払い状況の照会などができる。大上さんは事業者からの要望に沿って、サイトの機能追加などを行っている。

実務に関わり始めてまだ3カ月あまり。「今まで使ってこなかったプログラミング言語で作られているので、一から学ぶのが大変でした」(大上さん)と苦笑い。「システムに触れ、先輩に教えてもらいながら少しずつ勉強しています」という。

大上さん(写真左)と、先輩の渡邊澪央さん(写真右)。渡邊さんとは歳も近く、一番接する機会の多い先輩だという

そんな新人の姿を、3年先輩の渡邊澪央さんは「手持ちの作業について優先順位をしっかり考え、周りにきちんと相談しながら仕事をしている印象」だと評価する。ゆくゆくは同社の上下水道料金システム「MERCURIE(マーキュリー)」にも関わっていってもらう予定だ。

そして「連絡は密にとらないと、手戻りが発生したりするので効率面でもコミュニケーションは大切です。今後仕事を続けていく中で、私たちも報告・連絡・相談ができる環境をつくっていくので、相互にコミュニケーションをとりながら活躍していってほしい」(渡邊さん)とエールを送る。

 

専門分野だけでない学び──開志専門職大学

大上さんは大学からプログラミングについて本格的に学び始めた。当時の大上さんについて「計画的な学生でしたね。緻密にデータを採ってきて、卒論も秋頃にはだいたい出来ていていました」と話すのは、4年時に大上さんのゼミを受け持った開志専門職大学の西川昌宏教授だ。西川教授が取り出した大上さんの卒論は70ページに及び、その内容は生まれ故郷である佐渡島の観光。冬の閑散期について、ITも活用しながら解決することを論じている。

開志専門職大学情報学部の西川昌宏教授。実務家教員の一人で、NECでの勤務経験を持つ。開志専門職大学では「デザイン思考」や「ソーシャルデザイン」などの授業を担当。また、大上さんが学生時代に所属した音楽サークルの顧問も務めていた

大上さんは元々、テレビゲーム好きが高じてプログラミングの勉強を始めたという。進学先に選んだのは、当時開学直前だった開志専門職大学。当然、就職実績や話を聞ける先輩もいないため、情報系の専門学校への進学も合わせて検討していた。「当時は不安もありました。でも、4年間しっかりと勉強したいということと、新しいことに挑戦してみたいという気持ちがありました」と大学選びを振り返る。

入学後も戸惑いはあった。開志専門職大学は「実践的な学び」を標榜する。プログラミングだけでなく、経営学やマーケティングなどの授業もあったのだ。「正直最初は、よく分からないな、と思いながら授業を受けていました」と大上さん。しかし今では、そういったICTを応用した地域の課題解決や、その方法論などの授業こそ強く印象に残っているという。

「地域課題の解決を目的に、ビジネスプランを考える授業がありました。一年目、二年目にデザイン思考の基礎を学び、三年目にその集大成として行われたものです」(大上さん)。課題は新潟の都心軸「にいがた2km」の活性化について。大上さんは「古町秋葉原化計画」というアイデアを提出して同市から「優秀アイデア」の評価を受けた。「どんな街になったら住みやすく、人が溢れる活発な街になるのか。そのためにどんな課題があり、最適な解決方法は何なのか……。未来の新潟市を想像しながら考えるのは楽しかったです」(同)。

当時の大上さんとゼミの様子について解説する西川教授。ゼミの活動について、現在も米山キャンパス内に掲示されている

開志専門職大学は長期のインターン(実務実習)をカリキュラムに入れている点も特徴の一つ。大上さんもプログラミング関係の会社から、起業家支援の会社まで様々な企業を訪れた。ビジネスマナーといった基礎から学び、成績の評価にも繋がるため責任や当事者意識は大きい。西川教授は学生たちは実務家実習を経て「顔つきが変わる」と話す

その後もゼミで、他の市町村でも課題解決に向けたフィールドワークや関係者へのヒアリングに取り組んだ。その集大成が、前述の卒論である。こうした学習は一般的に思い浮かべられる「情報系」の活動内容とは少し異なるが、それこそ専門職大学と専門学校との違いだ。

「専門学校は技術的な分野がメインになります。(専門職大学も)もちろんICTのプロの育成を目指していますが、アカデミックな学びと実践的なスキルを併せ持った人材を育てることを目的としています」と西川教授は説明する。同大学では3年間で600時間という長期間インターンを行い、さらに4年時には一般的な大学と同様、ゼミでこれまで学んできたものをアウトプットする。

「技術的な内容だけでなく、ユーザー目線や地域課題の解決……何のために(ICTの)スキルを活かし、どういうビジョンを持って社会に貢献していくか、という能力を育成するために、デザイン思考などの授業もあります。そういった(実践とアカデミズムの)かけ合わせで、課題解決型の人材を育てていこう、というのが専門職大学の特徴の一つです」(同)。

 

ユーザー目線のプログラミングを

打ち合わせ中の大上さんと渡邊さん

顧客と直接打ち合わせをする機会はまだない。しかし「要望をシステムに反映させる際には、ユーザー目線でどのようなシステムが使いやすいかを考えてから、プログラミングを行うことを意識しています」と大上さんは語る。また、大学時代に学んだデザイン思考を、チームでのコミュニケーションの円滑化や、就活生やインターン生向けの資料作りに活かす場面もあるという。

技術だけでなく、それをどう扱うか。業務の先にある顧客の課題解決という真の目的への意識を持つことは重要だ。

プロジェクトリーダーなど、チームを引っ張る立場を目指し邁進する大上さんは「頼りになる存在を目指したい」と意気込む。「お客様と関わる際には、ニーズや問題を深く理解し、お客様自身が気付いていない課題を発見して最適な解決策を見つけられるように努力していきます」──スキルとアカデミズムを併せ持った彼の、これからの成長を期待したい。

休憩中、同期の社員と談笑する大上さん

BSNアイネット本社

 

【学校情報】

開志専門職大学(米山キャンパス)内のfab施設「KAISHI LAB」

学校法人 新潟総合学院 開志専門職大学
本部:新潟市中央区紫竹山6-3-5
米山キャンパス:新潟市中央区米山3-1-53

開志専門職大学 webサイト

2020年4月に新潟県初の専門職大学として開学。事業創造学部、情報学部、アニメ・マンガ学部の3学部を有する。2024年3月に事業創造学部と情報学部の1期生が卒業し社会へ飛び立った。

 

【関連リンク】
BSNアイネット webサイト

 

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