【創業60周年へ向けて】3代目若手社長の改革路線の根本は「面白がる精神」 大陽開発(新潟県上越市) 

大陽開発株式会社(新潟県上越市)の荒木克代表取締役社長

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初回掲載:2024年11月26日(再掲載:12月8日)


「他の建設会社さんからも『大陽さん、ちょっと違うよね』と言われることが多いです。『荒木社長、いい意味で変だよね』とも言われます」と話すのは、大陽開発株式会社(新潟県上越市)経営企画部地域づくり担当の澤田佑佳さんだ。

同社の3代目社長となる荒木克代表取締役社長は2018年に社長に就任。「祖父が65歳のときに交代したので、父は自分も65歳で交代すると言っていた。ちょうど会社が50周年の節目だったこともあり、その通りに父が65歳、私が38歳のときに交代した」(荒木社長)。

社長自体が40代前半と比較的若く、社長自ら入社式でコスプレをするなど、今までの建設業のイメージとは違った堅すぎないイメージが会社全体の雰囲気として出てきている。経営理念からして違う。通常建設会社というと、「安心・安全・品質管理」というイメージが付きものだが、同社には「元気あふれる地域をつくる」という経営理念がある。この経営理念を作ったのは現在の荒木社長で、社長に就任した際に新しくしたものだ。

「他の建設会社との違いをどう出していくか意識している。従来の建設っぽいイメージでは、名のある大きな会社には採用面で勝てないと思った。強みをどこにするかと考えて、今まで地域貢献に力を注いできたので、特化して訴えてみたり、建設会社だけど、それ以外にもっと面白いこともやっているという面をアピールした。地域を元気にするために仕事をしていて、その一つの手法として建設業をやっているというくらいのイメージで、会社の見せ方を変え、ブランディングをやり始めた」と語る荒木社長は自身も「建設業のイメージが嫌いだった」と苦笑する。

「建設業のイメージにはしないで欲しいと注文して、ホームページをガラッと変えたり、ユニフォームも変えるなどして、自分がありたいイメージに近づけた。ローカルをかっこよく発信しているメディアがあるので、それらを参考にした。建設業だからと言って、こうしなきゃいけないというルールはない。そういった姿勢に共感してくれる人たちから仲間になってもらって、一緒に仕事がしたい」と仲間づくりへの思いも語った。

上越市大島区で発生した土砂災害復旧工事。令和5年度新潟県優良工事表彰を受賞

上越森林管理署発注の地すべり対策工事

同社のメイン事業は、山間地の地滑り防止工事や砂防工事などの土木工事。その他に道路舗装工事や冬には除雪もやっている。同社は主に土木施工管理技士や重機オペーレーターを募集しているが、「地滑り工事の特徴だが、うちの仕事は見えない仕事が多い。穴を掘って終わりとか、水を抜いて終わりとか、場所もだいたい山奥で人が通らない、見えないところでやっている。しかし、その見えない仕事がきちんとみんなの命を守っており、地域全体を人知れず守っている。自分でやっていることの意義を自分で感じてくれる人であればいいと思うし、派手に見えることだけがやりがいではない。きちんと自分たちの仕事が地域を守っているんだと誇りを持ってもらいたい」と求職者にメッセージを送る。

採用については「経営の優先度で言うと、ものすごく上位にある」と荒木社長は話す。「職業選択の自由が増えすぎていて、昔より職種も増えている。生まれ育った地域からも簡単に外に出ていけるし、まさに売り手市場で選び放題の状態。地域を元気にしていくためには、我々にはもっともっと地域の魅力や建設業の魅力、そして会社自体の魅力を伝える努力や工夫が必要だと思う」。

その工夫のひとつとして、同社では会社説明会をコロナ禍前に思い切ってオンラインに切り替えた。「どうやったら多くの学生に会社の魅力を発信できるか考えた結果だったが、そうこうしているうちにコロナ禍になり、オンライン説明会が当たり前になった。先行してオンライン化していたことで、すでにノウハウもあり、採用については間違い無くコロナが追い風になった」と荒木社長は当時を振り返る。

「合同企業説明会にブースを出展しても、誰も来てくれなかった辛い時期もありましたが、今ではおかげさまで毎年新卒採用が出来ていて、県外から大学生も入社してくれています。来春は北海道の大学生が入社予定です。学生たちは、この会社で自分も地域に貢献したいと言って入社してくれます。弊社は災害復旧工事など、地域を守るための仕事をしていますが、その意義や魅力がうまく伝わっているのだと思います。そうやって若い力が集まってくるので、比較的若い会社になっていて、歳の近い先輩がいると安心感があるから、また若い人が入りたいと思ってくれる。そんないい循環が出来てきています」(澤田佑佳さん)。

地域イベント「やまのうえ真夏の雪まつり」に出店。子どもにも大人にも人気のバックホウお菓子すくい

現在創業56年。60周年に向けては、「この地域で会社のブランドを一番にしたい」と話す荒木社長は、「上越地域なら大陽さんが一番だと言われるようになりたい。そのための会社づくりをしていきたい。できれば、新しいことをできるチームを作っていきたい。面白がってやる、いろんなことに興味を持って、自分から向かっていける仲間が欲しい。これからは、とんがった人、先を見たがる人、面白がれる人たちが必要。そういう人たちが共鳴できる会社にしていきたい」(荒木社長)。

入社式で社長が2年連続でコスプレして挨拶した。「どんどん失敗していい。決めたらやりきれと伝えたかった。それを体現した、いや、させられた。うちの若手の企画で。まあ僕がいかにバカになれるか、見てるのではないですか」。

荒木社長の持ち前の「面白がる精神」で、「元気あふれる地域をつくる」という経営理念の企業ブランディングの構築を今後も継続してもらいたいものである。

同社には荒木社長が策定した「元気あふれる地域をつくる」という経営理念がある

同社の入社式でコスプレをして挨拶する荒木社長

 

【関連リンク】
大陽開発ホームページ

 

(文・梅川康輝)

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