【元産経記者コラム】第9回「長寿社会を迎えて、若さを保つ秘訣ありや」〜健康寿命伸ばすための若さ・体力維持戦略は〜 竜哲樹(元上越市議会議員)

新潟県上越市内の山間地で今なおコメ作りの88歳

先日、新潟県上越市内の山間地で5㌶近い水田でコメ作りに頑張る88歳(米寿)の老婦に遭った。「何て凄い人がいるんだ」と大感動した。でも、そうしたコメ作りが出来るのは、50代後半の娘さんが田植え・稲刈りに、東京から週末を利用してコメ作りの手伝いにやって来て、トラクターやコンバインに乗ってくれるからだという。何という“今時の親孝行なのか”と大変驚いてしまった。

その老農婦に話を戻すが、腰は少し痛いとは言え、腰もシャンとしていて曲がっていない。普段からも軽ではなく普通車を乗り回している。豪雪地帯で例年3㍍近い雪に覆われる山間地だ。「この老農婦がなぜ、どうしてここまで出来るのだろうか?」とふと考えざるを得なかった。同居する同い年の老夫は病気がもとでデーサービスに通い、60代の長男は40㌔以上離れた市の中心部の飲食店に勤め、朝早くから夜遅くまで働き、コメ作りの当てにはまらないという。

この老農婦が若さと体力を保っているのは、紛れもなく「自分がコメ作りを守らなければならないという使命感に違いない」と分かった。この老農婦だけでなく、やるべき事がある高齢者は確かに若さと体力を保っているケースが多いのも事実だし、考えてみれば私達の周りにそうした高齢者が多くおられるように思う。

 

新潟県上越市内の中山間地で暮らす竹細工の89歳

もう一人が市内中山間地で竹細工作りを続ける89歳の老父を紹介したい。稲作農業をしながら冬は酒造杜氏として出稼ぎに。そんな暮らしをしながら、好きだった竹細工を数十年に渡り、続けて来た。まもなく90歳を迎える今も、竹細工作りに連日取り組んでいる。この老父の若さと体力の秘訣は、この情熱を持って竹細工作りにあるようにも思った。このように確かに最近は、上越市内にも絵画や焼き物、民謡、尺八演奏など、趣味を越えての文化・芸術に取り組む70代、80代の高齢者も多い。そうした高齢者はいつまでも若さと体力を保っているように思えてならない。

でもその一方で、特別養護老人ホームや介護施設に入所、また通う高齢者も増えていることも確かだ。もちろん、我が国は超高齢化社会でもあり、こうした介護施設などの重要性はいや増していることも事実だし、実際市内の介護施設も充実している。

現在日本の平均寿命(2023年)は女性が87.14歳、男性は81.09歳と発表されており、若干前年より伸びている。団塊の世代が今後年齢を重ねると、更に若干上がっていくことも考えられる。この背景には栄養が良くなり、医療環境の充実があることは論を待たない。その上で、高齢化社会を見据えた時、今後も何よりも健康寿命が重要であり、ご存知の様に国・地方含めて生活習慣病対策に全力を挙げていることが、健康寿命の延伸に繋がっていくのだろう。

 

若さ・体力維持する戦略を皆で探っていきたい

私の知る106歳の老婦は足腰が弱っていても、家族の協力のもと自宅で生活しているのを知っている。その老婦の生活環境が特別なケースかも知れない。だが、その老婦が90代半ばだった頃と思うが、NHKのど自慢にも出場した。私はその時に感じたのは、その老婦のチャレンジ精神にとても感動したものだ。

敢えてこじつけの言及を許して戴きたいが、冒頭の老農婦や次の老父のケースも、そして106歳の老婦にも当てはまるやも知れない。それは「仕事であれ、趣味であれ、どんなに年を重ねても、挑戦・チャレンジする目標や遣るべきことを持っているという共通点がある」ということだ。もちろん、偶然ではと言えなくもないかも知れないし、生まれつき丈夫な肉体を持って生まれて来たのかも知れない。詳しく調べてはいないが、いずれにせよ、『心の持ち様』が若さ・体力に影響を与えているのだろうと思いたい。

同時に、このことは、高齢者になってからどうのということではなく、もっと大げさに言えば、子供の頃からということになるのかも知れないが、「その人の人生の初めから、人として、人間としての『生き様』の反映にも関係している」とも考えられよう。敢えて大上段に構えた「若さ・体力を維持する戦略」で言えば、その人の『生き様』、その人の『生活習慣』などから、考えていくことなのかも知れないと感じた。最後に何か哲学的な話になってしまったことをご容赦戴きたい。

 

竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。

こんな記事も

 

── にいがた経済新聞アプリ 配信中 ──

にいがた経済新聞は、気になった記事を登録できるお気に入り機能や、速報などの重要な記事を見逃さないプッシュ通知機能がついた専用アプリでもご覧いただけます。 読者の皆様により快適にご利用いただけるよう、今後も随時改善を行っていく予定です。

↓アプリのダウンロードは下のリンクから!↓