【にいけい編集部発】記者コラム&今週の主なニュース 12月7日〜12月13日

記者コラム

新潟フードテックタウン構想に胸躍る

久々に、新潟の経済界に胸躍るニュースだと思う。

食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地株式会社(東京都品川区)と、新潟を中心に教育事業と医療・福祉・介護事業を中核に幅広い事業を展開するNSGグループ(新潟県新潟市)が、食文化や食産業が豊かな都市”新潟”が、世界有数のフードテックタウンとなり、フード領域のスタートアップが次々に創出する環境の実現を目指し、2025年以降にコンソーシアムやVC(ベンチャーキャピタル)を設立することになった。

オイシックス・ラ・大地は、ご存じの読者も多いかと思うが、2024シーズンから日本プロ野球機構に参入したオイシックス新潟アルビレックスBBのオーナー企業である。もしその向こうに、このフードテックタウン構想があったのであれば、何もかもが実に壮大な話に思えてくる。

新潟フードテックタウン構想を立ち上げたオイシックス・ラ・大地の高島宏平社長

今回のフードテックタウン構想は、ざっくり言えば、新潟がフードテック(食産業)のスタートアップ集積地を目指そうというものだ。世界的に知られているのはIT産業やそれにまつわるスタートアップの集積地であるシリコンバレーだが、他にもヘルスケア業界であればボストン、フード領域ならバークレーというように、米国では地域別に「産業分担」が進んでいる。

米バークレーが担っているような、日本におけるフードテック領域のスタートアップ集積と産業エコシステムの構築を新潟も目指そうじゃないかというものだ。

12月3日には「新潟フードテックタウン・プレイボールイベント」が新潟市中央区の新潟日報メディアシップビルで開催され、産官学金各分野のキーマンから約200名の参加者を集めた。冒頭の挨拶でオイシックス・ラ・大地の高島宏平社長は「今年1年、ベースボールで新潟にかかわりができて、フードテックタウンを進めるなら新潟以外にないと確信した」と話している。

高島社長が新潟に白羽の矢を立てた理由はいくつかある。新潟市の食糧自給率が全国の政令指定都市で最も高いことや、新潟市に食産業に属する大企業が多いことなどが挙げられていた。

特に新潟市の食糧自給率は63%と日本の政令指定都市の中では群を抜いている。2位の仙台市で7%だから、いかにダントツなのかおわかりだろう。実際、政令指定都市にして都道府県比較でも31位に入るような水田面積を有するのだから、「田園型政令指定都市」の二つ名は伊達ではない。日本のフード産業における風雲児のような高島社長の口からそのような評価をされると、あらためて胸を張りたくなる素養はあるのだなと感じる。

2017年ごろ、篠田昭市政下の新潟市に「ニューフードバレー構想」というプロジェクトが持ち上がったのが思い出される。仕掛け人は今回のパートナー企業であり、実質の主力部隊となるNSGグループの池田弘会長だった。国の農業特区に選定された経緯もあり「新潟を日本の食都」にとの期待は高かったように思う。しかし当時の新潟財界は笛吹けど踊らず足並みがそろわないまま、池田氏の孤軍奮闘が目立った印象だ。それだけにその思いもひとしおなのではないか。

NSGグループ池田弘会長

今回は池田氏は縁の下の力持ちに徹しているようで、主役はオイシックス・ラ・大地に譲っているようにも見える。ただし、この段階である程度耕された土壌を提供をできるのは、池田氏らグループの尽力が少なからずあったと言えるのではないか。

観光産業と結びつくローカルガストロノミーとフードテックが両輪となり、ぜひ新潟を日本の「食都」に押し上げていただきたい。我々も弱小ながらメディアの端くれとして目を離さずにいたい。

(営業記者 伊藤 直樹)

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