【市町村長リレーコラム】出雲崎町 仙海直樹町長 「『住み続けたい町』へ、就任1年目の取り組み」
新潟県内30市町村の首長に、地域での取り組みや課題や首長としての想いなどをコラムとして寄稿いただき、次に寄稿いただく首長を指名いただきつないでいく市町村長リレーコラム。第19回は、新潟県田上町の佐野恒雄町長からバトンをつないでいただいた、新潟県出雲崎町の仙海直樹町長のコラムをお届けします。
——————
出雲崎町は新潟県のほぼ中央、日本海に面し約10kmの海岸線を持ち、海あり山ありの風光明媚な町です。
夕日の美しさは圧巻で、英国の百科事典で世界一大きいと書かれていると、うわさで聞いたことがあります。真偽はともかく、そう思える風景であることは間違いないと自負しています。
海岸部は絶好の漁場で、漁港では近隣でも珍しい「夕ゼリ」が行われ、夕食で新鮮な魚介類が堪能できます。早朝は、砂地の焼き場の中央に炭を盛り、サバやイカなどを串に刺して炭火でじっくり焼き上げる「浜焼き」の香ばしい香りが街並みに漂います。
また、農村部は沢から湧き出る清水と粘土質の肥沃な土壌に恵まれ、ここで栽培された出雲崎産米は、1等米比率県内1位を何回も獲得している隠れたブランド米です。
歴史は古く、遠く神時代に大国主命によって開拓されたと伝えられており、江戸時代には徳川幕府の直轄地(天領)として、佐渡からの金銀荷揚地や北前船寄港地となり、北国街道の宿場町として栄えました。名僧・良寛さんの生誕地であり、多くの文人墨客が往来し、松尾芭蕉の「荒海や佐渡によこたふ天の川」詠嘆の地としても有名です。
また、古代より湧き出る石油の産地として、日本で初めて機械掘りに成功した近代石油産業発祥の地でもあり、経済産業省の近代化産業遺産にも認定されています。
海の荒れる冬場の漁業に変わる仕事として、大正8年から続く「紙風船」づぐりは、昭和初期頃までは首都圏でも盛んに作られていましたが、時代の流れとともに業者は姿を消し、今ではそのほとんどが出雲崎町で作られており出雲崎町の名産品となっています。
出雲崎町は、これら「恵まれた自然と歴史のなかで、安全・安心に暮らせるまちづくり」を基本理念とし、良寛さんのこころを心として、思いやりのある人づくりを目指しています。
「未来へつなぐ子育て応援宣言」
出雲崎町は令和5年5月13日に「未来へつなぐ子育て応援宣言」を標榜しました。子どもは次世代を担うかけがえのない存在であり、一人ひとりが町の大切な宝です。
出雲崎町の豊かな自然や文化の中で、ふるさとに愛着と誇りをもち、心豊かでたくましく健やかに育つことは町民すべての願いです。
地域全体で子育てを応援する思いやりのある地域づくり、子どもの笑顔があふれ夢と希望を持てる町、充実した子育てに喜びを実感できる町を目指しています。
町には、「こども家庭センター」と「子育て支援センター」の機能を持つ子育て応援拠点施設、「多世代交流館きらり」があり、保健師、保育士が従事して子どもや保護者に寄り添ったサービスを提供しています。
また、子育て支援施策として、出生から18歳までの入通院に係る医療費の全額助成や、保育料の完全無償化、小中学校の入学時に合わせて入学準備金の支給、更には、町が運営する公設の学習塾「まち塾」の開設や、高校生の通学定期代の5割助成などを行っております。
今後は、子どもの年齢が高くなるにつれ、保護者の経済的負担も大きくなりますので、それに対応するために、大学や専門学校などに通う学生へ通学費等の助成を行います。
地域の活性化を目指して
私は、2009年5月に行われた町議会議員選挙で初当選をさせていただきました。
4期15年間、議員を務めた後のち、9期36年間にわたって町長を務めてこられた小林則幸前出雲崎町長の後継指名をいただき、大勢の皆さまのご支援のもと2024年2月4日に36年ぶりの新町長に就任し、間もなく1年が経とうとしています。
就任後に取り組んだことは、ふるさと納税で地域の経済を活性化することです。
「ふるさと納税で地域の経済を元気にしたい」。そのような思いで若手の職員を中心としたプロジェクトチームを立ち上げました。
プロジェクトチームでは、寄附を行ってくださった方々に手書きのメッセージを添えたり、返礼品の特色やおすすめポイントをふるさと納税サイトに掲載したり、更には、新たな返礼品になりうるものを開拓するために、町内事業者と二人三脚で新商品の開発に取り組んでいます。
その甲斐もあり、現在では過去最高の寄附額をいただいております。
また、事業者の皆さまも町のために積極的に協力してくださり、町に活気が出てきました。
結果が伴うことで職員のモチベーションのアップにも繋がっています。
出雲崎町は人口減少が進み高齢化率も高い町ですが、一方で、風通しがよく小回りの利く町だと思っています。
少子高齢化や地域医療、公共交通の衰退や、買い物弱者対策、農林水産業の振興など、課題を挙げればきりがありません。
しかしながら、私には先人の皆さまが守ってこられた出雲崎町を受け継ぎ、次世代にバトンを渡す責任があります。
これまで出雲崎町が進めてきました、子育て世帯や、高齢者が住みやすいまちづくりを後退させることなく、まちづくりの基本理念であります「住み続けたい、関わりたい、帰ってきたい 出雲崎」の実現に向けてこれからも邁進してまいります。
【市町村長プロフィール】
仙海 直樹(せんかい なおき)1971年生まれ。新潟県三島郡出雲崎町出身。新潟県立柏崎商業高等学校を卒業後、新潟調理師専門学校を修了。家業の割烹仙海で従業員として勤務した後、2009年に出雲崎町議会議員に就任。2023年11月に辞任し、選挙活動を経て2024年2月に出雲崎町長に就任した。趣味は野球とインディアカ。影響を受けた人物は小林則幸前出雲崎町長。
(第1回)加茂市 藤田市長「チャレンジせずに諦めてしまったら、全て嘘になる」