【年収103万円の壁】企業の9割以上が引き上げ賛成、約6割は「130万円の壁」見直しも期待
株式会社東京商工リサーチは12月2~9日、「年収の壁」見直しについて企業向けアンケート調査を実施した結果、所得税が発生する「103万円の壁」の引き上げは、9割(91.3%)を超える企業が 「賛成」と回答し、「反対」は8.6%にとどまった。
「賛成」の理由は、「働き控えが解消し、人手不足が緩和する」が74.4%で最多だった。人手不足が深刻さを増すなか、働く人だけでなく、企業も税と社会保険の改正に関心を寄せている、というのが同社の見解だ。
12月11日、与党と国民民主党は、「103万円の壁」について「178万円を目指して来年から引き上げる」ことで合意した。実際の時期や基礎控除の引き上げ金額はこれから詰めるが、岩盤の「壁」見直しが動き出した。一方で企業側の本音はいかなるものなのか。
アンケートに回答した企業の規模別では、賛成が大企業95.5%(468社中447社)、中小企業91.0%(5,258社中4,785社)で、いずれも「賛成」が9割を超え、大企業が中小企業を4.5ポイント上回った。
賛成と回答した企業の産業別では、金融・保険業が94.4%で最も高く、次いで卸売業93.1%が続く。
一方、賛成が最も低い小売業87.2%と建設業89.3%は9割を切った。両産業とも、中小企業の構成比が他の産業より高くなっている。上記の傾向から、企業の規模が大きいほど103万円の壁引き上げに対し、人手不足解消を期待していると見られる。中小企業は価格転嫁によるコスト吸収が難しく、「103万円の壁」解消による短時間労働者の人手確保だけでは、経営課題の解決に足りないと考えているのではないか、というのが同社の見解だ。
賛成理由のうち最も多いのは「働き控えが解消され、人手不足が緩和する」の74.4%だった。次いで、「従業員の年収増加によるモチベーションアップが期待できる」が34.2%。3位には「世間の世帯年収増加による販売(サービス提供)の増加に期待」の30.1%が入った。
「103万円の壁」解消に「反対」の理由は、「いわゆる『年収の壁』は複数あり、『103万円の壁』の解消だけでは意味がない」が73.4%で最も高かった。社会保険の扶養条件である「130万円の壁」などが残る整合性への疑問もあると同社は見ている。
手取りに影響する年収の壁(いわゆる岩盤)は「103万円の壁」に限らずいくつか存在する。その中で企業がもっとも期待を寄せているのが社会保険の扶養対象から外れる「130万円の壁」で、57.4%の企業が緩和を求めた。これは「103万円の壁」の緩和を求める声よりも多く、約半数の企業が、税金と社会保険の両面で扶養認定の条件が緩和されることを望んでいることがわかる。