【にい経編集部発】記者コラム&今週の主なニュース
記者コラム
「架け橋」
上越教育大学(新潟県上越市)に2022年から外国人研究者として在籍していた重慶外国語学院教授の高鵬飛(ガオ・ポンフェ)さんが今月12月7日に中国に帰国した。
新潟県柏崎市の文芸同人誌「北方文学(ほっぽうぶんがく)」の旧知の柴野毅実編集長から私に紹介メールが届いたことがきっかけで、弊社にいがた経済新聞サイトに高さんの日本語による小川未明の文芸評論を今年5月に計6回に渡り掲載した。
高さんは中国の大学で日本語を専攻、卒業後は中国で日本の近代文学を教えるハルビン理工大学の教授をされていた。1984年の11月、通訳として九州に来たことはあったが、2001年に上越教育大学の教授が1週間ほど中国へ訪問した際、大学側担当者として知り合ったことが縁で2016年に3ヶ月の間来日。そして再度、今回2022年12月に2度目の上越教育大学での外国人研究者として来日した。
高さんが大学生の時に初めて読んだ日本の小説は芥川龍之介の「鼻」。記者も芥川作品の中でも特に好きな短編である。ちなみに、芥川は「鼻」が漱石に評価されて名を上げたのはよく知られた話だ。高さんは中国の大学教授時代には夏目漱石を研究していたが、上越教育大学では、受け入れ教員である同大小埜裕二教授の専門である上越市出身の童話作家・小川未明の研究をすることになった。
高さんは「中国にいる時には小川未明は知らなかったが、日本のアンデルセンと呼ばれるほどのすごい作家。天才だと思います」と流暢な日本語で熱弁する。
前述の弊社サイトへの掲載や「北方文学」への中国に関する評論掲載のほか、今年10月には上越市で「未明童話と私」と題して小川未明に関する講演会も行うなど、2年間の上越市での研究者としての生活で大きな成果を残している。
中国への帰国後も、「引き続き大学で授業をします」と重慶外国語学院で日本近代文学を教える予定だ。今後は、「すでに30編超を翻訳している小川未明の童話のさらなる翻訳や、日本語で書かれた村上春樹論の翻訳にも挑戦したい」と意気込んでいる。
文芸評論家の故ドナルド・キーン氏は、三島由紀夫や安部公房などの作品を英語に翻訳し、世界へ紹介した。この2人はノーベル文学賞を期待されながらも逃したクチだが、逆に言えば、キーン氏の翻訳という功績があったからこそ海外で多く読まれ、ノーベル賞の候補になったとも言える。
ぜひ、高さんもキーン氏のように日本と海外の架け橋となって、日本文学を中国に紹介してほしいものである。
(にいがた経済新聞社常務取締役 梅川康輝)
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