フリースクール「レアレア」 パワーを蓄え、新たな一歩を踏み出す居場所 (新潟県長岡市)
日本の小中学校における不登校の児童生徒数は年々増加している。昨年度の『文部科学省教育白書』によると、2022年度には約34万6千人に達した。不登校の背景には、いじめや学業不振、家庭環境の問題、そして心の問題など、さまざまな要因が複雑に絡んでいる。
そのような中で注目されているのが、従来の学校とは異なる教育理念やカリキュラムを掲げ、生徒の個性や興味に合わせた学びの環境を提供する学校「オルタナティブスクール」の存在だ。
なかでも、不登校やひきこもりをはじめ、軽度の発達障害、身体障害、知的障害などの事情を抱えるたくさんの子どもたちを受け入れ、学びの場を提供しているフリースクールは、「学びの多様化」を推進する文科省の施策と共に近年、全国的にも増えつつある。
そのようなフリースクールの一つが、長岡市城内にある「レアレア」である。同校は、長岡英智高等学校を運営している学校法人英智学院の系列として、昨2023年に開校し、今年で2年目の運営になる。
「レアレア」とは、ハワイ語で「喜び」「幸せ」を意味している。もともと同高校の教師が、学級通信のタイトルとして使用していたもので、フリースクール設立時に施設の名前として採用した。そこには、子どもたちに安心感を届けるだけでなく、「喜び」と「幸せ」を感じながら新しい一歩を踏み出してほしいという、スタッフの願いが込められている。
現在、小学生から中学生までの子ども9名が在籍しており、男女比は、若干女子の方が多い。室長のほか、指導員とスクールカウンセラーが、それぞれ1名ずつ運営に携わっている。
指導員である大川いずみさん(39歳)によれば、通ってくる子どもたちや、その保護者のなかには、「いずれ学校に戻りたい」と考えている人も多いという。通学当初は、「やっとやっと、ここにこれた」という状態の子どもが、施設の落ち着いた雰囲気も手伝って、数カ月通ううちに、徐々に表情が明るく変わり、少しずつ前向きな姿勢が見られるようになることもある。そのようなときに、大川さんは、自身の仕事に対してやりがいを感じている。
「ここはパワーをためる場。子どもたちが、ここでパワーをためて、次のステップに踏みだせるための居場所でありたい」と、大川さんは語る。
子どもたちが、自分のペースで、互いに良い影響を与え合い、成長していける環境が整っているのが同校の魅力でもある。例えば、以前は全く学校に通えなかった子どもが、部活だけには参加している他の子どもの姿を見て、部活動にだけ参加できるようになり、それがきっかけで学校生活に戻るといったこともある。「自分と同じ境遇や気持ちを持った人を知ることで、子どもたちの力が相互作用となるのではないか」と、大川さんは推測する。
元々は長岡高専の事務員として、多感な時期を過ごす10代の子どもたちの様子を見ていた大川さん。次第に、自身が様々な感受性を持った子どもたちに踏み込んで接する仕事がしたいと考えるようになり、この世界へ飛び込んだ。通ってくる子どもたちに対しては、「ここで完結するのではなく、先を見据えた上で、私たちは何ができるか、ということを考えていきたい」と語る。
同校では現在、教科書準拠のICT教材「天神」を活用し、子どもたちが自分のペースで学びを進められるようサポートしている。2016年に制定された「教育機会確保法(正式名称:義務教育段階における普通教育に相当する多様な学習活動の機会の確保等に関する法律)」に基づき、学校に登校しなくても、学校の出席扱いとして認められる制度があるため、子どもたちも学校に通うのと同様、出席率などを気にせずに通うことができる。
また同校では、「学校との関わりも大切にしている」とする。利用している子どもたちの様子を、定期的に文書に記し、子ども達の在籍する学校に、保護者を通して定期的に届けているという。保護者が学校に届けるスタイルをとることで、学校側と保護者との間にも会話やコミュニケーション、信頼関係が生まれ、力強い連携となる。この仕組みは、かつて小学校の校長も務めた安井靖子室長自らが考案したもの。
また月に1回程度、自主参加型の体験活動の時間を設けている。これは、社会性や協調性を育むプログラムの一環であるが、同校では、フリースクールとしては全国で初めて、若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)を利用し、子どもたちの多様な経験づくりや職業観の形成などにも活かしている。
このように、様々な事業に取り組んできた2年間は、同校にとって「挑戦の年」。スタッフ同士が試行錯誤しながら「前例」を作ってきた。来年からは、さらに多く、受け入れる子どもの数を増やし、パーテーションを増やすなどの設備を充実させ、個別のニーズに、きめ細やかに対応していく体制を整える予定である。フリースクール「レアレア」の挑戦は、これからも続いていく。
(写真・文) 湯本泰隆