最低賃金1,500円、新潟県内企業の約6割が「不可能」 東京商工リサーチ調査
株式会社東京商工リサーチのアンケートによると、同調査に回答した約5,000社のうち、約半数の企業が今後5年以内に時給1,500円を超えるのは「不可能」と回答した。一方で、約15%の企業がすでに時給1,500円以上を達成していた。
東京商工リサーチが12月19日、「最低賃金1,500円に関するアンケート」の調査結果を発表した。政府がこれまで2030年代半ばとしていた最低賃金1,500円(時給)の目標を、2020年代に前倒ししたことに伴い実施したもの。アンケート調査は12月2日〜9日にインターネットで実施し、有効回答は5,277社。なお、資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業などを含む)を中小企業と定義した。
調査結果によると、「貴社は、あと5年以内に時給1,500円に引き上げることは可能ですか?」という質問に対して、最多の回答は「不可能」の48.4%(5,277社中、2,558社)だった。一方で「すでに時給1,500円以上を達成」が15.1%(802社)、「可能」も36.3%(1,917社)で、合計51.5%(2,719社)の企業は対応可能だった。
規模別では、「不可能」は大企業34.7%(420社中、146社)、中小企業49.6%(4,857社中、2,412社)で、中小企業が14.9ポイント上回った。
産業別は、「すでに達成」は金融・保険業が33.3%(60社中、20社)、情報通信業が30.6%(300社中、92社)で3割を超えた。一方、「不可能」は小売業が62.3%(276社中、172社)、製造業が60.7%(1,361社中、827社)で6割を超えた。
都道府県別では、時給1,000円以上の地域(16都道府県)で、「すでに時給1,500円以上を達成」している割合が10%以上は12都府県に及んだ。一方、時給1,000円未満の地域(31県)は、「不可能」が60%以上は19県に及び、地域によって差が大きかった。
新潟県(母数149社)は、「すでに時給1,500円以上を達成」が18社(12.08%)、「可能」が38社(25.50%)、「不可能」が93社(62.41%)となった。
最低賃金を5年以内に1,500円に引き上げることが「不可能」と回答した企業に、どうすれば可能になるか、その条件を聞いた(2,366社から回答、複数回答)ところ、最多は「賃上げ促進税制の拡充」の49.8%(2,366社中、1,180社)で半数を占めた。次いで、「生産性向上に向けた投資への助成、税制優遇」41.2%(976社)、「低価格で受注する企業の市場からの退場促進」31.6%(748社)と続いた。
自由回答では、「取引先の価格改定への理解」(サービス業他、資本金1億円未満)、「価格転嫁の促進」(製造業、資本金1億円以上)など、価格転嫁が最大のポイントになっている。
調査結果について東京商工リサーチは「最低賃金1,500円に向けて、中小企業から実現にかなり厳しい声が出ている。業績拡大のほか、収益強化が課題で、さらに税制拡充や投資への助成など、政策的なバックアップを求める声も多い。一方、『低価格で受注する企業の市場からの退場促進』など、正当な競争を求める声も上がっている。政策支援や生産性向上の自助努力が遅れると、最低賃金をトリガーにした企業経営の二極化が拡大する可能性もある」とコメントした。