株式会社スノーピーク(新潟県三条市)、本社併設キャンプ場に温浴施設を中心とした複合リゾート開業へ

FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS イメージ

株式会社スノーピーク(新潟県三条市)は8日の大規模総合展示会「Snow Peak LIFE EXPO」内ステージイベントで、2022年春に、本社併設のキャンプ場へ温浴施設を中心とした複合型リゾートを開業することを発表した。

スノーピークでは近年、キャンプギアを衣食住すべての領域を網羅するプロダクトと捉え直し、また既存の「遊び」の環境だけでなく「働く」環境へも展開している。

そのような中で、昨年スノーピークは本社に併設したキャンプ場「HEADQUARTERS Campfield」を約5万坪から3倍となる約15万坪へ大幅に拡張。そしてその大空間に、「野遊び」から始まった同社の価値を中心に、衣・食・住・遊・働すべてが詰め込んだ、人間性の恢復や、人間の生き方そのものを提案する「未来構想プロジェクト」を、山井梨沙代表取締役社長は今回の大規模総合展示会で打ち出した。

山井梨沙社長による8日の会見の様子

FIELD SUITE SPA HEADQUARTERSの模型

その未来構想の第1弾として8日に発表されたのが、温浴施設を中心とした複合リゾート「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」だ。世界的建築家であり、スノーピークとは「LAND STATION HAKUBA」(長野県白馬村)などでタッグを組んだ建築家・隈研吾氏が再び設計を担当。栗ヶ岳の眺望を楽しむことができる開放的な露天風呂や、焚き火を囲うむようなサウナのほか、レストランと宿泊施設も備える。

8日にステージへ登壇した隈氏は施設について「建築物それぞれを少しずつずらす雁行型の建築にすることで、すべての建物から自然を眺めることができる構造にした」と話す。4面をガラス張りにした部屋や、巨大な露天風呂などと相まって、非常に開放的かつスノーピークが目指す自然との接近を重視したコンセプトだ。

施設内のレストラン

焚き火を囲むような構造のサウナには山井梨沙社長も太鼓判を押す

また、施設内のレストランは「LAND STATION HAKUBA」内レストラン「雪峰」と同じく、石川秀樹氏が監修。「雪峰」と同様に、地元食材や生産者との繋がりを体験できる料理が期待される。また宿泊に関しては、スノーピークと隈氏が最初に共同したトレーラーハウス「住箱」と、3棟のヴィラが併設される予定だ。

山井太代表取締役会長は「元々、本社を移転した2011年にもスパレストランを併設する構想があったが、予算などの事情で実現できなかった。しかし、むしろ10年経った今だからこそ隈氏との出会いや、人々と社会の価値観の変化があり、一番スノーピークらしいものが提供できるのではないかと考えている」と期待を込める。

国内の人口のうち恒常的にキャンプへ行く人は人口の7%程度だという。今回の新施設では、キャンプ愛好者以外の需要や、新たな顧客の獲得へ繋げていく狙いもあるようだ。山井梨沙社長は「『スノーピークがあるから新潟に来た』という人の声も聞く。観光や雇用・移住に繋げることができることも我々の企業としての強みであり、(地元の活性のためにも)たくさんの方に来てもらえるように尽力していきたい」と意気込んだ。

新施設のコンセプトについて話す隈研吾氏

燕三条を代表する金属産業を反映した「メタルウォール」や、地元の土を使った左官壁など、隈氏が「ローカルマテリアル」と呼ぶ地域性・物語性も特徴的だ

隈氏は、山井太代表取締役会長、山井梨沙代表取締役社長とのトークセッションで「コロナ禍で建築業界は折り返し地点を回った」と話した。「世界中どこでも同じコンクリートの箱を作って、その中で生活するのが最も効率的だと考えられていた。しかし、それは20世紀のOSであり、この度のコロナ禍でその生活が不健康であることに人々が気づいた。OSのアップデートの一つの姿として、この野原や森の脇にテントが立っている姿(会場となっているスノーピーク本社周辺を指す)や今回の新施設がある」(隈氏)。

スノーピークの展開する衣・食・住には自然との接近以外にも、「地域・地元の素材を使う」ことや「生産者・製造の現場への見学に繋げる」など、その製品に連なる物語性や文脈を重視している。「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」でもそうした方向性が隈氏の思考と合致し具現化した。

山井梨沙社長が話すように、この新施設が単なる観光施設でなく、加速化する近代社会が振り落としてきた物語性や地域性、人間性を恢復する一つのきっかけとなることに期待したい。

新潟の四季に溶け込み自然との一体感を感じさせるというヴィラ室内

隈氏が設計したトレーラーハウス。新施設ではシャワーなどを備えた、より大型のモデルを使用する予定であるという

トークセッション時の山井太会長(写真左)と山井梨沙社長(写真右)

トークセッション時の隈研吾氏

建設途中の施設の様子

 

◎「FIELD SUITE SPA HEADQUARTERS」施設概要

建築面積:2,007.644平方メートル
延床面積:2,133.455平方メートル
スパ面積:約400平方メートル(最大収容人数:240人)
レストラン面積:約140平方メートル(座席65席)
宿泊施設:ヴィラ棟 合計3棟(100平方メートル1棟、50平方メートル2棟)、トレーラーハウス「住箱」も併設予定

 

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(文・鈴木琢真)

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