【キシャメシ】昨年11月に新潟でスタートしたミスタードーナツの食べ放題に、普通のにいけい記者が挑む
ロカビリーの神様、エルビス・プレスリーは42歳という若さでこの世を去ったが、その死の直後には「好物だったドーナツの食べ過ぎが死因」というデマが流れた。もちろん実際はそれが直接の死因ではないが、晩年は肥満化して「ドーナツを毎日のようにひと箱丸ごと食べていた」という噂もあったため、そのデマもまことしやかに広まった。こういう美しく自堕落な食生活には、正直言って少しあこがれるところもある。そしてドーナツには、大の男も自堕落にさせる強い引力がある。
「ミスタードーナツのショーケースを、端から端まで食べ尽くしてみたい」
酒も甘いものも好きなおじさん記者には、そのような「スウィート・デザイア」がひそかに眠っていた。
実はダスキン株式会社(大阪府)が運営するミスタードーナツでは、全国に約1,000軒の店舗を有するが、そのうちの一部の店舗ではドーナツ食べ放題のドーナツビュッフェを行っている。ドーナツビュッフェは2016年ごろにスタートし、じわじわ実施店舗を増やしていった。「ミスドでショーケースの端から端まで!」は既に夢物語ではない。
そして2024年11月、とうとう新潟県内にも実施する店舗が現れた。ミスタードーナツ新潟万代シテイショップ。ここだけが2025年1月現在で新潟県内唯一、ビュッフェを実施している。
人生チャレンジだ。50代の初老記者は、ミスドのドーナツを60分で何個食べられるのか。これを実証すべく年明け前の12月初頭に予約の電話を掛けた(ビュッフェの参加は完全予約制)。ところが年内は定員いっぱい予約が埋まっており、ようやく席が取れたのが、まさに本日というわけだ。満を持して今日、ミスド新潟万代へと向かう。
ミスドのドーナツビュッフェ(中学生以上は税込1,900円)は60分制。基本的にはショーケースに並ぶ商品はすべて対象で、比較的高額な期間限定商品なども(個数制限はあるが)入る。ドリンクもお代わり自由(一部対象外も)。きわめて制限なしに近いルールである。
おそらくこの金額なら「元を取る」ことは造作ないだろう。なので記者は自分に2つのマイルールを課した。ひとつは「ミスドを心行くまで楽しむこと」。元を取る、原価をかさませることを目標としない、ミスドへの愛を貫く。二つ目は「美味しいと感じなくなったら、時間内でもやめること」。
カウンターで「予約した〇〇です」と告げ、席に案内される。席でルールを説明され、いよいよスタート。ドーナツビュッフェはカウンターでドーナツとドリンクの受け渡しをされるが、一般客と区別されたレーンで受け取ることができるので列に並んでタイムロスはない。初回はドーナツ5個、ドリンク1杯まで2回目以降はドーナツ3個まで、一度に注文できる。
記者は事前のリサーチで、ひとつの強い希望を持っていた。1月10日からの期間限定シリーズ「misdo meets PIERRE MARCOLINI」を食べ尽くすことだ。ベルギー王室ご用達の世界的ショコラティエ、ピエール・マルコリーニと共同開発した、世の甘いもの好きにはちょっと捨て置けないシリーズ、これを全制覇すること。単価が297円~374円と少々高額なので、「もしかしたら対象外か?」と思ったが、なんと各1個までながら対象に。ラインナップは5種類、最初の注文数は5個まで。のるかそるか、記者は初回の注文でピエール・マルコリーニコラボを各1個×5種とダージリンティーを注文。
ピエールマルコリーニコラボシリーズはショコラ・ノワール、ショコラ・ノワゼット、ショコラ・フランボワーズファッション、ショコラ・ムーファッション、ショコラ・ダマンドの5種。
これは、たまらん!チョコが濃厚!ガナッシュホイップが載っているショコラ・ノワール、ショコラノワゼットは、ホイップ自体は軽い仕上がりだがそこにトッピングされるクリームがぐいぐい来る。美味い。フィナンシェをイメージした本体の生地も良い。さすがにバランスが素晴らしく、従来のミスド製品と一線を画す魅力にあふれる。オールドファッション発売50周年記念の2商品も良いですな。普段ミスドで最もヘビロテなのはチョコファッションだが、やはりオールドファッションとチョコの相性は最高だ。フランボワーズファッションの方が、幾分「さわやかさ」がある。ココアパウダーコーティングは、なかなかのチョコアタック。ショコラ・ダマンドは、もう、この価格レベル(それでもシリーズ最高価格)で食べられるのが幸せ。素晴らしいバランスと満足感。
さすがにチョコレートの神様、素晴らしい出来…と感じたが、一方でさすがに5個連続で行くと「今日はもう、チョコ方面は難しいか」ともなった。うーん、チョコの5個スタートは浅はかだったと言わざるを得ない。チョコだけに甘く見すぎたか。
続いて2周目、チョコの連続アタックを和らげるべく、少ししょっぱいものを行きたい。「台湾ごはん祭り」から台湾胡椒餅風パイ、ホット・セイボリーパイ BBQ フランクフルトといきながらのポン・デ・黒糖。プラスでダージリンのお替り。
おかず系パイ2品は、味に変化が付いて狙い通り。これに事前のリサーチで「比較的軽めの腹ごたえ」と言われていたポン・デ軍団から優しい甘さの黒糖をチョイス。おうおう、全然美味いよ。約30分で8個、ここまでは順調と言える。楽しめているぞ、俺。
さあ後半戦。やはり事前のリサーチで「腹いっぱいになっても、どさくさで1個入るくらいの軽さ」と聞いていたチョコリングを行こうと考えたが、まだチョコは無理だ、ということでストロベリーリングを。さらにやはりおかず系でなおかつ高額ラインのザクもっちドッグからザクもっちドッグタマゴ。そして、今一度ミスドと向き合いたいという狙いからドーナツポップ8個入り。
うーんストロベリーとは言っても、実質はチョコなんだなぁ、これ。いくぶんの酸味に救われる思い。ザクもっちドッグで味変、ここまでは勢い。そしてドーナツポップ8個が、うーんなかなか「入っていかない」。考えてみればドーナツポップは最初に行くべきだった。これは、いろいろな味の丸くて小さなドーナツがたくさん入っているものだが、最初に食べて「今日の俺は、このタイプを柱に攻めていこう」という羅針盤にすべきだったかも。
ここでいよいよ手が止まる。ドーナツポップの最後の3個は勢いでクリアした、正直。そして訪れる「賢者タイム」。意識が飛びそうだが、幸せではある。椅子の上でフリーズしたように、1mmも動けなくなる。「おじさんがドーナツをバカ喰いしている記事、読んでもらえるかなぁ」「あと10年若かったらもっと行けたな、だって美味しいんだもの」いろんなことを考える。
「ズボン、もう少し余裕がある、ゴムの入ったタイプが良かったかな」と反省している時に、スタッフから声をかけられ「残り10分になりました」。今の俺に、あと何ができるだろうか、と考えてみる。
意を決して、カウンターに向かい「すみません。カスタードクリームとブレンドコーヒーを」。わかっているさ、ここに来てのエンゼル系のパンチが重いことは。ただ「あと1発良いのをもらえば俺はリングに倒れる」という意味では何を食べても一緒だ。最後は華々しく行こう(とはいえホイップのエンゼルクリームは無理だった)。
薄れゆく意識の中で豊かなコクのカスタードを味わう。生地はふんわり軽いのに、クリームの濃厚さったら…いや美味いのは、美味いのよ。
はい、ここでフィニッシュ。ドーナツ12個、ドリンク3杯。販売価格合計で言えば4,202円(税込)。自分ではもう少し行けるかと思ったが、ここまでか。完全に満足感は通り越している。
14時からアポがあるんだ、俺。糖質を摂取したせいか、頭の回転は比較的良好。体を引きずってたどり着けば、なんとかこなせる。
ミスドのドーナツビュッフェ、元を取るのは簡単だ。はっきり言って十分楽しめると感じた。
(編集部I)
【ミスタードーナツ新潟万代シテイショップ】
新潟市中央区万代1丁目3-30シルバーホテルビル1F
営業時間 9:00~22:00
定休日 なし
【キシャメシ】は、にいがた経済新聞編集部のメンバーが、日々の取材活動の合間にいただく昼ご飯を日替わりで、真正面から他意を入れず、何モノにもとらわれず、お仕着せのグルメリポートに背を向け綴った、キシャの日常モノローグ。さて明日の担当キシャはどこで何を食べるのか、お楽しみに。