新潟市で巨匠漫画家の個展が同時開催 “マンガで街おこし”の方向性を考察する

 1月13日から降り続く大雪に見舞われた新潟市だが、今週末は巨匠漫画家の個展が市内2カ所で同時開催された。

 

  中央区古町6の「新潟市マンガの家」で開催されているのは「山上たつひこ原画展」(12/8~2/7)。中央区八千代の「新潟市マンガ・アニメ情報館」で開催中は「江口寿史展:KING OF POP」(1/14~2/12)。

 

 山上の「がきデカ」、江口の「すすめ!!パイレーツ」はともに70年代の少年漫画誌でヒットしたギャグ漫画。40代後半~50代の男性の多くがノスタルジーを感じるサブカルチャーの旗手である。

 

 14日(日)に2展を観覧した。前述のとおり全国的な荒天のため県内の在来線が運休するなど、新潟市街地を含めて交通に支障をきたしている状況下。その影響もあってか、午後1時半に訪問した時点での「新潟市マンガの家」の来場者は3人ほどだった。

 

 一方で、そのような荒天の中、「マンガ・アニメ情報館」の江口寿史展は、作者の江口寿史氏本人による「5分間スケッチ」という催事も併催されていたこともあり、多くの入場者で賑わいを見せていた。

 

 「新潟市マンガ・アニメ情報館」の施設規模は「新潟市マンガの家」の約3倍であり、単純比較は難しいが、万代にある前者は有料にもかかわらず近年の年間入場者数は11万人を超え、入場無料の後者(古町)は同3万人程度で推移している。同じ平成25年度開業で「にいがたアニメ・マンガプロジェクト共同体」の指定管理施設であるが両者の集客力には大きな差がある。

 

 新潟市は高橋留美子、水島新司など多くの有名漫画家を輩出していることから、マンガによる地域おこしに力を入れている。マンガ・アニメはクールジャパンを代表する存在として世界的に需要のある輸出商材として確立しているだけに決して的外れではない。昨年の大ヒット作「君の名は。」に例を見るまでもなく昨今はマンガ・アニメの“聖地巡礼”が流行し、作品の舞台となった地方都市に新たな観光コンテンツを産み出していることもある。しかし未だ新潟にマンガ絡みのツーリズムが本格的に根付いていないところを見ると、ただ単に人気作家の出身地だからと言って観光客が訪れる理由にはならないということなのだろう。

 

“漫画家を多く輩出している”=“マンガで街おこし”は発想としてキツい。一方で、マンガ・アニメの専門学校がこんなに多い地方都市は他にない。マンガ文化が地元に根付いているのは確かだが、これを“外貨獲得”につなげるにはマンガ単体では弱いし、ましてや“作家の出身地オシ”では無理があるのかもしれない。世界が日本に注目する2020年までにプラスアルファが見つかれば、新潟市の“マンガを核とした街おこし”は、あるいは日の目を見るのではないのだろうか。

 

 「新潟市マンガ・アニメ情報館」の年間来館者数が11万人を超えていることは、高く評価されてしかるべきであろう。一方で「新潟市マンガの家」には地元ゆかりの作家の常設展示が盛りだくさんだが、年間来場者数で苦戦が続いている。 「諸星大二郎展」や「山上たつひこ展」といった特別展示のテコ入れでようやく来館者を維持しているのが実情のようだ類似施設の「新潟市マンガ・アニメ情報館」に対して、「新潟市マンガの家」がどのような個性を打ち出していくことが可能なのかを探っていく必要もあるだろう。

 産学官民一体となってマンガ・アニメやその関連産業を定着させるにはどのような方法論があるのかも、今後の議論となってくるのではないか。

 

 NSGグループの池田弘総長も著書「地方の逆襲」の中で「新潟市がマンガ単体で経済効果につなげようと思うのなら無理がある。アニメ他を巻き込んだデジタルコンテンツ産業として売るべき」と説いている。

 新潟市がマンガ・アニメ文化事業を振興したいのであれば、より重層的な発想が求められているのかもしれない。

 

※一部に誤解を招く内容が存在したため、1月28日に訂正し再掲載いたしました。皆様にお詫び申し上げます

新潟市マンガの家

 “マンガで街おこし”は果たして可能か?

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