【取材レポート】フルサット内での「平丸スゲ細工づくり」イベントを覗いた 竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問) 

新幹線上越妙高駅西口のフルサット内で開催されているイベント「平丸のスゲ細工」

新潟県妙高市山間の平丸地区でおよそ70年に渡って制作・伝承されて来た「平丸のスゲ細工」づくりだが、過疎化・高齢化で担い手がなくなり、以前からあったNPO法人平丸スゲ細工保存会を昨年10月解散し、最近ボランティア団体「スゲ細工のこし隊」(柴野美佐代代表)を立ち上げ、スゲ細工の継承活動に取り組んでいる。そこで同団体では、3月1日から9日まで北陸新幹線上越妙高駅西口のフルサット内で、スゲ細工のこれまでのあゆみや制作工程等を紹介したパネル展示や作品展示、映像上映、制作実演などのイベントを開催している。

この日のイベントは、同のこし隊が主催し、県の「新潟地域づくりサポート事業」にも採択され、県上越地域振興局が全面協力している。県では各地域振興局ごとに県の地域づくりサポート事業を実施しており、上越地域振興局では上越地域の地域資源であるスゲ細工を制作する「スゲ細工のこし隊」だけをその事業採択している。この日はイベント初日でもあり、スゲ細工に興味を持つ多くの人達が市外からも駆け付けていた。訪れた40代の女性は「スゲ細工を作ってみたいと思って来たが、精巧に出来ており、私には無理かも」と話しながら見入っていた。

スゲ細工のもともとの発祥は、山間の妙高市平丸に住む農家の主婦の皆さんが冬場の内職仕事として始めたもので、毎年の干支などの置物を中心に制作し、一時は地域の宝である伝統的な民芸品として人気を博したが、次第に作り手がいなくなり、今では「のこし隊」が引き継ぎ、継承の取組みを続けている。柴野さんは「今は私ともう一人(男性)と二人でやっており、何とか作り手を増やしたいと言うのが開催の趣旨だ。同時に干支のスゲ細工だけでなく、干支以外のものにもチャレンジし、作品のレパートリーを広げていければ」とも意欲を見せる。

活動の舞台はもともとの平丸地区のほか、数年前から上越市板倉区釜塚にも作業場をつくっている。スゲの栽培は平丸地区の畑などで行い、その他の材料のワラやぬいご、みかげ、シオノキ、からむしなども近くで確保している。なお、確かに約70年以上の歴史があるスゲ細工づくりだが、農家の主婦達の細工技術は高かったが、そうした技術を大切にしながらも、アレンジを加えつつ、時代に合った新しい形のスゲ細工を作るために、模索も続けている。

柴野さんも「二人だけでやり繰りしているので、受注の申し込みがあっても、なかなか対応出来ない。当分の間はリピーターの方を優先とし、数量限定の販売となる。ただ、平丸のスゲ細工ファンは多くはないものの、県内外や全国にそれなりにおられ、何とかお応えしたい。そんなことで、こういう機会を通してスゲ細工の魅力を多くの人に知って貰いたいし、スゲ細工づくりに参加して戴ける人を募っている」とも話している。

併せて柴野さんは今後、スゲ細工の作り方を分かりやすくまとめて技術を広めたいとしており、干支以外にも具体的に地域ゆかりの「上杉謙信公」や目の不自由な女旅芸人「ごぜ」などもスゲ細工で作り、新たな魅力を伝えたいと意気込んでいる。

 

文・撮影 竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問)

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