「新潟県上越市の『学びの多様化学校(不登校特例校)』はどこまでも不登校児童生徒に寄り添ったものに!」竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問)

(写真はイメージです)

苦しみ悩む不登校児童生徒にどれだけ寄り添えるかが全国の教育現場で求められている。私は思う-『そうした子供達が悪いのか。決してそうではない。いつの間にか、日本の教育がそうした傾向の子供達を置き去りにして来たからではないか。決して遅くはないので、全力で対策に当たって欲しい。少子化が続く中でもあり、教育に携わる皆様になお一層お願いしたい』。

新潟県上越市では、不登校児童生徒のための県内では初となる『学びの多様化学校(不登校特例校)』を令和8年度4月に設置することを決めている。計画では、本年度で閉校する諏訪小学校の校舎を使用し、近くの雄志中学校の分校に位置付けるが、学校名は(仮称)諏訪中学校とするほか、一学年6~8人の少人数の生徒受け入れを予定しているという。その体制も管理職(教頭)と基本5教科の教員7人に加え、スクールカウンセラーを設置するほか、教育センターの相談関係機能を校舎内に設置し、ほかの学校に通う児童生徒の保護者も相談出来るようにするとのことである。7年度は使用予定校舎の施設整備はじめ、ソフト面の教育課程の検討なども本格化する。

様々な原因による不登校児童生徒に対して、この学びの多様化学校は子供達の居場所となり、安心して学べる場としての選択肢を増やすためでもあり、具体的には学校に行きづらい児童生徒のために、学びたい時に学べるよう、教育課程を柔軟に編成し、学びの場を確保するものである。いずれにせよ、苦しんでいる不登校児童生徒がこの学びの多様化学校を通して立ち直って欲しいと願うばかりである。また当市には、体験を交えた多様な学びの場としてのフリースクール「やすづか学園」(平成8年4月開学)もあることから、十分連携を図って戴きたいし、これまで「やすづか学園」が培って来た知見なども生かせるものは生かして欲しいものである。

ところで、全国の不登校児童生徒数は約35万人にも及んでいる。一般的な不登校の主たる原因としては、無気力・不安・生活のリズムの乱れ・友人関係・親子の関わり方・学業不振等が挙げられている。上越市でも小中学生合せて500人に迫る不登校児童生徒を抱える。そうした中、市の教育委員会ではこれまでも、不登校児童生徒の居場所づくりや学習保障の対策も講じ、学校訪問カウンセラーの派遣を含む相談体制の充実等の様々な対応を行って来たことは承知している。それでも残念ながら市内の不登校児童生徒数が増加傾向で、特に中学一年時に急増し、中学3年が最も多いとのことである。

市教育委員会ではこうした現状を踏まえ、有識者らから意見を聞くなどして設置の要否の検討を重ねて来たもので、そのうえで今回の学びの多様化学校は市内の中学生を受け入れることにしており、一学年最大8人程度とし、来年度から県教育委員会と具体的な設置検討に入る。昨年12月の市議会文教経済常任委員会の所管事務調査で、「雄志中学校の分校扱いにしたのは、より多くの教育職員を配置出来、手厚い支援に繋がる」と答えていたが、確かに分教室の位置づけになれば、教員職員の配置が固定化し、柔軟に対応出来ないデメリットが生ずるからであろう。

ここから、コラムとして自分の意見を申し述べたい。今回上越市教育委員会は設置に当たって、相当練りに練った検討が重ねられたことが伺える。一つは、分校扱いにすることでより多くの教育職員が不登校で苦しむ子供達に関わることが出来る点を評価したい。なぜなら様々な要因で不登校に陥っていることから、その要因を固定的に捉えるのではなく、様々な見識や経験のある多くの教育職員の複数の眼で幅広く子供達の心深く思い遣れると思うからだ。少人数の教育職員ではどうしても苦しんでいる子供達の心のひだに迫ることが出来るだろうかという心配があるからである。

もう一つが、子供達を取り巻く環境や雰囲気についてだ。以前「やすづか学園」について聞いたことがあるが、県内外からやって来る子供達が、あの安塚の住民の皆さんとの触れ合いが何よりも嬉しかったとの声を寄せていたからだ。田舎の住民の皆さんの中には、当然お年寄りが多いが、誰もが孫の様に優しく接してくれたのだ。今回の校舎となる諏訪小学校も農村地帯にあり、開校後校舎内には諏訪地区公民館も設置され、地域の人達と交流が出来るのではないかと思うし、様々な農業体験なども可能となろう。世代を超えた様々な人達との触れ合いによって、立ち直るきっかけもたくさんあるようにも思う。

最後に持論になってしまうが、まとめとして冒頭で述べたように、不登校で苦しむ子供達の心をどう開いたらいいのか、子供達の声なき声をどうキャッチしたらいいのか、子供達と同じ目線で寄り添い、聞き役に徹するしかないのかもしれない。教育に当たる職員の皆さんはもとより、そして地域住民の皆さんにも大きな忍耐の心で、優しく見守って戴き、傷ついている子供達と心温まる触れ合いの対話、会話をして欲しいものだ。

 

竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。

 

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