日銀の雨宮正佳副総裁が新潟県金融経済懇談会へ出席、県内行政や金融団体、経済団体と意見交換
日本銀行は21日、県内の金融経済情勢などについて意見交換を行う新潟県金融経済懇談会をオンラインで実施し、日本銀行の雨宮正佳副総裁や新潟支店の東善明新潟支店長をはじめ、新潟県から佐久間豊副知事、新潟市の中原八一市長ら、県内の行政、金融団体、経済団体から11人が参加して意見交換した。
雨宮副総裁は新潟県内の経済状況について冒頭の挨拶で「飲食や宿泊などの対面型サービスを中心に経済活動への下押し圧力は継続しているが、国内企業は海外経済の回復に支えられて輸出や生産は着実に増加している」と解説。国内企業の設備投資については、一部業種に弱さが見られるが、機械投資やデジタル関連投資を中心に持ち直しており、日銀短観の本年度設備投資計画9.4%増が見込まれるという。
なお、雨宮副総裁の冒頭挨拶に関しては、文章化されて日本銀行のwebサイト上で全文公開されている(【関連リンク】日本銀行 「最近の金融経済情勢と金融政策運営 新潟県金融経済懇談会における挨拶」)。
一方、記者会見で懇談会の様子について記者から問われた際に雨宮副総裁は「足元の経済状況よりも、ポストコロナを見据えた取り組みについて、行政や企業の方が熱心に話していたことが印象的だった」と話す。
ポストコロナの中長期的な取り組みとして、行政や企業からは創業支援やデジタル・トランスフォーメーション(DX)が挙がると同時に、持続可能性や脱炭素といった取り組みへの指摘も多かったようだ。雨宮副総裁は昨年度県が進めた新潟港のカーボンニュートラルポート検討会や水素プラントへも言及しつつ「様々な企業ごとの努力も聞いており、ぜひこういう取り組みで(他地域を)リードして行って欲しい」とコメントする。
また懇談会の中では金融機関や企業から、気候変動対応や持続可能性について具体的な制度の要望よりも、「海外事例や取り組み方法の知見をセミナーや研修などで共有して欲しい」という意見が挙がり、県内企業でも持続可能性などへの関心の高まりや、意識の共有を志向する動きが活発になり始めていることが伺える。
新潟県内経済の課題については「日本の経済と共通する課題が多い」という一方で、雨宮副総裁は「新潟は農業と米のブランド力が強すぎて、多様で優秀な製造業が目立たない」ことも問題視していると話した。「例えば、新型コロナウイルスのワクチンの冷凍庫を新潟の企業(※編集部註:ツインバード工業株式会社(新潟県燕市)のこと)が製造していて、日本のワクチン接種を進める上で新潟の技術力が貢献しているが、そのことをもっと宣伝して、新潟のブランドを高める取り組みがあっても良いのではないか」(雨宮副総裁)。
新潟のイメージとして農業が非常に強い点は疑い用はない。また、農業、工業いずれも今後は付加価値をつけて差別化を図ることが重要であり、持続可能性への取り組みやDXによる働き方の変革、6次産業化などでそうした動きに対応することが必要だ。