【コラム第13回】トランプ追加関税の上越地域経済への影響は? 竜哲樹(にいがた経済新聞社顧問)

上越商工会議所では追加関税に関する特別相談窓口も設置された
トランプ追加関税については、日本に計24%を課し、更に自動車と自動車部品には25%の追加関税を発動するというもので、わが国のみならず世界経済に大きな打撃となることもあり、石破首相も訪米し直接交渉を行うことにしている。
併せて国内経済への影響も甚大であることから既に政府は中小企業はじめ事業者支援として、全国の経済産業局や商工会議所などに特別相談窓口を1,000か所設置するほか、中小企業のセイフティネット貸付の利用要件を緩和するなど資金繰り支援に乗り出した。
特にアメリカ向けの輸出品の3割(金額ベース)を占める日本車の輸出に対する影響は大きく、裾野の広い自動車業界ではこのままだと、全国で約500万人の雇用が失われるとも言われている。上越市内の県内の自動車関連業界からは懸念の声が多く寄せられ、きめ細かい対応が求められている。
上越市内で自動車部品の一部を製造する企業では「国内向け中心でも一部海外向けもあることから、今のところ影響は計れないが、ただ長引いた場合は懸念されるため今後の動向を見定めていきたい」(ホシノ工業株式会社取締役)と話す一方、上越商工会議所(高橋信雄会頭)では「既に特別相談窓口設置やセイフティネット貸付の受付も開始した。市内には自動車関連企業も多いので心配しているが、今のところこの先どうなるかは不透明だ」としている。
中国などはさっそく報復関税としてアメリカからと同じ34%の追加関税をアメリカに対して課した。今後各国が報復合戦を繰り広げられれば、貿易戦争が過熱してしまうことになろう。それを防ぐには日本をはじめとする自由貿易などの価値観を共有する国との連携強化も重要となろう。
また、追加関税による影響が世界の金融市場を混乱に陥れ、東京市場の日経平均株価も急落し、個人投資家などに大きな不安をもたらしている。相互関税を発表以来3営業日で約4,000円以上下落し、8日には反発し少しづつ戻しているものの、長期化への懸念もあるのも事実だ。
自動車以外の輸出品を扱う企業でも、海外輸出に大きな期待をしていた日本酒業界なども不安の声を寄せている。10年以上前からアメリカへの輸出を行い、日本食ブームの中で近年輸出量を拡大している上越市の(資)竹田酒造店(竹田成典代表社員)では、「少なからず影響はあると思うが、6月訪米するので直接反応を見て判断していきたい」としている。
またコメの海外輸出については、JAえちご上越では「今はコメの国内消費問題が中心で、輸出米と言っても全農や民間などが進めている。ただ、関税問題で輸出米が増えなくなってしまうのでは。長期的な販売先としてアメリカにも期待したい」(山岸雅行代表理事)と現時点での捉え方を説明する。
アメリカの今回の関税措置により、日本における経済後退を招き兼ねないことから、地域経済を立て直すための大胆な内需拡大策も求められている。今後全国知事会や県内市町村会などでも議論が交わされることになろう。
いずれにせよ、トランプ追加関税による地域経済全体への影響を考えた時、最前線の市としてどのような対応を取るべきかについて、上越市の小田基史副市長は「関税の影響についての詳細なことはまだ分からないが、いずれにせよ、市がまとめ役となっている市の経済状況などの情報を共有する経済情報共有会議(コロナ時に結成)で、商工会議所や商工会、金融機関、ハローワークなどの関係機関とも連携しながら、今後の対応を検討していきたい」とコメントしている。

東京証券取引所における株価が急落し、上越市内の証券会社でも従業員らは株価の動向への対応に追われている
竜哲樹
昭和25年新潟県上越市吉川区生まれ、新潟県立高田高等学校卒業。昭和48年3月富山大学文理学部卒業(教員免許取得)。元産経新聞社記者、元上越市議会議員。にいがた経済新聞社顧問。