少年院や刑務所出所者の就労支援プロジェクトが始動
少年院や刑務所の出所者(出院者)の就労を支援するプロジェクト「職親(しょくしん)プロジェクト」が10日、新潟(上越地区)で始まった。同日、活動の担い手である日本財団や、これまでに26名の出所者を採用してきた千房(株)のほか、出所者(出院者)の就労受入れで協力する地元企業(10社)、地元関係者などが出席し、上越市安塚区の専敬寺で調印式が行われた。今後、農業や観光、季節労働(建設、スキー)などの分野で、出所者を受け入れていくという。
「一般刑法犯は減少傾向にあるものの、再犯者率は、平成8年度の27・7%から平成25年度には48・0%になるなど増加している。そして無職の再犯者率は7割にもなっている」(日本財団の担当者)。
そうしたなか、始まったのが、同プロジェクトだ。2013年2月、出所者の再犯防止を目指し、日本財団や千房などのほか、(受け入れ企業である)7社が参加し、大阪でスタートした。
その後、「オープンな活動」(千房の中井政嗣社長)だったこともあり、マスコミに大々的に取り上げられ、東京や福岡、和歌山などでも活動が立ち上がったという。現在は全国で78社が参加している。
上越は、そうした地区に続き、立ち上がったもので、中山間地域では初の試みになるそうだ。
10日の調印式で、主催者あいさつに立った日本財団の笹川陽平会長は、
「成熟した我が国では、社会の課題が細分化し、政府や行政だけでは解決できないし、民間だけでも解決できない。官民一体となる必要があるが、日本財団は官と民の接着剤となって、様々な活動(障がい者就労など福祉活動、教育支援活動、国際貢献など)を行っている。職親プロジェクトのそうした活動の一つで、志ある方々と、(この上越で)小さな成功例を積み重ねていきたい」
と話していた。
一方、プロジェクトの難しさについても言及。
「中小企業の経営者の皆さまには、愛情を注いで、(出所・出院者の)心を開いていってほしい。ただ、表面上心が開いているように見えても本当に心を開かせることは簡単なことではない。(他の地域では)一歩前進して二歩後退するような時期もあった。だが、辛抱強く試行錯誤を繰り返しながら、まずは成功例をつくっていっていただきたい」
と語っていた。
そして、
「プロジェクトでは出所者を非生産者ではなく、生産者と位置づけている。社会に参画してもらうことで、社会的なコストを下げていくことにもつながっていく」
とプロジェクトの意義について述べていた。
なお、プロジェクトでは、出所・出院前から、校正支援プログラムや採用面接などを行う。
その後、出所・出院後に中間支援施設で社会復帰に向けたサポートを行った後、晴れて就業(社会復帰)となる。また終業後も、フォローアップを行っていくという。