日本トーター株式会社(東京都港区)が上越酒造株式会社(新潟県上越市)を100%子会社化、「良いものを造り確実にお客様を増やせる酒蔵にしていきたい」
日本トーター株式会社(東京都港区)は30日、同日付で上越酒造株式会社(新潟県上越市)を100%子会社化した。今回のM&Aは、国の事業である「新潟県事業承継・引継ぎ支援センター」を受託運営している(公財)にいがた産業創造機構(NICO)のサポートにより成立したもので、30日、日本トーターの平田和稔代表取締役社長と、上越酒造の飯野美徳代表取締役社長が出席し上越市内で株式譲渡契約の調印式を行なった。
日本トーターは1982年の設立で、社員数は2,946人(7月1日現在)。公営競技の企画、運営および開催受託に関する業務などを手がけている。
一方、上越酒造は1804年の設立で、社員数は3人(7月1日現在)。大吟醸「越後美人」をはじめとする清酒の製造販売を手がけている。
今回の事業承継は、上越酒造6代目の飯野社長に後継者がおらず、昨年3月に引継ぎ支援センターに相談したのがきっかけ。「自分の体力がなくなったら(会社を)閉じることと考えていた」という飯野氏にとっては当初、廃業も視野に入れた相談だったが、引継ぎセンターでは、同社の経営状況や事業環境を鑑み、飯野社長の意向も確認したうえで、事業の引き継ぎ先として県内外の数社を紹介した。
こうしたなか、日本トーターは清酒の製造に強い関心を持っていて、上越酒造の事業譲渡を希望した。
その後、引継ぎセンターも参加し、両社による協議が始まり、今年2月には引継ぎセンター立ち合いのもと、ウェブ会議による両社のトップ面談が実現し、話を前進させていくことで合意。さらに今年4月25日に基本合意書を締結。その後、細部の条件などを協議し今回の最終契約の締結に至った。
平田氏は「ただ売るだけでなく、清酒を使った店であったり、公営競技の運営事業の景品に出したりできるということで(100%子会社という選択肢を)選んだ」と語っていた。続けて「大規模に(事業を)展開するのではなく、良いものを造り確実にお客様を増やせる酒蔵にしていきたい。また将来的には、海外に進出し事業を伸ばしていきたい」と抱負を述べていた。
飯野氏は、「良い出会いをさせていただいた。このまま閉じてしまった場合、地域に元気がなくなるのではないかと心配していたが、酒造りを続けていただけるということは地域に元気をいただける。ぜひ地域活性のために頑張っていただけたらと思う」などと語っていた。
なお今後、上越酒造の新社長には日本トーター事業開発部の渡邉忠義部長が就任する予定。飯野氏は取締役会長として上越酒造に残り酒造りなどに関わっていく。また日本トーターではすでに新工場や新設備の建設計画に着手、来年度から本格的に酒造りに取り組む計画という。
(文・石塚健)