いずれ新潟大学に学内通貨(キャンバス通貨)が登場?
現代版の藩札で地域経済を活性化
弊誌10月10日号で報じている通り、新潟大学は5日、公開フォーラム「経済格差を解消するためには?」を開催した。
コーディネーターは、新潟大学創生学部准教授の半藤逸樹氏。
パネラーは、ブロックチェーンと呼ばれる技術を使った“電子版藩札”(=電子化した地域通貨)を地域内に導入し、地域経済の活性化を目指す(株)Orbの仲津正朗CEOと、(株)セブン銀行セブンラボの山田智樹次長の2人。
電子化した地域通貨(一定エリアの経済圏だけに流通する電子通貨)について議論した。
フォーラム開催の目的は、フォーラムの参加者(学生)に、「学内などで流通する地域通貨(キャンパス通貨)」の企画を練ってもらうこと。
今年8月22日付の日本経済新聞によると、その電子化した地域通貨を発行する動きは全国で相次いでいる。
山陽合同銀行(島根県)では昨年、行内の食堂で使える電子通貨の実証実験を行ったほか、飛騨信用組合(岐阜県)が今年、地元の飲食店や小売店で使える通貨の実証実験を行い、年内に本格導入することを決めたそうだ(なお、山陽合同銀行の実証実験はOrbが行った)。
大学関係でも、会津大学(福島県)が今年3月、学内通貨の実証実験を行い、年内中に、近隣店舗も参加する形で本格導入するという。
仲津CEOは、「日本は江戸時代、藩札という地域通貨システムがあった。各藩は、自藩内の商取引を藩札で行うことで経済的利潤を囲い込み、藩内の産業育成や、地産地消化などを実現していた。現代においても、電子版藩札(電子化された地域通貨)を活用すれば、これまで東京の資本に吸い取られていた地域の経済利潤を地域内(地元店舗など)にとどめることができるようになります」と語っていた。
ヴィートグラスの栽培でで学生の所得アップ
この地域通貨を、学生総数が1万人以上の新潟大学内(つまり1万人以上の経済圏)に導入し、学生の生活向上につなげていきたいという。
導入に向けて、「創生学部だけでなく、(プログラミングできる学生がいる)工学部など色々な学部を巻き込んでいきたい」と半藤氏は話す。
導入に向けの取り組みは、これからスタートすることになるが、フォーラムでは、具体的な導入イメージや課題などが議論された。
具体的には、寄付金、大学からの支援、助成金など原資に、学生に通過を付与し、「ノートを借りたり、駅まで送ってもらった対価」などとして、学生同士が通貨のやり取りを行うという。
ボランティア活動に参加すると、(大学から)通貨をもらうこともできる。「溜まったキャンパス通貨は、校内の生協(または周辺の店)で使うことができる」(半藤氏)という。
また、稼いだ通貨額などにより、「どの程度、学生がボランティアに参加したか」が分かるため、地元企業の採用基準にも活用できる。
このほか、デットクスやダイエット効果などから東京で人気の「ヴィートグラス(小麦の若草)」を使った構想も紹介されていた(写真)。
新潟大学の学生が、ヴィートグラスを栽培し、都内の店に売るというもの(店は、ジムに通う女性に販売する)。学生と店の決済にキャンパス通貨を使うことで、助成金などに依存しなくても、キャンパス通貨がサプライチェーンに流入してくる仕組みを構築できる。
学生も、数万円(月)の販売利益を得ることができるという。
一方、課題として、「新たに地域通貨に参加する人の信用を担保する制度」「システムなどの初期投資費」などが挙がっていた。
なお、この電子版藩札は、1枚あたり数十円から100円程度かかるクレジットカードや電子マネーは不要で、商品購入の際は、店が掲示するQRコードをスマホで読み込むだけでよいという。
当然、1台2万円から10万円する決済端末や、本人認証などを行うための専用回線も不要。このため、導入費用や運営費用はケタ違いに安価で済む。