連載 新潟の逸品 その2 「小鯛のから寿司」など
魚国(新発田市)「から寿し」
「から寿司」だが、聞たことはあっても食べたことのある人は案外少ないかもしれない。本場は新発田市で、新潟市以南の県民にとって、それほど馴染みがないようだ。
その名のとおり、「から寿司」は、シャリにおからを用いたもの。このおからだが、麻の実、生姜などとともに甘く炒ってある。ネタは小鯛、コハダ、アジ、キスなどの小魚系で、酢でしめしたネタでシャリのおからを包み込んである。
味は甘くかつ酸っぱい個性的なもの。食事としての寿司というより、酒の肴といったところだ。城下町新発田の代表的な郷土料理で、「新発田の魚屋が考え付いた」とか、「新発田藩主にも献上され大変喜ばれた」などといわれる。
新発田市内では現在3店舗で買うことができるようだが、その代表格が市街地の中心部にある魚国(大手町3―1―1)。鮮魚店で和食処を併設する同店では、常に「から寿司」が店内の売り場に並んでいる。バリエーションは様々で、小鯛やアジのほか、ママカリや同じ小鯛でも尾かしら付きのものもある。価格は5個1パックで600円くらいから。
写真は定番と言えるアジの「から寿司」で、酢でしめしたネタの味わいと、シャリに使われた麻の実の風味が漂う。
東海林商店(村上市)「小鯛のから寿し」
「から寿司」は決して新発田市だけで作られているわけではない。「知る人ぞ知る」とも言うべき存在が村上市の岩船港近くにある東海林商店(岩船縦新町1―26)である。
商店とあるが、一見は普通の民家でショーケースが並ぶような店構えはない。そのため「小鯛のから寿司」を求めるには、必ず電話で予約を入れるべき。その電話番号だが、ネットで検索しても「東海林商店」では該当がない。屋号と思われる「まるや分家」でヒットする連絡先がそれだ。
写真の「小鯛のから寿司」は1箱12個入りで1400円。酢でしめしたネタの小鯛が、シャリのおから全体を包み込んでいる。甘さや酸味がまろやかで優しく、小鯛のうま味や、麻の実が入ったおからの風味を引き立たせている。
村上は言わずと知れた城下町。家並みが整備され、県内外からの旅行客が後を絶たない。一方の岩船は石川の河口に位置し、中世以来、港町として発達した町だ。10月に行われる「岩船大祭」は7月の「村上大祭」に引けを取らないし、浜に向かって細小路が走る岩船地区の家並も風情がある。
魚太寿し(胎内市)「胡桃いなり」
魚太寿し(西栄町5―28)はJR中条駅から歩いて7、8分の距離にある。写真は同店の「胡桃いなり」だ。どこか変わっていないだろうか?実はこの稲荷寿司、油揚げが裏っ返しになっている。それゆえ別名を「裏いなり」ともいうらしい。胡桃が入らない普通の稲荷寿司と区別するため、油揚げを裏返しにしているという。
新潟の太巻きは胡桃の佃煮が入っていることで知られる。魚太寿しの「胡桃いなり」には、旧朝日村産の胡桃を使った自家製の胡桃味噌が入っている。油揚げは阿賀野市の業者に依頼した特注品だとか。独特の風味とスタイルの「胡桃いなり」は大人気で、魚太寿しでは
電話による持ち帰りの注文も受け付けている。
魚太寿しは昭和47年(1972)に割烹魚太の一角にオープンした。羽越本線沿いの現在地に移ったのはその6年後。胎内市内はもちろん、その周辺から訪れる客も多いという繁盛店だ。特にお昼は子ども連れでも気軽に利用できると人気らしい。
のりちらし、のり巻きセットが550円。生寿司、取合わせ、生ちらし、彩り寿司ご膳が880円。これらは夜と同じ価格設定で、ランチタイムはみそ汁、漬物、フルーツ付きと、極めてリーズナブル。魚太寿しでランチを楽しみ、「胡桃いなり」(8個入り箱代込みで1000円弱)を持ち帰るのがおすすめの利用法だ。