農業総合研究所園芸センター(新潟県聖籠町)が酸味が少なく高糖度の新品種日本なし「新碧(しんみどり)」を品種登録出願
農業総合研究所園芸センター(新潟県聖籠町)は16日、日本なしの新品種「新碧(しんみどり)」を新潟県育成品種として品種登録出願したと発表した。それに伴い17日には同所で説明会を開催。説明会には新潟県農業総合研究所園芸研究センター長の宮島利功氏と、同育種栽培科専門研究員の松本辰也氏が出席。「新碧」誕生までの経緯や味の特徴などを説明した。
2002年、鳥取大学育成の自家和合性品種「瑞秋」に、農林水産省果樹試験育成の青なし「平塚16号(通称「かおり」)の花粉を交雑し、58個の種子を獲得。その中から自家和合性で品質良好な1個体を選抜したのが「新碧」だ。
その後安定した品質であることが確認され、生産者や関係機関からの高評価を受けたことから、2015年には県内7カ所の果樹生産者へ苗木が渡り、現地試験を5年実施。改めて果実品質と栽培性が安定して優れていることが確認された。
先日、今年度初出荷となった日本なしの新品種「新美月(しんみづき)「新王(しんおう)」同様、いちばんの特徴は人口受粉が不要な自家和合性という点だ。開花期に天候不良でも影響を受けにくいため生産が安定し、さらに生産者の手間が大きく省けることから、稲作との複合経営なども期待できるという。病気に強いという点も生産者にとっては大きな魅力で、「二十世紀」は黒斑病対策で二回袋かけをしていたのに対し、「新碧」は1回で済む。
新潟県は、なしの成育期である4~10月の日照時間が長く、高品質のなしが栽培できることから、江戸時代よりなし栽培の適地とされている。
かつて青なしといえば「二十世紀」が主力品種だったが、糖度が低く病気に弱いため栽培面積が減少。しかし、新潟県民には青なしへのニーズが根強くあるため、「新碧」の育成は待望だったと言える。
「新碧」という名前は、新潟生まれの品種であることを表す「新」、果面の美しい緑色を表す「碧」から付けられた。間近で見てみると、大ぶりの果実は表面のザラつきがなくなめらか。明るく美しい黄緑色は青果コーナーに並んだ時に存在感を発揮できそうだ。
説明会の最後、集まった報道陣向けに試食会が行われた。同じ青なし「二十世紀」と食べ比べてみたが、酸味が少なく甘味が強いこと、噛んだ瞬間果汁が口いっぱいに広がるジューシーさが印象的だった。
品種登録出願から最終的な品種登録までは数年を要し、本格販売は2027年ころになる予定。新品種として販売されている赤なしの「新美月」「新王」とともに、新潟県産ブランドなしとして存在感を発揮することが期待されている。
(文・太田広美)