新潟大学旭町学術資料展示館(新潟市中央区)で、山村での生業を伝える山古志地域の民具展が開催
新潟大学旭町学術資料展示館(新潟市中央区)は18日から10月24日まで、新潟県旧・山古志村(現・長岡市)の民具資料を展示する企画展「蘇る山古志の民具」を開催している。展示品はかつて同村の資料館に保管され、中越地震も経験したことから、地域の民俗と震災という二重の歴史を物語っている。
山古志はかつて「二十村」とも呼ばれ、その名の通り山間に集落が点在する地域だった。平野部と異なり広大な田畑を作ることができない山間では、棚田での稲作のほかに、葉酸や養鯉、苧積みなど多様な生業が営まれたという。
特に、山坂に強い牛は農作業や運搬のみならず娯楽の場面でも重宝され、現代でも山古志の名物として「牛の角突き」は有名だ。
今回の企画展では、そうした山間ならではの多様な生業に関する民具が集結。生々しい使用感が、当時の人々の息遣いを感じさせる内容となっている。
これらの山古志地域で収集された多くの民具を保管・展示してきた旧・山古志民俗資料館は、2004年10月23日に起きた中越地震で被災し、建物にも倒壊の危険性が生じた。そのため、翌2005年5月に新潟歴史資料救済ネットワークの呼びかけで集まった人々によって、収集されていたほとんどの資料が搬出された。
被災した民具については、新潟大学(新潟市西区)、長岡市立科学博物館、長岡市山古志支所の連携のもと、同大学の博物館実習の一環として2005年から2019年まで整理作業を実施。この間、総計240人の学生が参加し、2,080件の民具の資料台帳を新たに作成した。
15年続けられた整理作業の中では、地元の人々が学生たちへ民具の使い方や作り方などを解説する場面が数多くあったという。今回の展示の企画を担当した新潟大学人文学部の飯島康夫准教授は「民具を前にすると、地域の方々は使い方などを語りだしてくれて、それを聴く学生たちも喜んでいた」と振り返る。
今回の展示に関しても「かつてはこうした民具は生活の基盤にあった。モノとして直接は繋がっていなくても、どこか現代に継続している。震災も超えてきて残ってきた民具なので、『語り』を通じて伝えていってもらいたい。今回の展示でも、人々が興味を持つ一助となればと思う」(飯島准教授)と期待を語っていた。
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(文・鈴木琢真)