生産者と消費者をつなげ、これからのレストランの形を発信 80万人のためのフレンチ OV(新潟市)
これからの料理人は、料理を提供する人から生産者と消費者を結ぶ人へ、そしてレストランは積極的に外に出て産地とコラボする場に。
新潟市中央区のフランス料理店「80万人のためのフレンチ OV(オヴィ)」のオーナー兼シェフの富樫一仁氏は、村上市や十日町市、阿賀野市や津南町など積極的に新潟県内の食材の産地に足を運んでいる。
産地に赴く料理人は少なくないが、そこから、さらに富樫氏はイベントやフェアを企画し、新しい飲食店のあり方を築いていっている。
「もともとは厨房で料理をしていることが仕事だと思っていました。しかし、ここ数年、生産者の思いを消費者に伝えられるのは料理人だけであり、どういう人がどうやって育てた食材か、その背景を生かしてどんな料理にしたいか、というストーリーが大切だと気づいたんです」(富樫氏)。
例えば、津南町では津南野菜のPR活動を進めている「つなベジ会」と3年前から交流を重ね、今年5月には津南素材を使い、地元のカフェ・蔵Cafeとコラボしたイベントを実施。また、村上市の食材を使ったフェアを開催。さらには、Santaふぁーむ(村上市)の黒毛和牛は村上産のお茶入りの餌で育っていることを知り、お茶のエッセンスを足した牛肉料理を考案するなど、生産者とつながることが料理のアイディアの元にもなっているそう。
「学ぶことは面白いし、きっと今後料理人はこういうことを表現していかないといけないと思います」(富樫氏)。
「はつね寿司」とのコラボイベントも
イベント開催以外にも、現在、阿賀野市の神田酪農の牛乳と阿賀野屋の卵を使ったアイスクリームを開発しているところだ。
「まだ組んだことがない生産地はたくさんあるので、まずは新潟全域を自分たちの目で見に行かないとだし、一通り知った時に見えてくるものがあると思います。そういった引き出しをいっぱい持つことで、地域の食の課題にも柔軟に対応して解決の一助になれば。生産者の方にも自分の知識や経験を利用して欲しいです」と将来を見据える富樫氏。
新潟大学工学部を卒業後、調理の専門学校を経ることなく現場で修行を積んできた異色の経歴は、当初はコンプレックスだったそうだが、それが飲食業の常識にとらわれない活動に結びついていると分析する。
広く新潟県を見渡すと、同時により身近な地元を盛り上げたいと、同じ歳の経営者が営むOVから歩いて10分ほどの距離にある「はつね寿司」と、年4回コラボイベントも開催。こちらも盛況を博しており、OVを舞台にレストランの持つ可能性はミクロに、マクロにますます広がっていきそうだ。