新潟県内でも製品や部材に付加価値つけて再製品化する「アップサイクル」が盛んに

使用済みのランドセルをさまざまなモノに変えるカナーズ・ジャパンの椎谷一繁社長

「アップサイクル」という言葉を存じだろうか?これは廃棄物や使わなくなったものを、形を変えずに素材として利用したり、もともとの特徴を生かしつつ新しい製品に変えたりして、付加価値をさらに高めていく考え方だ。
ファッションやデザインなどの分野で注目を集めている。

再利用というと「リサイクル」という言葉が浸透しているが、こちらはモノを物質のレベルで変えて資源として利用することだ。例えば、アルミ缶を溶かしてもう一度缶にしたり、ペットボトルをとかしてシャツにしたり――。
アップサイクルは「材質を変えない」「もともとの特徴を生かす」などの点で、リサイクルと異なる。

このアップサイクルに取り組んでいる県内企業がいくつか存在している。
各社が作っている製品は、顧客からの人気や評判が上々だ。
ここでは2社の製品を紹介したい。

ランドセルをリメイクするカナーズ・ジャパン

北陸自動車道黒埼スマートインターチェンジから、車で少し走ったところにあるカナーズ・ジャパン株式会社(新潟市西蒲区)。
使用済みのランドセルをさまざまなモノに変える事業を展開。ひっきりなしに注文やランドセルが届く。

中でも人気なのが、一つのランドセルからつくる「アルバム」、「ミニランドセル」、「花の形のキーホルダー 大と小」、「5円玉の入る財布」、「小銭入れ」の7点セット。
2万円でこれらをこしらえる。
「お客様から『そんなに安くていいんですか?』とよく驚かれる」と、椎谷一繁社長は笑う。

もともとバスの運転手だった椎谷社長がランドセルのリメイクに携わるようになったのは10年ほど前にさかのぼる。手先が器用で色々と手作りのものを作るのが好きだった社長に、友人がランドセルを持ってきて、「これでカバンを作ってもらえないか」と提案。
悪戦苦闘しているうちに、楽しさに取りつかれた。
約4年前には運転手をやめてカナーズ・ジャパンを立ち上げた。

本社屋は、椎谷社長の母親の実家だった建物。家族や仲間と協力しながらリフォームをし、工房にした。
建物の中には、ホンダのバイク「ワルキューレ」と欧州車「ミニクーパー」があり、こちらも「いろいろと手を加えた」(椎谷社長)。

建物の敷地内にある別の家屋は、もともとの屋号をとって「五左衛門」という名前の古民家レストランとした。
こちらは長男の泉慶氏が運営している。
この建物も自らの手でリフォームした。
椎谷社長の思想そのものがアップサイクル型といえよう。

カナーズ・ジャパンの工房は椎谷社長の母の実家をリメイクした

カナーズ・ジャパンという社名は、社長の名前「一繁(かずしげ)」の「かず」をもじったもの。
もともとは「カズ」という名前を考えていたが、「加寿」という字をあて、さらに「かなえる寿」、そこから「カナーズ」と発展させた。
さらに日本から世界に羽ばたいていきたいという思いを込め「ジャパン」を添えた。

ランドセルのリメイクで常に考えているのは「大切な家族の思い出を生かして、生涯付き合える製品に変えること」(同)。その考えを今後は日本の特有の布を使ってカバンにリメイクする方向にも生かす考えで、「ヨーロッパにもゆくゆくは販路を広げたい」(同)。
社名に込めた思いの達成に向け、着実に動いている。

アルミでぐい吞みをつくるアルモ

アルミ合金鋳物を生産する株式会社アルモ(長岡市)。JR線車両の網棚や自動車部品から、地元長岡の和菓子屋「紅屋重正」の大手饅頭に「大手」という文字をつける焼き印まで手掛けている製品は幅広い。

そんなアルモが数年前から製品しているのが、「ぐい吞み」だ。もともと黒子だった同社がつくった初めての自社製品で、オンラインショップや県内のぽんしゅ館などで売られている。

こちらもアルミ合金でできている。このアルミ合金は、できたばかりの金属に、役割を終えて溶かされた金属を加えてつくるもの。またアルモでは社内でアルミ鋳物の不良品が出た場合、もう一度溶かしたうえで新たに製品を作る。そういう面でアップサイクルの一つといえよう。
最近は、中国古来のマッサージ「かっさ」に使うためのプレートも投入した。

アルモの柴木樹社長とぐい呑み

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