【インタビュー】新潟県津南町の桑原悠町長に聞く「コロナ禍で転入が増加の月もある」
新潟県津南町の桑原悠町長が2018年に31歳で史上最年少町長として当選してから3年が経過した。1期目の最終年度となる今年度の後半はどうかじ取りをするのか。桑原町長に津南町の特色やエネルギー政策、移住政策などについて語ってもらった。
千葉大学倉阪研究室と認定NPO法人環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2020年度版報告書」によると、津南町の食料自給率が332.5%と新潟県内1位で、「全国的にもトップレベル」(桑原町長)だ。この点について桑原町長は「過去に600億円をかけて農地開発が行われた。津南町は米よりも野菜が多い。バランスのいい複合農業を地で行っている」と分析する。
一方で、小規模水力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーの自給率も89.1%で糸魚川市の173.5%に次いで2位と高い。町直営の水力発電が1基あり、東京電力の大規模水力発電を含まずに県内2位となっており、供給電力に余裕があるため、曾祖父が津南町出身という保坂展人世田谷区長のオファーで、東京都世田谷区へ売電することになった。今後は売電ビジネスとして、民間資本を入れることも含めて検討する。さらに、「国は、電力は地産地消にすべきと言っているので、町内で安定価格になれば、町民にもメリットがある」(同)と話す。
また、CO2削減や商品の付加価値に繋がる雪室の活用も推進する。桑原町長は「今後は他の商工分野でも活用できるのではないか。今までは雪に耐えるだけだったが、これからは積極的に雪を活用していきたい。全体的に津南町は自給率が高く、持続可能な町であることが強み」(同)と話す。
桑原町長は「上から命令されて動くのでなく、自分で考えて行動してほしい」と町役場職員に対して接しており、その成果の1つが20代、30代の若手職員による部署をまたいだ移住促進プロジェクトチームの発足だ。町人口が1万人を切り、人口減少が課題となる中、5月1日から6人で本格スタートし、夏には従来からあった町を離れて暮らす人向けのLINE公式アカウント「つながる、つなん」を移住希望者向けにバージョンアップし、オンライン相談もできるようにした。「コロナ禍で地方が注目されている。実際に津南町も転入が増加の月もある」(同)として、今後の移住人口増に期待している。
同じ人口減少社会という意味では、商店街の空き店舗の活用にも力を入れており、町内の国道117号線沿いの旧書店を「まちなかオープンスペース」としてリニューアルする予定だ。具体的な内容は現在一般住民で構成する「津南未来会議」で議論しており、コワーキングスペースやチャレンジショップなどの活用案も出ているという。「来年度には改修工事を実施し、大地の芸術祭開催前の夏ころにはオープンしたい」(同)としており、経済効果の面でも商店街に人の賑わいが戻ることが期待される。
最後に1期目の自身の成果として、町立病院の約5億円あった赤字幅を1億5,000万円分圧縮したことや、若手経営者による農業法人が7社設立されたことなどを挙げた。
今年度は1期目最終年度となるが、今後も桑原町政に注目していきたい。
(文・梅川康輝)