惜しまれつつ撤去された新潟駅前の名物看板「吉乃川」跡地に新たな構想⁉︎
1548(天文17)年創業の、新潟県を代表する蔵元のひとつ・吉乃川株式会社(長岡市摂田屋)。長岡市の企業だが、JR新潟駅から万代方面へ向かう流作場五差路にあった吉乃川の巨大な看板が1996年に設置され、新潟市民にとっても親しみが深い。
それが撤去されるという情報が飛び交ったのが、2020年1月。同社の公式ツイッターで発表されると瞬く間に拡散し、写真を撮ってアップする人が続出したのだ。「当たり前のようにあった物がなくなるのは寂しい」「帰省してこの看板を見ると、新潟に帰ってきたと実感できた」など、SNSには撤去を惜しむ声が相次いだ。
撤去の理由は老朽化と言われていたが、実はもう一つ、看板の後ろにホテルとマンションの建設が決定したことによるものだった。
看板は撤去され、街の風景が変わりつつある今、先日再びその看板がSNSにアップされたのだ。
吉乃川株式会社の代表取締役・峰政祐己氏の投稿によると、看板があった場所は現在も同社の所有地で、この場所に「Sake Bar」を作ろうと計画中だという。詳細を聞くべく、峰政氏に話を聞いた。
「ツイッターに書いたとおり、あの場所は当社の所有地で、現在ホテル建設工事のため貸し出し中という状況です。コロナ禍前の2019年10月、長岡市摂田屋の本社敷地内に『醸蔵(じょうぐら)』という酒ミュージアムをオープンしました。そのころ看板撤去は決定していて、跡地の活用案をホテル側からいただいていましたが、コロナ禍となり計画はストップ。それが再開した形です」と経緯を説明してくれた。
看板跡地に「醸蔵」のようなSakebarを作る計画は確かにあるという。現在は構想中の段階で、建設等の日程は未定だ。
しかし、峰政氏の頭の中にはさまざまなビジョンが浮かんでいる。「私には長年感じている出張時の課題がありまして。出張へ行くと仕事が16時ころ終わってしまうことが多いんです。そこで、飲みに行こう!と思っても、大抵の店は17時半ころのオープンで、時間と体を持て余してしまうんですよね。看板跡地に作る予定のSakeBarは、新潟駅から近くビジネスマンにとっても好立地。それなら0次会を楽しんでいただく場にできたらと考えています。吉乃川を取り扱っているお店が周辺にたくさんあるので、お客様の希望を聞いてお店を紹介することもできるでしょう。普段飲めない生酒など特別なお酒もご用意して、それを持ち込めるお店を紹介しても喜んでいただけるかなと思っています」と峰政氏。
同社では2020年、クラフトビール「摂田屋クラフト」を発売した。現在は長岡市内の酒店と飲食店のみでの提供となっていて、新潟市でも取り扱ってほしいという声が峰政氏のもとに多く届いている。「摂田屋クラフトを飲める店を新潟市に作ることで、そういった声にお応えしたいですね」(峰政氏)
あの看板はなくなったが、同じ場所に吉乃川が復活する。その日を楽しみに、続報を待ちたい。
(文・太田広美)