財政難の新潟県で「行財政改革行動計画(案)」が決定
令和5年度までに435億円から640億円の収支を改革
新潟県は10日午前、新潟県行財政改革推進会議を開催し、令和元年度から令和5年度までの歳出歳入改革プランなどを盛り込んだ「新潟県行財政改革行動計画(案)」を了承した。今後、パブリックコメントや9月県議会での審議などを経て、来月中にも最終決定する。
県では今年春に、「現状のままでは2年後に財源対策的基金(年度ごとに違う財源の増減を調整するための基金)が枯渇する」という厳しい財政状況を公表。これを受け、今年4月、新潟県行財政改革推進会議を設置し、外部有識者の意見を踏まえながら、同計画の策定を進めてきた。推進会議冒頭のあいさつで、花角英世知事は、「数字合わせ、数合わせの縮み志向ではなく、より効率的、より効果的な政策、事業に見直すという思いで、創意工夫をしていただきたい」などと語っていた。また推進会議終了後に開かれた定例記者会見で、「計画をしっかり着実に実行に移していき、持続可能な県財政の確立に向けて、しっかり取り組んでまいりたい」などと語っていた。
2つの「歳出歳入改革目標」
計画には、2通りの「歳出歳入改革目標」を記載されている。
1つは、(最終年度の)令和5年度に収支の均衡を図ったうえで、財源対策的基金残高を最低230億円確保し、さらに今後見込まれる交際費の実質負担の増加(令和6~10年の累計で200億円程度)に向けて県債管理基金も確保するという目標。この目標達成のためには、計画期間(令和元年度から令和5年度)において、640億円(年度平均160億円)の収支改革が必要となる。
2つめは、大規模災害があっても財政的に対応できるよう、まずは令和5年度末に財源対策的基金を230億円確保する(1つ目と比べてハードルの低い)目標。この目標達成にためには、計画期間において、435億円(年度平均110億円)の収支改革が必要となる。
県では、1つ目の目標をめざしつつ、少なくとも2つ目の目標は達成できるよう取り組んでいくという。
具体的な歳出歳入改革は
目標達成に向けて、具体的には「事務事業の見直し」「公債費の抑制」「投資的経費の見直し」「県有施設の維持・運営の見直し」「公営企業の経営改善」「県単独補助金の見直し」「人件費の縮減」「県税収入の確保」「使用料・手数料の見直し」「未利用財産の活用」「その他の歳入確保」「簡素で効率的な行政体制の構築」「県出資法人の見直し」「業務力の向上」「国への働きかけ」に取り組んでいく。
以下は、具体的な取り組み計画(一部抜粋)。
【事務事業の見直し】
・各部局の裁量の範囲内で政策的に実施する事業(部局枠事業)で今年度に続き、各部局からの予算要求額を対前年度比でマイナスにする「マイナスシーリング」を実施。
・法令上支出が義務付けられている経費や団体の運営に関連する経費など、部局の裁量の幅が小さい事業(所要額見込み事業)をゼロベースで見直し、計画期間中に全体で10%縮減(法令支出が義務付けられている経費などを除く)。
・県の最上位計画である「総合計画」の実現に向けて重点的に取り組む事業(重点事業)で検証を進めて、効果の大きい事業だけに厳選。
【公債費の削減】
・県債発行ルールを設定。
・資金調達にさいしては、現状の低金利などを踏まえ、20年債、30年債など償還期間の長い県債の発行を促進していくことを検討。
【投資的経費の見直し】
・普通建設事業については、令和2年度は、令和元年度当初予算の90%以内に抑える。
・普通建設事業については、令和3年度以降も、(これから設定する)県債発行ルールの範囲内で抑制していく。
【県有施設の維持・運営の見直し】
・県の公共施設などについては、廃止・統廃合や、市町村への譲渡などを含め、ゼロベースで見直す。
【公営企業における経営改善の推進】
・県立病院は、経常損益の黒字化や一般会計からの繰入金の縮減をめざし、県立病院経営委員会の意見なども踏まえ、役割(民間との役割分担など)や、あり方(適正規模・機能など)を整理していく。
・他県と比べて高い人件費や医療材料比率の見直しも検討する。
・県央基幹病院も、役割、あり方、機能、規模などについて医療関係者が議論する場を設け、年内のとりまとめをめどに検討を進めていく。
【県単独補助金の見直し】
・他県の水準を上回る補助金については、少なくともそれ以下まで引き下げる。
・対象者が(特定の業界などに)限定されている補助金は公平性の観点から見直しを行う。
・(毎年予算計上されている)補助金の期間(終期)を明確化にする。
・計画期間中に10%の縮減を目指す。
【人件費の縮減】
・業務の見直しに合わせて着実に定員削減に取り組む。
・時間外勤務を縮減し、時間外勤務手当を毎年度5%削減する。
・給与を削減する。
知事=給与20%、期末手当20%
副知事=給与15%、期末手当15%
部長級=給与10%、期末・勤勉手当10%、管理職手当10%
課長級(所属長)=給与5%、期末・勤勉手当5%、管理職手当5%
その他職員=臨時的削減を検討
【県税収入の確保】
・市町村が行う「個人県民税の徴収確保」の取り組みを支援していく。
・核燃料税については、今年11月から原発の稼働に有無にかかわらず課税される「出力割」の比率を、(税率17%に据え置きつつ)引き上げる。これにより出力割の税収を約32億円/年から、約47億円/年にアップさせる。
・他県で実施されている「超過課税」(森林環境税のように、地方自治体が、条例で定めて標準税率を超える税率で課税すること)の導入を検討していく。
【使用料・手数料の見直し】
・使用料、手数料を総点検して原価計算に合わせた適切な料金設定に見直し。特に使用料を徴収していない公共施設の有料化や、減免措置の妥当性について重点的に検討していく。
【未利用財産の活用】
・県有未利用財産の早期売却、有償貸し付けを加速する。
・県有地売却に際して価値のない建物の存在が売却の進まない原因になっていることがある。このため、落札者が建物解体費を出すこと条件に予定価格を安価に設定した入札などの促進していく。
【その他の歳入促進】
・ネーミングライツや広告収入、ふるさと納税や企業版ふるさと納税による歳入確保。
・基金などの運用については、現在よりも有利な運用方法を検討していく。
・税外未収金については、弁護士の活用や法的措置により積極的に回収していく。
【県出資法人の見直し】
・県出資法人経営評価委員会の助言を踏まえ、法人の統廃合や補助金の削減、派遣職員の引き上げなどを法人と協議していく。
【業務力の向上】
・テレビ会議システムや会議資料のペーパーレス化などの活用していく。
・AI(人工知能)・RPA(ホワイトカラーの定型業務などをロボットが代行して自動化)の導入促進。