【連載】新潟県上越市に巨大店舗誕生の謎(上)〜売り場面積が最大級の「無印良品 直江津」
新潟県上越市内に国内最大級や新潟県下最大級の店舗が複数ある。そんな店舗の状況を上、中、下の3回に分けて掲載する。第1回目は「無印良品 直江津」。
衣食住に関わる企画開発・製造から販売までを行う「無印良品」を展開する良品計画(東京都)が2019年5月に閉店したイトーヨーカドー直江津店の後継テナントとして、昨年7月に売り場面積約2,000坪の世界最大級となる「無印良品 直江津」を新潟上越市の直江津ショッピングセンター2階にオープンしてから1年余りが経過した。
店舗売上高の予算比ベースについて会社側は公表していないものの、「想定以上の売り上げで推移し、売上高は国内外1,000店舗近くある全店舗の上位10%に入っている」(無印良品 直江津の古谷信人コミニティマネージャー)といい、8月度、9月度の前年比ベースでも好調な推移を見せているという。
商圏については、店舗のある上越市や隣接する妙高市や糸魚川市からの来店はある意味で当然だが、想定していた以上に長岡市や新潟市からの来店が多いという。古谷マネージャーは「通常、上越地域の人は新潟市や長岡市に買い物に行くというのが一般的だが、逆に来てもらったということには意味があると思う」と話す。また、隣の長野県や富山県からは夏休みの間は海水浴で来た客が来店したものの、県外移動を控えているせいかそれほど来ていないという。
一方、マイクロバスに商品を積んで中山間地などで販売する移動販売バスはひと月に15日稼働している。買い物難民を救うため、現在、安塚区や大島区など上越市内だけでなく妙高市や十日町市まで行っている。今後は糸魚川市や柏崎市、さらには佐渡市へも検討しているようだ。
必ずしも好立地ではなかった直江津店
そんな好調を維持している直江津店だが、当初、出店する立地条件としては必ずしも良いとは言えないものだった。「旧市街地で、ロードサイドの商業集積地からも離れている。加えて、駐車場も十分ではなかった。弊社が果たして核として集客できるかどうか社内で検討を重ねた」(古谷マネージャー)
しかし、直江津ショッピングセンターの所有者である頸城自動車株式会社(新潟県上越市)からのオファーを受けて、地方の中心市街地活性化に役立ちたいとの思いから出店するに至ったという経緯がある。同社はオープン前の2020年1月に上越市、頸城自動車の3者で「地域活性化に向けた包括連携に関する協定」を結んでおり、その思いを体現した形となった。同社では「具体的には、頸城自動車が運営する「直江津ショッピングセンターを地域の中心に据えたエリアリノベーションを行っていく」としており、古谷マネージャーは「今後、弊社でも全国的にこういった立地への出店も増えてくる。直江津店はチャレンジの部分もあり、これがうまくいけば全国のモデルになる」と話した。
このように直江津への出店は挑戦の面もあったが、なぜ規模が世界最大級になったのだろうか。この点について、古谷マネージャーは「直江津地区にはない本売場やキャンプ用品売場、地元野菜が買える売場、『カルディコーヒーファーム』(コーヒー豆や珍しい食材やワインなどが並ぶショップ)や『久世福商店』(全国の美食のセレクトショップ)、『スターバックス』を入れたら、結果的に大きくなった」と話す。イトーヨーカドー直江津店が撤退した後の「居抜き出店」で、売り場が空いていたという事情もあると推測される。
さらに、古谷マネージャーは「無印良品 直江津だけが点でやっていても仕方がない。面で直江津の商店街も含めて盛り上げていかないといけない。うみがたり(上越市立水族館)と無印良品 直江津を見てもらうだけではまだ弱く、もうひとつ何かが欲しいところだ。その意味では、今年初開催だったうみまちアート(上越市主催の現代アート展)は、商店街と連携して回遊施策を実施したのでよかった。直江津の船見公園の夕日がきれいなことを再認識されている地元の方も多かったので、これをアピールすれば外から人も呼び込めるのではないか」と話していた。
幹部が県外出身者で運営する最大店舗
古谷マネージャーは京都府の出身で、「家の近くに平等院鳳凰堂がある」という京都人だが、その“よそもの”の目から見ても直江津の夕日は価値があるらしい。直江津店の林昌宏店長は大阪府出身であり、こうした県外出身者が集い、世界最大級の店舗を運営している。
また、長野県出身の同社の金井政明会長はたびたび直江津店を視察に訪れるという。古谷マネージャーは「金井会長は若い頃に直江津の海に来ていたので、直江津の町が懐かしいのではないか」と話していた。
直江津店は、旗艦店と位置付ける東京都銀座の「無印良品 銀座」に匹敵する広さだが、金井会長にも好かれた直江津店の今後の動向に注目してきたい。
(文・梅川康輝)