【連載】新潟県上越市に巨大店舗誕生の謎(中)〜北陸地方最大店舗の「京丸人形会館上越店」

京丸人形上越店が入るビル

「新潟県上越市に巨大店舗誕生の謎」と題して掲載している連載の第2回目は京丸人形会館上越店。

テレビCMの「京丸人形~カイカーン♪」のメロディーで有名な京丸人形会館は、ひな人形、五月人形の専門店だが、その上越店が約180坪の広さがある北陸地方最大店舗であり、ほかに新潟市、富山県高岡市にも店舗がある。ひな人形や五月人形はいわば期間限定の商品だが、どう採算を取り、経営しているのか。その点について、京丸人形会館の太田俊敬代表取締役に疑問をぶつけてみた。

「京丸人形を思い出してもらうように、毎年テレビCMを打っている」と話すのは太田代表取締役。「普段、人々はひな人形とは関係ないところで生活している。それが、結婚して子供が生まれた途端に『おひな様を買わなきゃいけない』と思うようになる。そこでテレビCMを流して、『昔、メロディーを聞いたことがあるなあ』と思い出してもらうのがうちの戦略だ」と話す。

 

期間限定の人形ビジネス

ひな人形は20万円前後の価格帯が売れ筋(五月人形は15万円から19万円)で、老齢年金で孫のために購入するお年寄りが多いというが、ひな人形の商戦ピークは1月10日から2月10日までの1か月。五月人形も3月15日から4月15日までの1か月が勝負だ。逆に言えば、この2か月間以外は商売にはならないということだ。

ひな人形(京丸人形会館ホームページより)

五月人形(京丸人形会館ホームページより)

さらに、近年の少子化の影響はもとより、1960年代ころから業界的には下火が続いているというから、ますます不思議である。しかし、太田代表取締役に聞いて、その疑問も解けた。つまり、人形は副業で、もともと20代前半から不動産業を経営していたのだ。

 

人形と不動産を兼業

話を聞いていると、言い方は少々悪いが、太田代表取締役はまさに“金儲けのプロ”だと言える。聞けば、当時記念切手ブームだったという小学生のころから、同級生はもとより、開業医のところまで行き、記念切手を売りさばいていたというから驚きだ。当時、記念切手は希少価値があり、必ずと言っていいほど値上がりしたという。買う方もコレクションというより、値上がりを見越して買うわけで、いわば投資の対象となっていたわけである。小学生だった太田少年は、機転を利かせて売りまくり、当時の貨幣価値で100万円が口座にあるほどだったという。

また、中学2年生になると、株式の値上がりを新聞で知った。100万円の軍資金を元手に株式投資を始めるようになる。独自のグラフを編み出し、購入した銘柄が値下りしても再度買うという方法で、徐々に資産を増やしていった。株式投資は現在でも相場屋として活動している。

中学生から株式投資をしていた太田俊敬代表取締役(写真は東京証券取引所)

さらに、20歳で宅地建物取引主任者(現宅建士)に一発合格し、すぐ不動産業「日東不動産」を開業した。その当時読んだ不動産経営に関する本に「不動産会社が建築と分譲をやると倒産する」と書いてあったため、賃貸しかやらずに現在に至っている。

「不動産の仕事の関係で、当時ある人から『人形は3倍の値段で売れる』と聞いて、翌日職業別電話帳を買って人形産地の静岡へ飛んですぐに始めた」(太田代表取締役)というひな人形ビジネス。大手メーカーの人形が海外生産による大量生産で衣装も化繊製品であるのに対して、同店の人形は全国に3組から10組ほどしかない正絹特注品もあり、人形作家のサイン入りのものもあるという。京丸人形会館は高品質の商品で差別化を図っている。

長岡市にも店舗用の土地、建物は購入してあるが、現在他社に賃貸中のため、店舗を開設できないといい、現状、長岡市の客は新潟店に来店するという。上越店は糸魚川市や十日町市からの来店客もあるということで、商圏としては広い意味での上越エリアをカバーしていると言える。

「冬は引っ越しがあまり動かないので、不動産業は手が空く。その代わりに、冬は人形が忙しくなるので、ちょうどいい」と話す太田代表取締役は1代で京丸人形会館を築いた敏腕経営者だった。

事務所前に立つ京丸人形会館の太田俊敬代表取締役

(文・梅川康輝)

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