東北電力株式会社、冬の需要ピークに備えて東新潟火力発電所(新潟県聖籠町)の3−1号系列の大規模定期点検を実施中
昨年冬、大寒波の到来などにより電力需給が逼迫したことは記憶に新しいが、今年もまもなく電力需要が高まる冬がやってくる。
そんななか、東北電力株式会社 東新潟火力発電所(新潟県聖籠町)の3−1号系列で現在、冬の需要ピークに備えて、設備トラブルの未然防止・安定運転を目的とした大規模定期点検が行われている。
東新潟火力発電所は、出力計486万キロワット(一般家庭の約682万5,000世帯分の使用電力量に相当)で、東北電力で最大規模の発電設備を有する。また1984年には国内初の大容量高効率コンバインドサイクルプラント(※)として3号系列が運転を開始しており、「事業用大容量コンバインドサイクル発電発祥の地」でもある。
その3号系列ガスタービンの累積運転時間は25万時間を超え世界最長クラスとなっているが、それを支えているものの一つが定期点検だ。
定期点検は、電力の高需要期(とくに夏・冬)を極力避ける形で計画的に点検時期を設定しているという。同発電所3、4号系列でも、ガスタービンおよび排熱回収ボイラー(※)の点検を3年に1回、蒸気タービンの点検を6年に1回、需要の高まる時期を避けて行なっている。
そして現在、点検が行われているのが、(前述の通り、)3−1号系列。東北発電工業株式会社をはじめ103社(従事する作業員は約850人)が参加し、ガスタービンおよび排熱回収ボイラーの3年に1回の定期点検を9月11日から12月8日(予定)までの期間で行なっている。
点検開始以降、発電設備の運転を停止したうえでガスタービンを分解し一つひとつの部品を目視や非破壊検査で故障や劣化、異常の兆候がないか確認したり、配管などの摩耗・損傷の有無を確認したりしてきた。また排熱回収ボイラー内部の点検や発電機の点検も実施した。
点検作業は佳境を迎えていて、12日は、点検・修繕が完了したガスタービンローターを大型クレーンにより車室(ローターを納める気密性の高いケース)に納める作業などが行われていた。
なおガスタービンは全長9.9メートル、直径2.8メートル、重さ54.1トンもあり、20人以上の作業員が据え付けてできるわずかな隙間(数ミリメートル単位)を、100分の1ミリメートル単位で計測し、適切な間隔で慎重に据え付けていた。
東北電力執行役員 東新潟火力発電所長の藤田範生氏は、「定期点検は電力供給に必要不可欠な作業で、多くの作業員の皆さんが県外からも来ているが、コロナ禍ということもあり地域の皆様のご理解、ご協力のもと作業している。安定供給できる体制に向けて、所員、作業員が一丸となって12月8日(の点検完了)に向けて取り組んでいく」などと話していた。
(※)コンバインドサイクル発電。ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式。まずガスタービン発電で、圧縮した空気の中で燃料を燃やして燃焼ガスを発生させ、その膨張力を利用して発電機を回して発電。次に、ガスタービンから発生する排ガスの余熱を回収して蒸気タービンを回し発電を行う。排ガスも使うため火力発電で最も熱効率を向上させることができる。
(※)排熱回収ボイラー。ガスタービンの排ガスの熱を利用し蒸気を発生させる熱交換器